[七曲り荘日記]
●巻頭連載[第114回]
「我らの時代の墓碑銘を描く画家――その淫蕩する光線」
「絵本」
佐藤ブライアン勝彦●作品&文
●ゲームシリーズの絵も一点完成! ポイントは額縁の右上をガスバーナーで燃やしました。
先日、仙台もすごい雪が降った。
描いてる途中、気になって夜中に雪かき3回。
水分が多くて重い重い。
あやうくギックリ腰になりそうだったわ。
●玄関前に置いてある椅子が悪いビション・フリーゼの様に。
この椅子見たら、何故か絵本のストーリーが3つくらい降りてきた。
ちょっと、描いてみようかな。
子供の頃、親がお店をやってて忙しいので、俺が1人で寂しくない様にって事なのか、絵本を買ってくれた事があった。
ある日突然に、それもダンボール箱が2つ(笑)。
ダンボールが届いた時にお店にいて、
「なに、この大きなダンボール?」って思ったのを覚えてる。
開けてもらったら、数十冊の絵本が入ってた。
おそらく当時5歳くらい。
よくこたつに入って1人で読んでたなー。
俺の妄想癖は、その頃から始まったんだと思う。
中学生くらいに絵本書いてみたいな…と思ってから、40年経ち、今なら書けそうな気がする!!
●とりあえずラフ。
そして今日28日は、将棋教室が移転してしまうので泉での最後の日。
ちょっと顔をだして来ました。
これから皆で飲みます!!
1月24日(水)鬼子母神は曇り。
BURST展の作品設置日。
夕方、七曲り荘から出ると、満月が煌々と光っていた。
だからか、久しぶりに体調がいい。
40代半ばあたりから、満月になると、普段より体調が明らかに良くなるのを知った。
5時45分、展示作品を持ち、鬼子母神からタクシーに乗る。
額の重さは、体感的に7~8キロほどか。
ガラス張りなので、梱包が私には難しく(都から臨時給付金が降りたので)宅配発送せずにタクシーを利用したのだ。
6時半、会場のギャラリー「白線」に着く。
すでに、釣さん、前田くん、ヒカルちゃん、そして「白線」のオーナー斎藤さんが居り、だいたいの設置が終わっていた。
私の額の設置は釣さんとヒカルちゃんにまかせ、今年初の缶ビールを呑む。
すこぶる気分がいい。
バンドや雑誌編集を長くするくらいだから、もともと仲間と一緒になって何かをするのが大好きなのだ。
ずっと年末まで体調が最悪だったし、前田くんとヒカルちゃんの結婚式の帰りのタクシーで粗相をして以来、酒を呑む気になれなかったのだが、今夜は何やら、昔の気持ちが蘇ったような気分だ。
設置を終えて、そばの中華チェーン店で、4人で前夜祭をする。
釣さんと呑むのも久しぶりで嬉しい。
2人で温めた紹興酒をボトルで頼み、呑み始める。
たちまち1本が空き、2本目を頼む。
で、たちまちブラック・アウト――。
――駅員に起こされると、そこは中央線終点「高尾」だった。
(あとで釣さんに訊くと私は先に帰ったとのこと)
時刻は12時。
もう新宿へは帰れない。
駅員の勧めで、ひとまず八王子まで戻る。
駅から出てふらつく。
すでに駅前にも人影は、ぽつぽつとしか見えない。
寒さと不甲斐なさと知らない街の淋しさに、つくづく厭世的気分におちいる。
生まれて初めてマンガ喫茶なるものに泊まる。
6時半まで2,800円だったような。
眠れないと思ったが、ふと気づくと、点けっぱなしのテレビが5時半を示していた。
体調も気分も最悪だったが、無理矢理からだを起こし、店を出て、駅へ向かった。
中央快速が次第に新宿へ近づくにつれ、安心感が湧いてくる。
で、七曲り荘へ着いたのは7時半だった。
ホント、何をしてるんだオレは?
