こんばんは。


ご訪問くださり、ありがとうございます。

こちらでは、腎不全保存期のかたや、腹膜透析を受けている方に、何らかのお役に立ちそうな情報をご紹介しております。


アメンバー限定記事で1月末からご報告していたのですが、本年1/23に腎移植手術を受け、私の左腎を夫に移植いたしました。


術後1ヶ月がたち、夫婦ともに安定してきましたので、これから腎移植を検討しておられる方のために、まずは


ドナーになって腎臓を提供すると、ドナーにはどういうメリットがあってどういうデメリットがあるか


についてご説明したいと思います。


特に、配偶者のかたが腎不全で、移植のために腎臓を提供してあげたいけど、どうなるのか不安…


なかたのお役に立てばと思います。


【2/23加筆】

なお、腎移植外来を始めて受けたときの様子はこちらの記事

 ↓


ドナー検査の内容についてはこちらの記事

 ↓


を、それぞれご覧ください。

仕事で休みやすい時期も考えて初診から約半年で移植、になりましたが、このぐらいのスケジュールですと病院もドクターの手配がしやすかったとのことです。

手術は医師6人でされますので(ドナー3人、レシピエント3人)、ドクターたちの予定を合わせる必要があるそうです。


オペの順番待ちで混んでいる病院ですともっと待たされることもありますので、早めの受診とスケジューリングをおすすめします。


なお、移植か透析か、で悩まれている方は、こちらの本をお読みになることを強くお勧めいたします。

 ↓


(加筆はここまでです。)


ドナーになることのメリット


1  食事制限がほとんどなくなる


透析患者、または保存期ラスト頃の患者さんの配偶者をされていますと、毎日の食事制限がそれはそれは大変だと思います。

特に、ご主人が腎不全で奥様がケア担当でお料理を作っておられる場合、毎日のお料理がめちゃくちゃ大変ではないでしょうか。


リンとカリウムと塩分とタンパク質を全部制限され、野菜はゆでこぼして栄養素を洗い流し(泣)、お肉も少ししか食べられず、乳製品はほぼ禁止、ソーセージやハムもお値段の高い無塩せきを少量しか使えないので、ドトールのクロックムッシュとかミラノサンドAとかレタスドッグとか全く不可…

(特にドトールのファンではないのですが、ハムとチーズを禁止されると、カフェ系の外食はほぼ壊滅しますよね…)


移植後は、患者さん(レシピエント)の尿がどんどん出るようになりますので、免疫抑制剤関連の制限が残る以外は、ほぼ食事制限がなくなります。

塩分6g制限は、ドナーとレシピエントともに、一生続きますが、たぶん皆様は1日4gの厳しい塩分制限を耐えてこられたと思いますので、1日6gなら楽勝ですよね?)

芋もトマトもチーズも食べ放題です!

リンの制限が解除されますので、ドトールやスタバにも行けます!フードをオーダーできます!


なお、免疫抑制剤による食事制限とは、


移植後、半年間はナマ物(生野菜や刺身、寿司、生卵、生クリームやカスタード、はちみつ)不可、バイキング不可、作り置きのものは不可


グレープフルーツと一部の柑橘類、柑橘類の皮(マーマレードとか)は永久追放


というだけです。

なんてラクなんでしょうか!


半年待てば、減塩さえすればほぼなんでもOKです。

グレープフルーツに特に思い入れとかないですし(笑)


2  食事時間の制限がなくなる


腹膜透析でAPDのかたは、おそらく、夜の透析のために、


早めに夕飯をすませてお風呂に入り、トイレもすませてから、かぐやにつながれる


暮らしをされていたと思います。

うちも、夜10時から透析開始だったので、夕食は8時には食べ始めないとピンチでした。

でも、共稼ぎでそう言われると、残業とか基本的に無理で、定時にダッシュで帰ってご飯を作るしかありません。

これは本当に大変です。


免疫抑制剤は、毎日朝晩12時間おきに、決まった時間に飲みさえすればよいので、


朝9時→夜9時

朝8時→夜8時

のように決めておけばほかには制限なしです。

食事の前とか後とかもあまり関係しないらしいので、

とにかく毎日◯時に薬を飲め!

