前回、宝くじのデメリットを書きました。

その根拠となるのが投入した金額に対するリターンが低すぎることです。

 

1000円分の宝くじを購入すると平均して500円以下しか戻ってこないことはどう考えても損をする勝負です。確率的に考えると買えば買うほど損をするのが宝くじです。貧乏人の税金というのは決して大げさな話ではありません。

 

しかし、そのデメリットを理解したうえでなお、宝くじを購入する人たちが一定数存在します。それは宝くじが持つ特有のメリットに期待しているのです。

 

今回はt宝くじが持つ2つのメリットについて考えてみたいと思います。

 

 

●大金が人生を大きく変えることを知っている

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宝くじが人の興味を引いて止まない理由の第一位がこれでしょう。社会に出るとすぐに、私たちは生きていくためにお金が必要で、お金は簡単には手に入らないことを知ることになります。

 

そしてお金があれば大抵の問題を解決することができることを私たちは知っていきます。お金が全てとは言いませんが、お金で解消できる不自由さや不便は沢山あります。衣食住という生活の基本要素でさえ、お金があれば全て解決できます。

 

旅行する、行楽地に遊びに行く、映画に行くなど、お金を使うことは楽しいですが、お金を手にするためには苦しい事を我慢しなければならない場面が多くなります。

 

宝くじはその問題を解決することができる力を持っています。何の前触れもなく突然多額のお金をあなたにもたらしてくれる可能性があり、これが実現するとあなたの人生が劇的に変わります。

 

高額当選した場合の最大の変化は、お金を手にするために働く必要がなくなります。毎日毎日会社に通い、朝早くから夜遅くまで仕事をし続ける必要がなくなります。人生のダイブ部を占める労働という時間をそっくりそのまま、他の何かをする時間に置き換えることができるのです。

 

これは自分のやりたいことをやることが可能なるのです。その時間を使って社会問題を解決するために会社を設立して働くことになるかもしれません。今までできなかったアクティビティ巡りをして遊び惚けて過ごすことになるかもしれません。

 

人生の中で生きるために働く時間が必要なくなることは、一般人とはかなり異なる人生経験を可能としてくれるのです。

 

もちろん良い事ばかりとかは限りません。宝くじで高額当選すると知らない親戚や親しくない親友が雨後の筍のように湧いて出てきますし、様々な人がありとあらゆるお金の使い方(それも大抵は間違った使い方)を教えてくれるようになります。

 

そのようなデメリットはある程度コントロールできるので問題ないでしょう。

 

これらの状態はお金があれば実現することができます。宝くじで稼ぐ必要はありません。起業して大金持ちを目指して実現することも可能です。世の中には失敗した人も数えきれないほどありますが、成功者もそれなりにいます。起業して金持ちを目指す道のりは、宝くじよりはずっと高い確率を持った選択肢です。

 

お金が欲しいならどうしてこのような道を選択しないのでしょうか。

 

 

●努力なしに金持ちになれるチャンスを得る

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お金を手にするためには、常人では考えられないような努力、そのうえで幸運に恵まれることが必要です。

 

私たちは努力が成果に繋がりやすいとわかっている状態ですら、なかなか努力を積み上げることができません。

 

学生時代の勉強などはその典型です。個人の能力には向き不向きはありますが、勉強時間を毎日1時間追加すれば、よりランクの高い進学が可能になるでしょう。

 

野球部に所属する人なら、毎日500本の素振りをする、毎日5キロのランニングをすることで、何もしないよりは圧倒的にレギュラー獲得に前進するでしょう。

 

週に1冊、年間50冊の読書を積み上げることができれば、非常に知識量が多く、思考の深い能力を持つことができるでしょう。

 

お金を手にする、財を成すことはこの程度の努力で成し遂げられることはありません。

 

週に40時間働く程度では世界を大きく発展させる仕事は難しく、それ故に得られる対価もそれなりになってしまうのです。ならばもっと働く必要があるのですが、それは強制されるものではなく、自発的な熱い思いを背景とする必要があります。