1月26日(金)鬼子母神は晴れ。
夕方まで寝込んでいた。
今日はNMIXXソリュンの20歳の誕生日。
そして、新曲「DASH」が今夜も音楽番組で1位を取った。
これで3日連続である。
(韓国では1週間毎日音楽番組あるらしい)
明日も、ソリュンがMCを務める番組で1位を取れるかもしれないという。
しかし、さっき韓国のメロン・チャートを覗いてみたが、未だ「DASH」は100位にも入っていない。
(音楽番組のランキングは5つくらいのチャートとファンの投票によるため)
[深夜の夕食]
●ナポリタン(ベーコン、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルーム)
●ブロッコリー(おとついの昼の残りにドレッシングをかけて)
●紅茶
●みかん
買い物へ行く気力がなく、冷蔵庫に残っていたもので済ました。
(マッシュルームだけコンビニで買った)
が、数年ぶりに食べる、粉チーズとタバスコをたっぷりと振ったナポリタンは旨かった。
1月27日(土)鬼子母神は晴れ。
PM6時より、ギャラリー「白線」にて、ゲストに末井昭さん(サックス)を迎えて、前田くんと3人で、20数人の客を前にして、朗読セッションをした。
読んだ詩は、原稿を展示した以下の作品である。
(以前ここに乗せた同題の作品を削り、新たに加筆をして朗読用の長さにそろえた)
「20世紀の戦争が女の顔をしていないなら21世紀の戦争は兄弟の顔も剥ぐだろう」
粉砕した戦車のニュース映像を見るたび、去年の秋に離婚したという自衛官の弟を思う。三人の娘とも別れ、今は官舎で暮らす弟の操縦する74式戦車のハッチへ、ジャベリンが垂直に炸裂し、内部の砲弾が誘爆、砲塔ごと吹っ飛んだ様子が、ビックリ箱だと笑われる光景が眼に浮かぶ。
次いで、17万ルーブルの月給を信じた新兵たちの手足や首を拾う、肌に染み一つない禿げた小男の姿が眼に浮かぶ。その柔和な笑みと、花摘むような手つきよ。黒帯を締め、源氏物語を、皇室の近親相姦スキャンダルの暴露本だと唾棄する彼は、明かなテストステロン・ジャンキーだ。なにより彼は、兄2人を幼くして亡くした、一人っ子育ちである。20世紀の戦争が女の顔をしていないなら、彼の起こした21世紀の戦争は兄弟の顔も剥ぐだろう、柔和な笑顔と花摘むような手つきで。
その朝、戦車内で目覚めた北コーカサス出身の青年は、たった一杯の一生を、コーヒー・スプーンで測りつくした。
その夜、クレムリンのグルジア出身の料理長は、胡桃のソースをかけた鶏のグリルの出来に満足し、厨房で独り、ショットグラスで甘いチョコレートリキュールを呑んだ。
その朝、青年は空っぽの胃袋を晒して死んだ。新鮮なキャベツが届いたことも知らずに。けれど彼が操縦するツギハギだらけのキャタピラは、その夜も次の夜も、飢餓ゆえにあてどなく、物陰ひとつない盲目の麦畑をさまようのだ。
季節は廻り、駐屯地を囲む水田の緑から、初夏の風が吹くとき、弟は蛇の健康を祝す。アパートの共同便所の窓から、恐怖の前兆に混乱し、顔色を変えるアジサイの色を眺めては、守る者のいない兄は、せめて弟の健康を祈る。
ロシアとウクライナの兄弟もいずれ、麦畑の穂波に、互いの笑顔を見るだろうか?