という以外はフリーになります。

この自由、素晴らしいです!


3  透析液の準備と器具の洗浄をしなくていい

毎日毎日、時間になると透析液を準備して開通させてセットして、朝になると終了して排液タンクを洗って乾かして…という作業から解放されます。

楽ですー!


4 患者が一番風呂でなくてよいし、大浴場や温泉にもどんどん行ける


腹膜透析のかたや、シャントのある方は、清潔な一番風呂しか入れないと言われていますので、家族は常に最後のしまい湯のみ。

また、カテーテルの出口部保護のために基本的に大浴場は禁止ですし、温泉も、客室露天風呂の源泉かけ流しなどでない限り、行きにくかったと思います。

移植するとお腹の穴はなくなるので、お風呂三昧です!

浴室で感染症をもらうのは怖いですから、あまり混雑したところはヤバいですが、ちゃんとした旅館の大浴場なら、空いてる時間を見計らえば入れそうです。

→旅行の幅が広がります!バカ高い特別室でなくても旅行に行けるようになります。自宅の風呂も家族が一番風呂に入れるようになります。


5 透析液段ボールと透析液バッグの廃棄の手間がなくなる

腹膜透析していると、毎日一箱以上段ボールのゴミがでて、半月ごとに捨てにいくだけでも一苦労です。

天井まで畳1畳分、ぎっしりと積み上がっていた透析液のはいった段ボールともおさらばです。

毎日大量に出る透析液バッグで有料ゴミ袋がすぐいっぱいになることもなくなります。


6 患者がしんどそうにしているのを見て心配しなくていいし、介護の手間がなくなる


腹膜透析だと取り除ききれない老廃物(マイクログロブリン)とかが体内にたまり、透析3〜4年目ぐらいからだんだん体調が悪くなりがちです。

かゆみやムズムズ、不眠、足の痙攣、だるさ、むくみ、高血圧…などで患者本人が辛そうにしていると、見ているだけで家族も大変です。

また、かゆみ対策で軟膏などをたくさん塗ると、シャツが軟膏で汚れて、お洗濯がこれまためちゃくちゃ大変に…


移植前、腹膜透析4年目の旦那のクレアチニンは、腹膜透析をやっていても

15

ぐらいだったのですが、移植後は

1.18

まで下がりました。

(ドナーのわたしとほとんど変わりません。)

かゆみもムズムズも不眠も痙攣もすべて移植後直ちに解消しました。


移植後、主人は、毎日、2000cc水を飲んでも、それより多い3000ccずつ尿が出て、みるみるうちに体重が10kg減りました。

腹膜透析の排液量は決して少なくなかったのに、それだけ組織に余分な水がたまっていたと思われます。

そのおかげで、最高血圧は、移植前

190

だったのが、移植後は

125

前後まで落ちました。

血圧が乱高下して倒れるようなこともありません。


移植前は、毎晩薬を塗ってマッサージしてもらわないと寝られない、というので、かゆみどめの抗ヒスタミン剤や保湿剤を全身に塗るのに40分、寝る前の全身マッサージにまた40分、という長い時間がかかっていたのですが、移植後はそれらのケアが全て不要になりました。


何も塗らなくてもかゆくならないので、お風呂の後、ほっとけば勝手に寝てくれますし、洗濯ものは洗濯機に放り込むだけでいいです。洗濯機に入れる前に熱いお湯で手もみ洗いとかしなくてもシャツが綺麗になるなんて、夢のようです。


