「北京の秋」ボリス・ヴィアン
★★★☆☆
「うたかたの日々」で有名なボリス・ヴィアンの不思議な小説。
(↑作家以外にもトランペット奏者、画家、俳優、歌手など20以上の顔を持っていた)
砂漠の真ん中に鉄道を作るために集まった人々の不思議な人間模様を描いたものです。
アマディス・デュデュは砂漠あるのエグゾボタミーへ向かうバスに乗ろうとしますが、なかなかバスに乗れず結局歩いて到着します。
世捨て人となったクロード・レオンは神父のプチジャン師に
「エグゾボタミーに世捨て人にうってつけの土地がある」
と教えてもらい一緒に向かう。
アンジェルとアンヌとロッシェルは交通事故を起こしてしまい、怪我をさせて人物の代わりにエグゾボタミーへ行くことに。
マンジュマンシュ教授はイタリア製の小型エンジンを積んだ飛行機を飛ばすためにエグゾボタミーへと向かう。
様々な理由で集まった人々。特定の主人公はなく、それぞれの登場人物にドラマがあります。
この中に登場するマンジュマンシュ教授は「うたかたの日々」でクロエの主治医として登場しています。実際、物語の中で
「クロエが死んでからというもの、わしはずっとこんな調子だ」
というセリフがあり、「うたかたの日々」の世界とリンクしているのがわかります。
様々な人物が登場しますが、中でもアンジェルという人物が最も主人公っぽく描かれています。
実際にこの小説の登場人物で共感できるのはアンジェルぐらいでしょう。
彼は友人であるアンヌ恋人であるロッシェルを愛しています。
アンヌはロッシェルを本気で愛していないのに、ロッシェルはアンジェルには興味を示さずアンヌにぞっこん。
そんな苦しい状況の中でもつねにロッシェルのことを考えているアンジェルの姿がせつないのです。
「彼女はぼくが好きではありません。だから、ぼくは彼女を愛しているのです」
というセリフがせつなかったです。
ボリス・ヴィアンの小説は
日常の中の非日常ではなく、非日常の中の日常
を描いたような作品が多く、不思議な魅力があるように思います。
この本は解説を安部公房が書いていて、
「生涯かかっても、これだけの出会いはめったにあるものではない」
と称しています。
よく考えるとボリス・ヴィアンと安部公房の作品ってテイストが似たところがあるなぁ、と思いました。
「うたかたの日々」が好きな人であれば間違いないと思います。
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