広大な麦畑を縦横無尽に蹂躙してゆく、無限軌道の亡霊たちよ、せめて蛇の健康を祝す風となれ。
戦争とは政治の失敗、
殺人とは風俗の失敗、
自殺とは世代の失敗。
ペテルブルグの原理主義者から「皇帝」と呼ばれるは彼は民衆へ言う、諸君の意思を完璧にせよ、と。更に巧妙に念を押す、収穫を念頭におくな、ただ、正しく種まくことを考えよ、愛するコロボークが狡いキツネに喰われる前に、と。今やロシア正教会主席エクソシストである彼は、ただ民衆が欲しい悪魔、欲しい荒地、欲しい飢餓を与え、民衆の魂を塩漬けにする。ようやく奴隷の喜びを与えてくれた皇帝へ、21世紀の農奴たちは、万雷の拍手で応えるのだ。
あの染み一つない一人っ子の老人を見よ。
老いてますます盛んとは狂気の沙汰だ。
老いた狂人は若い狂人よりも更に狂っている。
この世には、われわれの感受性の及ばない、
極度の幸不幸があり、極度の狂人がいるものだ。
唾棄せよ、市民よ、
唾棄せよ、労働者よ、
唾棄せよ、市民の樽から零れ落ちた兄弟よ、奴を左右から討て。
殺しあわされるくらいなら心中しよう、あの老人を影武者ごと殺し、一緒になって拾おうではないか、バラバラになった子どもたちの手足や頭を。狂った笑みを浮かべ、カボチャやキャベツを収穫するように。
いま我らが必要とするのは、我らの「哲学と詩」のメロディーだ。詩とは失敗から生まれる、哲学の口笛なのだから。
ロシアとウクライナの兄弟よ、そしてアラブの兄弟よ、ひび割れた唇にも歌を忘れるな。ゴミみたいにかき集められた塹壕や地下室や拷問部屋でこそ、哲学の口笛を鳴らそう。詩人に著作権がないように、テロリストに発言権はないのだから、言葉を封殺された兄弟よ、ひび割れた唇にも歌を忘れてくれるな。
――朗読後、末井さんを誘って呑んだ。
場所は、例の中華チェーン店である。
末井さんと呑むのは数年ぶりだ。
さすがに紹興酒は頼まなかったが、生ビールをまた水のように喉へ流し込んだ。
歴代の彼女は、
「なぜ、あなたはそうお酒を水のように呑むのよ」
と、呆れたもんだ。
1時間以上経ってから、他の仲間が合流した。
30分くらいして末井さんが先に帰った。
そのとき、先日のこともあるので、一緒に帰ろうと立ち上がった。
が、また座った。
帰っておけば良かったのだ。
末井さんが帰り、緊張がとけた。
紹興酒がまわってきた。
あとはもう最悪の悪酔いとなり、その場にいた全員を罵倒しつづけた。
で、先に帰ってきた。
明け方、目が覚め、たちまち気分が限りなく混濁に近いブルーとなった。
こんな目覚めを数限りなく経験してきた。
Xをチェックしてみると、3日連続で音楽番組1位を取ってきたNMIXXが、ソリュンがMCをしている番組で、今日は僅差で2位となっていた。
眠るために、数種の抗鬱剤とオピオイド鎮痛薬を、手のひら一杯、牛乳で流し込んだ。
1月28日(日)鬼子母神は晴れ。
昼前、友人にメールする。
「昨夜は悪酔いして言い過ぎたすまん」
そのあとに、やはり体調が悪いので、今日最終日は顔を出さず、明日の午後に作品を搬出する旨を付け足した。
[朝食兼昼食]
●コンビニの菓子パン(アップルパイみたいなやつ)
●コーヒー
[NMIXXニュース]
PM6時、今日の音楽番組でNMIXXの「DASH」がまた1位を取ったのを知る。
今週、これで4冠である。
(過去に1度だけ1位を取ったことがあるだけだった)
KPOP界ではシングル5弾目は売れないというジンクスがあると、以前ここで書いたが、同時に「雑誌なら5号目が一番大事」とも書いた。
この4冠はKPOPオタク的にも快挙とのこと。
なにせ、まだ音楽チャートMelonでは100位内に入っていないのだから。
(この売れ方は男性アイドルと同じだそうな)
