(前回「龍田越」より続く)
金春禅竹作とされる謡曲『龍田』*に、
これより龍田越にかかり、河内の国へと急ぎ候(略)これこそ龍田の明神にておん入り候よくよくおん拝み候へ
という一節があります。龍田越は、大和と河内を結ぶ要路。
『古今和歌集』巻第十八「雑歌下」の994**に、
題しらず よみ人しらず
風ふけば沖つ白波たつた山 夜半にや君がひとりこゆらん
『伊勢物語」23段***にも、
風吹けば沖つ白浪たつた山夜半にや君がひとりこゆらむ
夜半に龍田山をひとり越えていたでしょうか。
龍田の神は風の神として知られていました。
上画像は、現在の龍田大社。鳥居の扁額の文字は「龍田本宮」
参道を進んで行くと、正面に拝殿が見えてきました。
『大和名所圖會』巻三によれば、
愚考 龍田山龍田川の和歌、二十一代集の内に百二十一首あり。
龍田山・龍田川は古くからの歌枕の地でした。
さて、龍田本宮を出て、龍田古道を進んでいくと、
信貴山下駅前に、「神降りの風道 龍田古道・亀の瀬ウォーキング」の地図プレートと、
1983年に廃線となった、近鉄東信貴鋼索線の「コ9形車両」****。
ケーブルカーが、近鉄生駒線の信貴山下駅から信貴山駅を結んでいました****。
廃線後は、地元の小学校に保存されていたものを、2020年に移設され、現在地に。
近くには「日本遺産認定記念」の万葉歌碑も。
出典は、『万葉集』巻第五ー877で*****、
ひともねのうらぶれ居るに竜田山御馬近付かば忘らしなむか
馬で龍田山を越えたでしょうか。
「龍田古道」は日本遺産。
山上憶良の歌で、2021年4月の建立だそうです。
この後は、近鉄生駒線竜田川駅まで足を伸ばし、帰途に就きました。
*『新潮日本古典集成 謡曲集 中』(新潮社、1986年)
**『古今和歌集』(岩波文庫、1981年)
***『伊勢物語』(岩波文庫、1964年)
****『鉄道ピクトリアル』No.421(1983年9月号)。同号のp.6には、9形車両の画像も掲載されています。ただ、p.22に「最近、営業廃止申請がなされている」と記述されているように、同年8月31日をもって、廃線となりました。
*****『万葉集(二)』(岩波文庫、2013年)