 

全ての人がそのような思いを持つことができるわけではありません。仮に持っていたとしても、その努力が成果として手にできるかはわかりません。運命の女神から見える場所まで行くことが努力なら、運命の女神に微笑まれるには努力ではない部分、すなわち幸運が必要です。

 

宝くじはその面倒くさい工程を全てすっ飛ばし、全てを運だけに集中して金持ちになる可能性を手にすることができます。運命の女神から見える場所までたどり着くためにすることは「宝くじを買う」ことだけなので、誰でも気軽にすることができます。

 

 

●あなたの心の奥底に眠る望みを引き出す

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宝くじ自体が持つもう一つの効果として、途方もない夢を考える、思い描くきっかけとなる事です。

 

当選番号が確定するまでは宝くじを買ったすべての人に高額当選の可能性が残されています。その可能性があるうちなら、あんなことしたい、こんなことしたいと考えて、口に出すことができます。

 

あなたの口から思いもしなかった言葉が出る、考えが浮かぶことがあるかもしれません。その中には今のあなたが成し遂げたいことが出てくるかもしれません。その思いは宝くじによって実現するかもしれません。

 

あるいは宝くじに当たるのを待つのではなく自力で何とかしようと行動して実現するのかもしれません。

 

大切なことは、宝くじは日常生活では考える時間を取らないであろう将来の夢や成し遂げたいことを考える機会を与えてくれることです。その時考えたことはいつしか忘却に彼方に消えるかもしれませんし、その思いを胸に秘めて新しいことを始めるきっかけとん羅うかもしれません。

 

 

●宝くじは今後も愛される

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宝くじが持つ2つのメリットである「わずかな努力で大金を手に入れる可能性がある」「あなたの夢や希望を今一度確かめられる」について書いてきました。

 

宝くじは努力という道のりをなくし、幸運の女神の選ばれることに全てを賭ける方法です。選ばれる確率が1000万分の1など途方もなく低い確率となってしまいますが、その価である努力を必要としない点が強烈な魅力となっているのです。

 

私たちは努力だけでは何かを成し遂げることが難しいことを何度も経験しています。そして無駄になるかもしれない努力ならしたくないとも思っています。宝くじはそのような人の心を刺激する力があります。

 

そして、あなた自身が望んでいることを引き出してくれるきっかけにもなります。叶えたい望みがあることは、人生をより豊かにしてくれます。

 

努力は「宝くじを買う」という部分だけで、誰でもできることです。それが望ましい結果、高額当選を実現する、最低でも買った金額以上のお金が戻ってくる実現性がどれだけ低いとしても、努力の工程がほとんど存在しない宝くじは、今後も多くの人たちに愛されていくのだと思います。

「失敗は成功の母」「心配は成功の素」という言葉があります。失敗してもそれを反省して欠点を改めていけそのうち成功に導けるという深い意味を持った言葉です。

 

これはごく当たり前の常識ですが、うまく使いこなしている人は少ないのです。

それは私たちは失敗した時、ほとんどの場合でマイナス評価を受けるからです。

 

 

●失敗は恥ずべきことで、非難される

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失敗はマイナス評価の源であり、新たな創造・成功の種となるのですが、そのようなプラスの評価をされることはほとんどありません。

 

義務教育、高校、大学受験、大学、そして社会に出て働きますが、どの場面を切り取っても、失敗はマイナスで評価され、それ以上の扱いを受けることはほとんどありません。

外国でもそうですが、日本の社会では失敗すること自体が悪とされてしまうのです。

 

失敗して非難されることを繰り返されると、失敗自体に強いマイナスイメージを持つようになります。回り道、不必要、人から忌み嫌われる、隠すべきもの、・・・。そのように教育されてきたのです。

 

