私たちが資産運用をするとき、しばしば他の人の意見を参考にします。
その時に参考とする意見は評論家やエコノミスト、あるいはどこの誰かもわからない書き込みやtwitterのつぶやきかも知れません。
それらの意見は単なる思いつきもあれば、様々なデータを精査した結果導き出された答えかも知れません。あるいは過去に何度も予想を的中させている人かもしれません。
現在は過去の延長線上に存在しますが、過去にいくら予想を当てたからと言っても、未来も当てることができるかはわかりません。
そんなことをわかっている人が大半なはずですが、資産運用の場面になると「預言者」の意見を尊重することが実に多いのです。
●誰でも預言者になれる
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現代での預言者とは、評論家やエコノミストという肩書を持つ人たち、窓口で金融商品を販売する販売員などが挙げられます。
彼らは少し先、あるいは来年の見通しを実際に見てきたかのように話し、私たちが株や金融商品を買う後押しを、あるいは株式を保有し続ける勇気を与えてくれます。
それとともに、自分が語る見通しを確約するものではなく、「あくまで個人の予想です」と巧妙に反論できる余地を残すことを決して忘れません。
彼らは自分の予想が当たるとは思っていません。
しかし、預言し続ければいずれは未来をある程度正確に言い当てられることが何度か起こることを知っています。
仮に「2年後の日本の日経平均株価は4万円台に乗る!」という予言を毎年言い続ければ、そのうち当たる時が来るでしょう。預言者になるためには、多くの人が笑い飛ばしそうな尖った預言を当てることです。これに成功すると、一斉に注目を集めることができます。
預言者はこのようにして誕生します。彼らが心配することは、過去に外してきた膨大な予言の数々を掘り返されないことだけです。
しかし、このような予言には何の意味もありません。
「そのうち雨が降る」と言っているのと大差ないからです。
私たちが聞きたいのは「そのうち雨が降る」という当たり前の話ではなく、何月何日の何時ごろにどの程度の雨が降るのかを知りたいのです。
経済的に言えば、何年の何月何日に日経平均が4万円台に乗るのかを知りたいのです。
私たちは5分先のことさえ正確に予想することはできません。
仮に5分先を正確に予想することができれば、それだけで大金持ちになれるでしょう。
現実には、評論家やエコノミストが一度予言を的中させたからと言って、その後連続して的中させることはほとんどの場合でできません。化けの皮がはがれるのは時間の問題です。
●相場が読めないのは、相場が人の感情自体を反映しているから
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ところで、コンピュータやAIが凄まじい勢いで進化を遂げている現代においてなお、相場を読むことはできないのはなぜでしょうか。
現代では未来をある程度予想できる分野が増えています。
自然現象が相手なら、ある程度の予想をすることができます。
そこに一定の合理性あるからです。
例えば天気予報と言えば大体外れるものというのが相場でした。
1か月で数回程度しか当たらないこともよくありました。
長年住んでいる人の経験や勘、あるいは遠くの山の見え方から推測するほうが転機を当てていたものです。
しかし、ここ数年は非常に高い精度で天気を予測することができるようになっています。
これはコンピュータやAIの発達はもちろんのこと、自然現象に合理性があるために高い確率で予測が当たるのです。
これと同じ感覚を株式投資などのお金の世界に対して適用させようとしても、決してうまくいきません。
例えば株式市場は人間の感情を巨大なエンジンとして動いています。
株式市場の現在の相場は、その時点での人々の感情の動きの結果として成立しています。
感情には喜び、悲しみ、苦痛、繁栄、恐怖、安心、不満、心地よさなど数えきれないほど複雑にあります。それらを動かすものは経済指標だったり、今日の仕事の出来栄えや家族関係、あるいは単に長期休暇の真っただ中だからかもしれません。
私たちは自分の感情でさえ満足にコントロールできないことがしばしば起こります。
一時的な感情の暴走で大切なものを失った経験をしたことは多くん人が経験していることです。
自分一人の感情さえコントロールできないことがあるのに、数えきれない人間たちの感情の総和で成立している株式市場の相場を予測することなどできるでしょうか。
それは絶対に不可能です。
多数の人間の感情がどうなるのかを読むことがAIにだってできることではありません。
それは預言者にも同じことが言えます。
●未来がわかるという人を信じるな
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私たちは将来のことを考え、心配しています。
その心配がゆえに予言に頼ってしまうのかもしれません。
しかし、預言者はその発言に責任を取ることはありません。
あなたが下した決断は、それが利益を生んでも損失を出しても、あなたが受け止めなければいけません。
投資家としてできることは「実際に起きつつあること、目の当たりしていることに対してすぐに反応する」、ただこれだけです。
あなたに予言する力があるのなら、他の予言者の存在など必要ありません。
あなたに予言する力がないのなら、頬の予言者も信用できないはずです。
預言者など必要な存在ではありません。
わずかな未来も予測できない以上、あらゆる予言は排除しなければいけません。
未来がわかるという人をたとえ僅かでも信じてはいけないのです。
