横浜市内で今夏、ホームレス(路上生活者)を標的とした少年達の暴力行為が相次いでいた事が22日、判かった。

市教育委員会は 新型コロナウイルス感染拡大に依る不安や ストレスが1因とみて、全市立学校に指導の徹底を要請。

人権教育の推進を はじめ家庭や 地域との連携強化を求めたが、懸念はコロナ禍に、とどまらない。

発生場所は<生徒指導の原点>とされてきた関内周辺。

約40年前に得た教訓の風化を浮き彫りにした形で、関係者は危機感を強めている。 

 ■コロナ禍が影響?  市教委人権教育・児童生徒課によると、ホームレスへの迷惑行為が起きたのは、

8月下旬から9月上旬。関内駅地下街のマリナード地下通路で寝泊まりしている男性に対し、市内の中学生を含む少年グループが、イタズラや 暴行を繰り返したという。  

別の生徒から 中学校に相談が寄せられ、問題が発覚。

市教委は 『コロナ禍で弱い立場の人を執拗(しつよう)に襲う悪質なイジメがエスカレートする傾向がみられる』として、

10月22日付で全市立学校の校長に指導強化の徹底を求めた。

 ■37年前を教訓に  ただ、関係者はコロナ禍の影響とは異なる視点でも事態を重く見ている。

この地下通路を含む関内周辺は、1983年に 中学生らの少年グループがホームレス16人を殺傷した連続襲撃事件の発生場所だからだ。  

同課の三嶽昌幸課長は『あのような不幸な出来事は 二度と繰り返さないというのが、横浜の生徒指導の原点だ』と危機感をあらわにする。

事件を教訓に、市教委は独自の生徒指導体制を構築。

新任や 生活指導担当の教諭らが研修で事件を学ぶ他、2007年開発の《子どもの社会的スキル横浜プログラム》に

ホームレスについて考える項目を盛り込み、授業で人権尊重の精神を伝えてきた。

 

 ■知る教諭現場去り  しかし 37年が過ぎた今、事件を知っているのは当時新任教諭だった校長クラスが最後の世代。

多くは定年退職などで教育現場を去っており、記憶の風化を余儀なくされている。  

三嶽課長は『昼間は姿を見無いホームレスと 関係が出来てい無かった。思いがけない場所で起きた』と明かす。

市教委の指導主事らは、少年たちに依る襲撃が頻発する鶴見川周辺を巡回して ホームレスと関係を築いてきたが、

関内周辺の状況は、ほとんど把握してい無かったという。

 

 ■「まさかの思い」  横浜・寿地区で生活困窮者や 日雇い労働者らの年越しを支援する「寿越冬闘争実行委員会」は

10月26日、再発防止に向けて生徒や PTAらを対象にした人権研修の実施を市などに求めた。

高沢幸男事務局長は『関内周辺は 過去の事件を受けて 行政が厳重に対応してきたと思っていただけに、まさかという思い。

相当深刻に捉えている』と話す。

  加害生徒が通う中学教諭らは、支援団体とともに現場周辺の夜間パトロールを始めた。

ホームレスの援護を担当する市健康福祉局は、年末に向け市教委と支援団体との協議の場を設ける予定だ。