昔の電子工作で「真空管式ワイヤレスマイク」と言えば、中波用の微弱電波のAM送信機を意味しました。100Vに繋がるのでワイヤレスでもないのですが、電子工作用語として定着していました。wirelessは英語なら転じて電波利用、の意味で通るので(wi-fiとか)そちらが語源でしょう。典型的な構成は発振・AF増幅・整流の3球式で、並三ラジオとは部品も回路も共通部分の多いものです。
この「ワイヤレスマイク」は自作人気が高く、繰り返しラジオ雑誌に掲載されました。発振器の負荷は意図的に抵抗器かRFCで済ませるため微弱な電波しか出ないものの、「同調回路にすると出力は上がります」とそこまで書く筆者もいました。また「「ラジオの製作」誌のQ&A」コーナーにも「これで動きますか?」との投稿が頻出しますが、それらがまた6AR5とか出力管を使った上に同調負荷という代物で、中には5球クラスの完全にハム用送信機がモデルらしきものもありました。回答者の近藤氏も毎回「免許を取って使ってください」、と書けば今度は「どんな免許ですか?」という質問が来る始末。とにかく送信機を作って次は出力アップしてみたい、という電子工作の入門者は多く存在し、私も同類としてアマチュア無線を志したのです。
さて私の場合、元の並三ラジオの部品のみでもワイヤレス改造できたはずなのですが、当時はまだ回路も理解していません。雑誌の作例が6BE6を使っていれば買って来てその通り作るのみですが、全くこれが動作しません。ところが随分と後に4球スーパーの球と交換してみたら一発完動(そのくらい徹底して配線チェックはしてありました)。判明したのは、新品と言われて買ったはずの6BE6が電極タッチの不良品だったのです。秋葉原で購入したのは箱無しの裸の真空管を棚にズラリと並べた店でしたが、今思うと印刷もやたらと文字が大きくゴム印で押したようで不自然でした。「カンマツ」はこういうところから流れていたのでしょうか。