「おお、ヤニーナ!
お前には黙っていたが、あの『髪飾り』は、南稜テラスに置き忘れたかも知れないのだよ…」
「えっ!? そうだったの? パパ…」
「一緒に探しに行くかい?」
「かったるいから、いかな~い!」
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こうして、わたしは、涸沢へ一人でやってきたのです…
朝一番の乗り合いタクシーで上高地へ入り、5時半に出発。
10時45分に、本日の宿泊地、涸沢ヒュッテ到着です。
酔っぱらいおやじにしては、なかなかのペースではないかと、ゼエゼエ言いながら自画自賛じゃ!
(てか、もう少し、先に進めよ…)
でも、もう今日は、ここでビールなんだよ!
小屋のテラスの南西方面に広がる涸沢カールと、紺碧の空の境をくっきりと分ける穏やかな曲線は、奥穂から前穂へ至る吊尾根です。
順調にいけば、明後日に歩くのじゃ!
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そして、北西を眺めれば、テント場の向こうにある涸沢小屋の上にそびえる頂…
おお! 北穂じゃ~!
(すいません、興奮しております…)
北穂の右に延びる稜線は、ゴジラの背!
(もちろん、わたしが独りで歩けるようなところではありません…)
明日は、北穂へ登り、左手に尖がってる涸沢槍を経て奥穂へ行く計画です。
二日酔いでは厳しいので、今日は飲み過ぎないようにしましょう!
(たぶん、無理だけど…)
こうして、酔っぱらいながらの、ハイテンションな至福の一日が過ぎていくのでした…
本日は、日曜日。
小屋も比較的余裕があります。
ご飯、山盛りにお代わりをしたわたしは、7時くらいにはゴーゴーと眠りについたのでした…
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そ~し~て!
翌朝、目覚めれば、
そこには、絶景のモルゲンロートが待っていたのじゃ!
これから歩く、涸沢槍~涸沢岳です。
あまりの美しさに、危うくビールでも飲みそうになりましたが、本日は3時間の登りと、2時間+の岩歩きが待ってます!
死ぬといけないので止めときましょう…
ああ、奥穂よ…
もう、何も言うことはございません…
ヤニーナ、
君の髪飾り、きっと見つけてくるよ…
(だから、誰それ?)
では、朝飯食って、出発じゃ!!
(つづく)