道志・積雪の倉見山日帰り周回(相定ヶ峰~向原峠~向原BS) | 単独行者の山行録

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歩いた山々の記憶を詳らかに。
山行中心の備忘録。


相定ヶ峰より望む富士山
南アルプスの峰々と御坂山塊。
富士吉田や河口湖の市街地も雪で真っ白。
相定ヶ峰・分岐にて暫し熟考。
このまま下山するには早いし、全く登った気にならない。
かといって、杓子山へのバリエーションは雪の状況からしても、その険しさからしてもかなり不安が残る。
間をとって、行けるところまで行ってみて、引き返すことが出来ないような箇所があったら素直に諦める事にした。
緊張感を胸に杓子山方面へ足を進める。
こちらにも一人分の踏み跡は続いていて、この分なら迷う心配は無いなぁー、と安心して辿っていく。
すると、直ぐに急傾斜の下りとなり、その先が痩せ尾根になっている。
こんなアイゼンが利きにくい下りの痩せ尾根はリスキー過ぎて私には下る度胸が無い。
踏み跡が続く急傾斜の下り坂。
その先は痩せ尾根になっている。

初っぱなから出鼻を挫かれた形で、まだ破線に突入してないにも関わらず、そっと踵を返す。
滑りでもしたら一巻の終わりだ。
分岐へ来た道を戻ると左手にピンクテープが見えたので様子を見に行くと、下方に尾根が続いていて、こちらの方が幾分か下り易そう。
トレースは無かったがピンクテープが示す尾根を下っていくと、どうやら正規ルートであるようだった。
樹間から望む杓子山。
杓子山を正面に見ながら斜面を下っていく。
目的の杓子山は本当に目と鼻の先といった距離に感じられ、多少険しくて時間を要しても14時過ぎには到達するなと目算し、一瞬甘い誘惑が頭を過った。
稜線を下っても中々鞍部に到達しない。
時折樹間からその先の稜線が見えるが、かなり下る必要がありそうだ。
進むにしろ、引き返すにしろ、何れにしろ大変そうだ。
登山道伝いに↑のようなコードが続いている。
急坂なのでロープの代わりだろうか?
こんな所に盗犯防止のポスターを貼るのはナンセンスだと思う。(笑)
最低鞍部の向原峠に11:43到達。
ここから先はいよいよ核心部の破線ルート。
痩せ尾根と岩稜のアップダウンを繰り返しながら、倉見山より高い杓子山(1,597m)まで、500mの登り返しだ。
向原への分岐を分けて気を引き締めて杓子山方面へ歩くこと数秒、早速雪付きの岩場が出てきた。
久しぶりの岩場、不安と楽しみが入り交じる複雑な心境の中、直登を試みる。
・・・ズルズル~。案の定、前足の無い軽アイゼンでは歯が立たない。
稜線の東側が急傾斜なので、慎重に手足の置き場を試しながら登ろうとするも、掴んだ細木が折れたり、兎に角足元が滑って安定しない。
比較的傾斜の緩い西側を木や岩に掴まりながら巻いていき、無事に岩稜の上へ。
この程度なら引き返す事も難しくない。
途中の岩稜から望む足和田山や御坂山地。
少し進むと再び岩場の登り。
ここも西側から巻いて登っていく。
奥多摩方面の景色

2つ目の岩場を越えると尾根は更に細くなり、更に雪がこんもりと乗っかっている。
しかも木々の間より尾根の先に見えるのは岩の壁。
岩場に取り付く数メートル手前で思い知った。
雪が乗っているこの急な岩場を登るのはかなりリスキーだと。
慎重に行けば登れなくもなさそうだが、この先更なる困難で引き返す必要が生じた場合、ここを下るのは私の技術はさておき度胸は無い。
しかも相変わらず西側は急傾斜で、東側も滑落でもすれば只では済まない斜度だ。
鎖やロープといった補助は無い。
痩せ尾根の先に立ちはだかる難関

それを見て、やっと引き返す動機ができた。
少々歩き足りないが、リスクを冒してまで登って進退窮まるよりはましだ。
今回は縁が無かったと言うことで、また雪が無い季節にでもリベンジしよう。
来た道を難なく通過し向原峠に引き返す。
引き返す途中、樹間から富士山を望むと、雲がかかり始めていて、余計に諦めがつくことができた。
来た道をまた登り返すのも面倒だしつまらないので、向原へ下るルートを辿る事にした。
分岐を向原へ進んで間もなく、雪で覆われている事もあって新道の下降点が判らない。
あとは下るだけで時間を持て余していたので、ルートを探しながらの下山は丁度良いと楽観的だった。
地図では斜面をトラバースするようにルートがついている筈だが、踏み跡はおろか登山道の形跡やピンクテープの類いもなく、判然としない。
仕方なく旧道を辿っていくと、明瞭な尾根が派生していて、雪に窪んだ登山道らしきものが浮かび上がっていた。
確信を得て尾根を下っていくと、次第に登山道は明瞭となり、ピンクテープも出てきた。
途中からは踏み跡も確認でき、ピンクテープが巻かれた針葉樹が多数見られたことから、林業従事者の出入りが多いようだ。
尾根を暫く下っていき、呆気なく林道に出てしまった。
うーん、今回は全く登った気がせず不完全燃焼感が否めない。
雪に覆われた明見根元神社
神社を名乗る割にあるのは石碑だけ。
そして遂に向原の住宅地に着いてしまった。
物足りないけど、折角早く下山することが出来たのだから、家に帰ってゆっくりしよう。
暖かい日差しを受けながら、適当に住宅地をぶらぶら突き進んで行く。
私はこういう未知の土地をぶらぶら散歩するのも好きなんだよね。
振り返ると杓子山が厳かに聳えている。
今回は私の実力ではリスキーに思えたので途中下山することとなったけど、その山容を見上げると、やはり登高意欲がそそられる。
またコンディションが良い時季に別ルートを辿って再訪することとしよう。
住宅地を彷徨っていると、狭い車道から唐突に小型の周遊バスが飛び出してきた。
偶然にもそこが向原バス停で、本数の少ないバスが丁度やって来たところだったのだ。
これはラッキーとここぞとばかりに乗車して富士山駅へ。
運賃は一律100円、これは安い^^
ご老人が多く乗っていて、地元住民の数少ない足として利用されているようだ。
富士山駅からは私が極力利用したくない高運賃の富士急行で河口湖駅へ。
相変わらず外国人で混雑していて嫌になっちゃうね。
箱根もそうだけど、京都府民の気持ちが分かる気がする。(笑)
温泉か山中湖でも寄ろうか迷ったけどこの辺りは冷え込みが厳しいので、暖かいうちに高速バスで帰途に就く事にした。
帰りの高速バス車窓より、倉見山と杓子山が二つ並んで見えた。
再訪を誓って、その景色を見送った。

積雪で難渋し、心半ばに終わった今回の山行。
ちょっと見込み違いだったけど、終始誰とも会わず、静かな山行が楽しめた。
計画途次の下山の判断は間違いでは無かったと思うけど、臆病に近いくらい慎重になったのは年をとったから?それとも最近読み耽ってる遭難ドキュメンタリー小説のせい?
数年前なら若気の至りで突き進んでいただろうけど、万が一事故でも起こせば周囲に迷惑をかけるばかりか一生山に行けない身体になってしまうかも知れない。
だから、やっぱり今回の判断は正しかったと自分に言い聞かせ、また再訪することにしよう。

中央道西桂BS8:47→倉見山登山口8:55→倉見山10:49→相定ヶ峰11:05→向原峠11:43→向原峠12:23→向原登山口13:30