- ポリー・ホーヴァス, 北條 文緒
- サリーおばさんとの一週間
- サリーおばさんと一週間を過ごすことになったアンダソン家の三人姉弟、メリッサ・アマンダ・フランク。
- 三人はサリーおばさんの語るほんとうかうそかわからぬ不思議な話に引き込まれていく。やがてその不思議な話は実は作り話ではなく、お父さんたちが小さかった溶きのアンダソン家の物語であることが分かってくる。
- なぜお父さんがサリーおばさんに冷たいか、その理由も……。
両親の仕事や旅行、やむをえない理由で風変わりな(或いは偏屈な)親戚と数日を共に過ごすことになった子供のお話は沢山あります。
子供たちは風変わりな親戚には興味津々、偏屈な親戚には多少辟易しながらも、いつもと違う日常を過ごすことになるわけですが、読んでいて面白いなと思うのは、お話上手な親戚が出てくる本です。
本当か嘘か分からない、作り話のようでいて、もしかしたら本当かもと思わせる。
子供たちが夢中になって聞くお話は、読者も夢中になって読んでしまいます。
この「サリーおばさんとの一週間」のサリーおばさんも、風変わりでお話上手。
お願いしていたベビーシッターが腺ペストで子供たちの面倒を見えなくなったとき、困ったアンダソン家のお母さんは、「あなたのお姉さんがいるわ!」と、サリーおばさんを思いつくのですが、お父さんは様子が変です。
いよいよサリーおばさんがやって来たときも、むっつりとしたまんま。
サリーおばさんの方は、厚底の靴を履き、靴紐を膝までぐるぐるに巻き、黄色い服を着て、髪を塔みたいに結い上げ、ふつうのきらきらした目よりもずっときらきらした目で子供たちを魅了(?)。
いよいよ両親は出掛けてしまい、おばさんとの生活が始まります。
はまぐりに噛み付かれたジョン伯父さん、二週間のつもりでやって来て六年も滞在したルイ大叔父さん、ホフナー家のミセス・ガンダソン、クーター島でルイ大叔父さんが見たもの、ロビー(子供たちのお父さん)を憎らしく思った子供の頃のサリー……。
この、子供の頃のサリーが物語りの鍵です。
……どこまで書けばネタバレなしで面白さをお伝え出来るのか……(苦笑)
子供たちのお父さんが、サリーおばさんの来訪を喜ばない理由が、最後に分かります。
分かったからと言って、「あ、そうなんだ」と納得してハッピーエンドになりきらないのがこの本の味のあるところだと私は思います。
ある意味、ぞっとする……、ただ、大人になっても尾を引いているお父さんとサリーおばさんの子供心についた傷、確執だけではなく、ルイ大叔父さんが見たと言う、トロルの存在が……。
トロルに渡してしまったものは絶対に返って来ない。
ロビーは帰ってきたけれど、二度と返ってこないものもあった……。
「思っていたほど、こわい話じゃなかった。」とアマンダ。
「そうね。なんだか悲しい。」とメリッサ。
恐い話じゃないと思えば恐くなく、ただ悲しい、寂しいだけのお話です。
でも、恐いと思えば恐い……、例えば、妖精の取替え子とか、想像すると……。
「サリーおばさんとの一週間」、原題は「THE Trolls」です。
この原題を踏まえて読むと、あっちこっちの複線に気付き、「あー、なるほど!」と納得できます。
これはなかなか、大人が読んでも純粋に面白い本だと思います。
- Polly Horvath
- The Trolls