移植したおかげで、自分の自由な時間を取り戻せました。これは本当に大きいです。

手のかかる赤ん坊が突然成人して就職してくれたような感じです。



7  旅行の時に透析液や機械を持って行かないですむ


移植後は、毎日2回、免疫抑制剤を飲む以外はフリーです。

なので、移植後半年たって免疫抑制剤の量が安定し、手術跡の傷もしっかり治って体調が落ち着けば、薬をちゃんと持っていって、混雑した感染症のおそれのあるところさえ避ければ、旅行が自由にできるようになります。


腹膜透析中のように、1日分でトランク一杯になるような多量の透析液を運搬したり、腫れ物のように気をつけながら、透析機械のぽかおんやつなぐを運んだり、せっかくの旅先で時間をかけて透析する必要もありません。

元気なころと同じように自由に旅行に行けるようになります。

これも、配偶者のかたにはすごく大きなメリットだと思います。

老後に旅行を楽しめます!


ドナーになることのデメリット】

1  片腎になるので、そちら側に何かあると自分が腎不全になってしまう


提供してしまうと自分の腎臓は1個だけになりますので、


交通事故やガン、腎臓結石による水腎症などで残った腎臓がやられる

といった事態になりますと、たちまち自分も透析の必要な身体になってしまいます。


2  腎臓が半分になるので、残った腎臓に無理をさせると早く悪くなる

→腎不全になりかねない


手術前、ドナーの私は60歳で、

クレアチニンは0.66

eGFR(腎臓の能力)は69.7

でした。

(元気一杯を100とするとその約7割の能力、ということです。60歳ならこんなもんかな、ちょっと若い頃無理しましたか?という数字だそうです。)


移植後1ヶ月の数値は、

クレアチニンは1.0

eGFR(腎臓の能力)は44.3

です。


2人分の仕事をひとりにやらせてる、ような感じですので、昔より血液にゴミがたまるのは仕方ないですが、だいたい移植前の半分よりちょっといいぐらい、という感じです。

なので、以前のように徹夜とかの無理な働き方はもうできないですし、確かに疲れやすくなったかも、と思います。帰宅すると(腹が痛いせいもありますが)横になりたくなります。


クレアチニン1.0でこれなら、クレアチニン15の頃、旦那はどれだけだるかったのか?と思いました。


なにより、腎臓は、


冷やすこと

疲れ果てること

座りっぱなしの血行不良

寝不足


でどんどん悪くなりますので、なるべく横になって、腎臓にたくさん血を流して、腎臓をいたわりながら、あと20年あるかどうかの人生を大事に過ごさなきゃ、と思っています。


「私は年をとってもバリバリ仕事第一で邁進していくんだー!」という方には、ドナーは向かないかもしれません。


3  手術後3日間はかなり痛くてしんどい


お腹のへその横あたりを縦に10cm切って腎臓を取り出します。

内視鏡入れるための1cmぐらいの穴も、切り口の外側にもうひとつ開けます。


手術後は、その穴にドレーン(血抜きのための管)が入り、4日ぐらい抜けません。流れ出た血をためるドレーンバッグをぶら下げてベッドに寝ています。


尿道にもカテーテルが突っ込まれ、おしっこはそこから自動で流れ出る感じです。これは女性より、尿道の長い男性のほうがかなり痛いそうです。

(チ◯先からマクドのシェイク用の太いストロー突っ込まれてる感じです)


あとは手の甲に点滴の針を突っ込まれてテープで固定され、そこから抗生物質と痛み止めの麻薬が入ります。

今は、ずれないように、肘の内側じゃなくて手の甲に点滴いれるのだそうですけど、手の甲だと痛いんです…(泣)

また、痛み止めの麻薬が身体に合わないかたはずっと吐き気で苦しむことになります。

(↑私がこれです…。吐き気に負けて麻薬をやめると、こんどはてきめんに腹の傷口が痛くなります。)


手術後2日は絶食で点滴のみ。

寝たきりですので腰が痛くなりがちです。寝返りは腹の傷口が痛くてあまりできません。すると腰が割れそうに痛くて(泣)

