アイスマーク 赤き女王の剣 | プラネタ旅日記

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児童書専門古本店プラネタ(無店舗)の管理人が細々~となにやら呟いております。大半は読書記録。時々頭の悪さと猫馬鹿具合を炸裂させてます。

スチュアート・ヒル, 金原 瑞人, 中村 浩美
アイスマーク―赤き王女の剣

シリン・フリア・ストロング=イン=ジ=アーム・リンデンシールド。
またの名を"北のヤマネコ"。
14歳にして女王。統治者、そして戦士。


甘やかされて、戦いに際して右往左往する年若い女王なら腐るほど、物語の主役を張ってきたけれど、ここまで猛々しい女王様にはまずお目にかからない。
シリンが身に纏うのは、レースや絹のドレスではなく、鎧兜。
若干の準備期間はあったものの、彼女の手に、多くの命と国が託された。


「われらに血を!砲火を!炎を!」


シリンがあげる鬨の声は、兵士達を鼓舞するだけでなく、何より、自分を励ますための言葉。
どんなに上手く立ち回っても、人狼族、ヴァンパイア族、ユキヒョウ族と言う盟友を得ても、元は14歳の少女。
不安や心細さを押し殺して、敵兵に向かう姿は何だか応援したくなる。
唯一、年の近い相談係・魔女の息子オスカンとの初々しいまでの友情も、何だか可愛らしい。


正直、分厚いファンタジーには飽き飽き。
年若い主人公の劇的な物語。
もうありふれていてお腹いっぱいです。
魔法使い、ヴァンパイアと言う内的ポイントがなければ、読む気にもならなかったであろう本です。
前半はどうも退屈で、スピード感に欠ける。
たったの14歳で一国の女王になったシリンが盟友を得てゆく様は面白いけれど、ページをめくるのがもどかしいほどではない。
3分の1を読み、ここまで読んで辞めるのも勿体無いことだと思って自分を励まし、半分まで行き着いて、あと半分で終わりだと自分を励まし、4分の1になってあと少しだと安心する。これを読み終えることがもしかして私の戦いなのか?と思うほど。
そんな、どちらかと言えばゆるい展開です。結末も、なにやら物足りないような気がしてなりません。
それでも、何だか不思議なことに、読了後には軽い満足感が得られます。分厚さの所為だけではなく!


訳者あとがきに、「『もののけ姫』に勝るとも劣らない新しいファンタジー・ヒロインが登場した」と書かれていますが、個人的には「もののけ姫」よりは好きです。
私はどうも、映像をきっちり脳内に整理して納めると言うのが苦手なので、「もののけ姫」の面白さが今ひとつ分かりません。2~3度見ましたが、正直「?」な部分が多いのです。
起承転結がはっきりしているのと、文章なので頭に脳内に納まりやすいと言うこともあり、シリンはもののけ姫よりも強く、激しく、そして美しく思えます。
映画化の話が出ているそうですが……、この14歳の戦う女王を、どんな女優さんが演じられるんでしょうか。
CGたっぷりになるんだろうな、と思うと、あまり楽しみとは思えません。
2巻の出版も決まっているそうです。
オスカンについてが今ひとつ消化不良なので、その辺が語られるのかと思えば、いきなり20年後に飛ぶのだそうです。
20年後、シリンは34歳。
一国の女王としてどんな女性に成長しているのか、もしかして子供がいるのか、その辺はとても楽しみです。


……って、あれ?
なんか微妙に辛口っぽいですよ??