人の心は弱いので、強いマイナスイメージを持つ失敗に直面することを避けたがるようになります。大勢の人がマイナス評価をする中で自分だけがプラスの評価をし続けることは相当困難です。

 

だからこそ、私たちは「成功できるやり方」を知りたがります。こうすればうまくいく、こうすれば失敗を避けられるなど、他人の成功事例を学ぶようになります。

 

 

●失敗を避けることが優れたことと評価される

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成功できるやり方を真似ることは非常に優れた側面を持っています。受験勉強やルーチンワークなど、決められた設問や課題に対して正しい回答を素早く出すときに非常に強い効果を発揮します。これを使いこなせる力も必要となります。

 

学校の勉強や大学受験では成功するやり方を真似ることで突破することができます。予備校や学習塾、赤本などの活用はよく使われる方法で、成功できるやり方が非常に大きな威力を発揮する場面と言えます。

 

しかし、それだけでは対応できない場面も出てきます。失敗しないやり方、成功しやすいやり方を学ぶだけでは、他の誰かの模倣という領域から突破することがかなり難しいのです。その弊害でよく見かけることが、少しでも条件が変わると上手く適用することができなくなってしまうことです。

 

失敗しない方法を学ぶと、表面的な理解に留まり、そのやり方の背景にある理由などを考えない、触れないことが多いのです。

 

その結果、自分で課題を設定する、想像力が育たないという欠点を抱えることになります。日本人の欠点として新しいものを生み出す力が弱いと言われることは良く知られており、多くの人が認めざるを得ないでしょう。

 

失敗しないやり方、成功するやり方も必要なのですが、それだけに偏ってしまうことも問題を抱えてしまうことになるのです。

 

 

●失敗しない人は成功も手にすることができない

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失敗を恐れる人は何もできない状態になる事があります。新しいことを始めなければ失敗することがないからです。自分がこれまで知っている環境の範囲だけで過ごすことで相当数の失敗を避けることができます。

 

その代償として、成功を手にすることが相当少なくなります。あるいは自分が成長する機会を失っているとも言えます。

 

失敗をしないことは一時的には心地よい状態を作ることができますが、人生という長い目で見ると、自分の世界が広がらないという相当な損失を抱えていることに気づく必要があります。

 

とはいえ、失敗すればいいというものではありません。失敗を恐れすぎる人と真逆に、失敗を恐れなさすぎる人は周りの人間に迷惑をかけることが極端に多くなります。また、失敗に対する反省をしないので同じことを繰り返す傾向にあります。

 

特に致命的な失敗、例えば経済的に破滅する、亡くなってしまうなどは避けなければいけません。他人は他山の石とすることはできるかもしれませんが、本人にとっては無意味となってしまうからです。

 

 

●失敗は新しい事の挑戦するときに起きるもの

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失敗とは以下の状態になる事を言います。

・自分の思い通りにならない経験をすること

・自分が実際に痛い目に遭うこと

・(自分が体験しなくても)他人が痛い目に遭った体験を知ること

 

これらを経験する、あるいは見聞きすると、「こうすると上手くいかない」「こうすると失敗する」「こうすると状況が悪くなる」ということが何となくわかるようになります。

 

小さな失敗体験をしていきましょう。小さな失敗をして、次は同じようなことを繰り返さないようにするためにどうすればよいのかを考えることが、新たな成長に導く力となります。

 

新しいことにチャレンジする時、新しいものを創り出すときは、必ず失敗すると考えてよいです。最初に失敗ありきです。言い換えれば、失敗するということは、新しいことに挑戦しているという証でもあります。

 

あなたが最近失敗していないのなら、もしかすると成長が止まっているのかもしれません。

資産運用において、運用する資産に対して過剰な愛着を持つ必要ありません。

下手に愛着を持つことはかえってマイナスの効果をもたらします。

 

 

