- 新美 南吉, 黒井 健
- 手ぶくろを買いに
内容(「BOOK」データベースより)
冷たい雪で牡丹色になった子狐の手を見て、母狐は毛糸の手袋を買ってやろうと思います。その夜、母狐は子狐の片手を人の手にかえ、銅貨をにぎらせ、かならず人間の手のほうをさしだすんだよと、よくよく言いふくめて町へ送り出しました。はたして子狐は、無事、手袋を買うことができるでしょうか。新美南吉がその生涯をかけて追求したテーマ「生存所属を異にするものの魂の流通共鳴」を、今、黒井健が情感豊かな絵を配して、絵本として世に問います。
好きな絵本は沢山沢山ありますが、中でも、一番すきなのは、この「手ぶくろを買いに」です。
小学1年の時、転校することになった私に、担任の先生がくれた絵本でした。(貰ったのは、いもとようこさんの絵です)
キラキラまぶしい雪の中で遊んだこぎつねの、赤くなった手。
どうにかしてあげたいと思うお母さん。
人間の手と本物の手を間違えて出してしまったこぎつね。それでも、手袋をちゃんと売ってくれたおじさん。
間違えちゃったんだよ~!って、無邪気に報告するこぎつね。そして、「人間はほんとうにいいものかしら?」と思案するお母さん。
印象に残ってるシーンは沢山ありますが、私が一番すきなのは、
手袋を買い終えたこぎつねが、通りかかった家の窓の外で聞く、人間の親子の会話です。
「こんな寒い日は、森のこぎつねは寒い寒いって泣いてるでしょうね?」とたずねた子供に、
「森のこぎつねも、お母さんぎつねの歌を聞いて、ほらあなの中で眠ろうとしていますよ」と答えるお母さん。
その会話を聞いて、こぎつねはお母さんが恋しくなって、大急ぎで森に帰ります。
何故、この会話が無性に好きなのか、理由はよく分かりません。
可愛いシーンなら、他にあるのに……。
でも、「手ぶくろを買いに」と聞いて思い出すのは、
「おかあさん、おててが冷たい、おててがちんちんする」と言うこぎつねのせリフと、上の親子の会話です。(←「おかあさん」ではなく「おかあちゃん」でした)
今も、頂いた絵本が手元にあります。
引越を繰り返し、部屋の片隅に放り出され、他の本に押し退けられ、すっかりズタボロです。
数年前には、絵の可愛さに惹かれて黒井健さんのイラストのものも購入しました。
でもきっと、これからもずっとずっと、本棚の片隅にあるんだろうな……と思います。
背表紙には汚い文で名前が書いてあります。フルネームでしたが、今は苗字しか残っていません。
ページを開くと、漢字には母親の字でルビがふってあります。
時々、不意に思い出して本棚から引っ張り出して見るのですが……。
見るたびに、懐かしい、優しい、何だか嬉しい、それからちょっとだけ、切ない気分になります。
↓英語版もあるんですね。表紙の丸々したこぎつねが可愛い!↓
- 新美 南吉, マイケル・ブレーズ
- 手袋を買いに―Level 1(1000‐word)