しかし、この結果でチャートを「逆走」するかもしれない。
それにしても、今回、NMIXXのファンダム(NSWER)の強さに驚かされた。
音楽番組ごとに、ファンの事前投票が設けられており、それもランキングに反映されるのだが、毎回の投票が100点満点(どういう計算になるのかは知らないが)をキープしつづけたのだから。
今週の4冠は、はっきりとファンダムの団結と熱狂の成果であると、KPOPオタクたちも驚いていた。
しかしまあ、KPOP史上最悪のデビュー曲と嗤われてから1年と11カ月、メンバーもスタッフもファンも、やきもきしながらも、NMIXXとMIXXPOPの魅力を信じて楽しんできた。
まだまだミクストピアへの途中ではあるが、こうやって、確実に一歩一歩実績を積んでゆく姿を見られるのはファン冥利に尽きる。
[夕食]
●インスタント味噌ラーメン(ベーコン、生ワカメ、卵、ネギ)
おやすみなさい。
今日も買い物に行く気力がなかった。
気分はまだまだ限りなく混濁に近いブルーだ。
が、あの頃のように、そばに抱きつける女はいないのだ。
明日はまた阿佐ヶ谷へ行かねばならない。
せめて、あの中華チェーン店で酢豚定食でも食べてこようか?
NMIXXがデビューして1年と11カ月。
つまりウクライナ戦争が始まって1年と11カ月。
そして第2詩集『BALLS』用の詩を書き始めて1年と11カ月が経った。
どうしたって明日は来る。
やはり八宝菜定食にしようか?
友人からの返信はない。
よい夢を。
[処女詩集販売中]
『火舌(かぜつ)詩集 Ⅰ ハードボイルド・ムーン』
著者:曽根 賢(PISSKEN)
ドローイング:佐藤ブライアン勝彦
判型A5/平綴じ/96ページ
部数:300部
税込み価格1320円
さて、販売方法だが、以下の2つの書店で、通信販売、また店頭発売します。
2書店のサイトを検索してもらって注文してください。
ネット注文できない私のようなひとは、誰かに頼んで注文しましょう。
※詩集には私のサインが入っています。
「タコシェ」
http://tacoche.comには、遊離型テストステロン値が11.あれば要注意(ボーダーライン)、8.5pg/ml以下の場合は明らかに(シングル小説もセカンド&サードも注文できます)
「模索舎」
「阿佐ヶ谷ネオ書房」
※書店販売のみ
尚、くどいようだが、この処女詩集は、あくまで『火舌詩集』のⅠであって、今後あと2冊を発行します。
3冊合わせて『火舌詩集』となるので、ぜひコンプリートしましょう。
※「火舌」とは中国語で、火事の際、窓から吹き出し、壁を舐める炎をいう。
[サード&セカンド・シングル通販中]
●A面「PISS(INTO)MY HEROES」
●B面「七曲荘二〇三号室」
●セカンドシングルのジャケット。被写体は細菌学者の志賀潔。撮影は土門拳。
●アドレス:budroll.shelvis.sy3@gmail.com
――以上へ以下のことをメールしてから、お金を振り込んでください。
◎郵便番号と住所
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◎サード、セカンドのどれを希望するか
(ファーストは売り切れ)
●1,600円(発送代込み)
●振込先――ゆうちょ銀行
◎BUDROLL(バドロール)
◎普通口座:店番908
◎口座番号:5133817
『キャンプ日和』(河出書房新社)
キャンプ小説&エッセイのアンソロジー。トリに曽根 賢の短編「二つの心臓を持つ川の縁で」が掲載されています。
『点線面』5号(ポンプラボ)
曽根 賢の特集と、論評風の新作エッセイが載ってます。詳しいことはネットで検索してください。