強制ダイエットだと思えばいいのかもしれませんが…😅


4  合併症が起きることがある


腎臓を取り出す時に、腎臓がまわりの臓器とくっついてると、周りの臓器に傷がつくことがあります。

大学病院には研修医というヒヨコ君がいて、彼らがミスをやらかすと、特にそういうことになりがちです。


私は腎臓の隣のリンパ管に傷をつけられまして、手術後、そこからリンパ液が漏れ、赤くないといけないドレーンの排液が真っ白になり(泣)、絶食2日の予定が5日間に延びた挙げ句、退院も予定より遅くなって、手術後1ヶ月近くの間、油ものを食べることを禁止されました。

復職予定が狂って休暇が延び、職場に大迷惑をかけ、顧客にも平謝りです。


結果、体重は4キロ減。コロナ太りする前の体重に戻りました。

…体重減は良かったのかもしれませんけど(笑)


5 手術後3ヶ月は無理できない


1/23のオペ前、

「退院予定は1/30だし、2/12の初午には伏見稲荷大社の稲荷山に登ってお礼参りをしたいな〜」

と気楽に考えていたのですが、そうお話ししたら、主治医から


山登りは3ヶ月はやめてください。

お腹の中を切りますので、組織がちゃんとくっつくのに、ドナーさんでも2ヶ月から3ヶ月はかかります。1週間でくっついたように見えるのは表皮だけです。3ヶ月間は無理しないこと。縫ったところが中で破れたら大変ですよ。


と注意を受けました。

退院してみたらドクターのおっしゃるとおりでした。


現在、手術後1ヶ月目ですが、傷口にはケロイド予防の医療テープ、

アトファイン

というのを貼っています。

また、腹圧で腹の縫い目の筋肉がはじけるのを防ぐために、寝る時以外はまだ

術後腹帯(マジックテープ式のもの)をつけています。


早く歩くとまだお腹の傷に響きますし、傷口に下着がこすれると、アトファインを貼ってても痛いです。

(ちょうどベルトの位置に縦に傷があります。)



 

日にち薬、という感じでジワジワ良くなってはいますが、もとに戻るには確かに3か月はかかりそうです。


なお、1/23にオペ、2/2に退院して自宅療養し、職場復帰は2/13でした。

(リンパ管損傷で予定より遅くなりました。本来は1/30退院、2/5復職のはずでした。)



【結論】

メリットとデメリットは以上のような感じです。


私としては、

自由を手に入れた!

保存期の状態に戻れた!!

という喜びのほうが、痛かった間の記憶とか、自分も無理のきかない体になったことより大きいです。


たぶん、移植検討中のかたは60歳前後の年齢のかたが多いと思いますが、ご自分の今後のライフプランをどう考えるかが一番大きいかなと思います。


夫婦でこれから自由に旅行したり外食したりしたい。

今後、自分はそんなにバリバリ仕事三昧の人生でなくていい。

自由な自分の時間を確保したい。


というような方には、ドナーが向いてるかも?と思います。


なお、ドナーには要件があり、ドナーの年齢は若いほどいいですし、ドナーのeGFRが悪いとドナーになれないことがあります。

(腎臓がひとつだけになってもやっていける人でないと提供させてもらえません。)

移植をお考えなら、一度は早めに移植外来を受診されたらよいかなあと思います。


ドナーは、オペの前ギリギリまで、ドクターとナースさんたちから、


ほんとにいいですか?

やめてもいいんですよ?


と確認され続けます。

手術当日の朝にも聞かれました。


なので、とりあえず肝心の

白血球の適合性の有無(クロスマッチ)

と、

ドナーの腎機能

を調べておくのもひとつの方法かなと思います。これがダメだとそもそも移植できません。


ただし、検査までしておいて途中で移植をやめると、それまでの検査費用がすべて10割負担で自己負担になりますので、その点はご注意くださいね。

移植にこぎつければ、医療費は全てタダです!


皆様が、ご自分の希望する未来へスムーズに進めますように。

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