先日、松尾設計室にお伺いする機会がありました。
昨年、明石で工務店のお客様向けのセミナーをしたので、
松尾さんから、その工務店と一度ご挨拶がしたいとのお話をいただき、
訪問させていただきました。
松尾さんといえば、年間の25軒の設計を行い、
かつ、数多くのセミナー開催されている
「省エネ建築」で大変有名な方です。
ご挨拶程度に考えていたのですが、
1時間を超えていろんなお話をしていただきました。
まるで、個人レッスンを受けているようで、
とても有意義な時間を過ごし、刺激を受けました。
そんな中でも、心に残ったのは、
「省エネを勧めるのは、お客様に幸せになってほしいからです。」
という言葉です。
この言葉強く共感します。
pleasantの意味は「快適、楽しい、気持ちいい」という意味があり、
そんな幸せな家をつくりたいからつけました。
ですが省エネ、つまり温熱性能というのは家の良し悪しを決める、
一要素でしかありません。
その他にも構造、意匠デザイン、音響などなどたくさん
建築をする上で考えなけならないことがあります。
もちろん、コストも。
家を新築しよう、リフォームをしようと思った人は
かならず、今より幸せな家にしたいと思うはずです。
ですが、省エネつまり、高性能住宅=幸せな家を想像する人は
多くありません。
なぜなんでしょうか。
おそらく、住まい手は作り手が考えてくれていると思っているでしょう。
でも、残念ながら、省エネの熱心さは作り手にはかなり開きがあります。
耐震性では、建築基準法という最低基準を満たす必要がありますが、
省エネでは最低基準もありません。
耐震性や温熱性能はリスク管理です。
つまり、これから将来予測されるリスクを最小限にするための保険が
耐震性や温熱性能なのです。
分かりやすく車で言い換えると、
事故をするリスクがあるから、車にエアバックや
ブレーキをかける機能が普及しています。
ガソリンが高騰するリスクや、ランニングコストを抑えたいという
ユーザーの要望がエコカーを普及させました。
これらにより、安心して車を使うことができる訳です。
「幸せ」という観点にもどると、
買っては捨てるという消費社会の中には「幸せ」はありません。
住む人が地震や、光熱費リスクに怯えることなく、
家族が健康で住むための温度・湿度の中で、
初めて幸せな家になるのだと思います。
健康や経済性のない意匠デザインだけの建築は
時代センスのない悲しい建築です。
橋梁などの機能美があるように、
私は性能美をめざしたいと思います。