「坑夫」夏目漱石
★★★★★
1908年元日から4月まで朝日新聞で連載された日本の小説。
夏目漱石の小説を読み進めております。
いやぁ、おもしろかった。
この小説は漱石の作品の中でも個人的には凄く好きでした。
この小説はある青年から提供された素材を元に書かれたものらしいです。
或日私の所へ一人の若い男がヒョックリやって来て、自分の身上にこういう材料があるが小説に書いて下さらんか。その報酬を頂いて実は信州へ行きたいのですと云う。
ということが漱石自身が「『抗夫』の作意と自然派伝奇派の交渉」に書いています。
漱石自身はこのようなタイプの小説を書くのはとても珍しいことみたいですね。
太宰治なんかはこの手法よく使ってたみたいですけど。
物語は東京の家を出た主人公が「抗夫にならんか?」と声をかけられて、声をかけてきた男と一緒に鉱山へ行き、抗夫になるまでの主人公の心の動きを描いたもの。
物語らしい物語は特にありません。
ほとんどが主人公の考えてる思考の流れのようなものが主題となっています。
主人公は何かがきっかけで、裕福な家を出てもう人生に対して絶望してしまっているようです。
抗夫になろうと思ったのも、
落ちるところまで落ちよう。
と思ったからで、死ぬか堕落かの選択の中、声をかけられたことをきっかけに堕落を選ぶのである。
しかし、育ちがいいもんだから、清潔でない食事に驚いたり、おいしくない食事に驚いたり、虫だらけの布団に驚いたりと、何かとお坊ちゃんっぷりが露見してしまう。
この小説では、主人公がなぜ家を出たのか。
なにに対して絶望しているのか。
そこら辺の詳しい事情は一切描かれていません。
どうやら、2人の女性の間でなにか悩ましいことがあったらしい、ということはわかるのですが、詳しい理由の説明はないのです。
さらに、この小説では主人公が抗夫たちの中に混じって様々な体験をして、成長する。
という物語でもないのです。
成長はほぼないといってもいいでしょう。
つまり、最初から最後まで、ひたすら主人公の思考を読んでいく、というもの。
結局、なにが言いたいのかもよくわからないんですが、この
なんにもない感じ
が凄く好きなんです。
19歳でなぜか人生に絶望した主人公の思考を淡々と読むのがとにかく心地よかった。
先日このブログに書いた映画「サムウェア」(感想はこちら)にもなんとなく通じるものがありました。
村上春樹の小説「海辺のカフカ」の主人公も「抗夫」が好きと言ってました。
個人的には「三四郎」よりも好きでした。
漱石の小説は本当に文章が美しくて読んでで本当に気持ちいいです。
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Plastic-Mix 20140719
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