●過度の愛着は資産運用の判断を狂わせる

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資産運用をしていると必ず直面することの1つが、保有している資産の価値が下がっていく下落相場です。これに直面した時、あなたは資産を売約して逃げだすのか、それとも一時的なものと判断してその場に残るのかを決めなければいけません。

 

このとき合理的な判断を下して最善の方法を取ることができればよいのですが、その資産に対する愛着が強すぎると判断を狂わせてしまうことはあります。本来ならば売却して逃げ出すことが適切な場面なのに、その場に残る選択をしてしまうことがあるのです。

 

このように、判断が捻じ曲げられてしまうと、結果はかなりの部分を運に頼ることになります。

 

これは必ずしも資産運用をしている人だけに当てはまるわけではありません。

持ち家を持つ人にも同様のことが当てはまります。

 

あなたの住んでいる地域がとある田舎町であり、今後も衰退することはあっても発展する可能背が非常に低いと感じられるなら、その地域にこだわる必要はありません。

 

幼いころから住んでいる、長年住んでいるなら思い出や人間関係などお金では決して測ることができない掛け替えの無いものもたくさんあるでしょう。

 

しかし、思い出や人間関係と、あなたの資産は別にして考えなければいけません。不動産のデメリットの1つである「売りたいときにすぐに売れない」というマイナス効果は状況が悪くなればなるほど強く影響してしまいます。

 

愛着を感じてよいのはあなたの人間関係だけです。定期的に連絡を取り合ったり、年に1度どこかに遊びにいくことには大きな価値があります。そのような縁には愛着を持ち、良い関係が長く続くように努力するは大変すばらしいものです。

 

 

●継続か切り替えか、その判断は難しい

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資産運用の目的は資産を増やすことにあります。極論を言えば、資産が増えればどんなものでもいいはずです。A社の株や、某地域の不動産で資産を増やさなければいけないことはありません。

 

A社の株にこだわるように、特定の資産から利益を得ることに注力してしまうと、他の有力な選択肢を見落としたり、適正な評価をすることができずに誤った判断をしてしまうことは少なくありません。

 

より有望な資産があり、乗り換えることに合理性が見いだせるならば、あなたは資産の乗り換え実行を検討する価値があります。

 

最後まで諦めないことは格好いいと感じるかもしれませんが、資産運用の世界においては諦めない姿は往々にして沈みゆく船に乗っている乗客の姿に似ています。仮にその船が沈まなかったとしても、何の利益ももたらさずに数年間を無為にしてしまうことも十分にあり得ます。

 

最初の選択が誤りと認めることは辛いかもしれませんが、資産運用の世界ではよくあることです。間違いを認めて対処し、次に進むことができるなら、あなたの資産運用はより良いものとなっていくでしょう。

 

 

●継続と切り替えの両方を使いこなせ

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私たちは子供のころから1つのことを続けること、一度始めたことを最後まであきらめずに継続することが大きく評価されてきました。社会で働き始めると忠誠心という形で1つの会社に奉仕し続けることが素晴らしいと評価されます。

 

それは間違ってはいません。

1つのことをやり続けることは、あなたが予想もしなかった素晴らしい成果を収め、あなたが思い描く途方もなく大きな夢の実現に必要不可欠なことです。

 

しかし、資産運用に当てはめることは正解になるとは限りません。

執着することと同じくらいに、機動力が必要となるのが資産運用の世界です。

 

資産運用の世界には資産運用専用のルールがあります。

そこにごく普通の世間で通用しているやり方を持ち込んでも上手くいくとは限りません。

 

日本のマナーや常識をそのままアメリカに持ち込むと、どこかでトラブルになるでしょう。これと同じように、あなたの日常生活の常識を資産運用に持ち込むと、これもやはりトラブルとなり、その結果としてあなたは損をする、あるいはより多くの利益を得る機会を失うことになるかもしれません。

 

継続か切り替えか、これはどちらが正しいという二元論ではなく、両方とも正しいのです。片方を軽んじる投資家が成功することは難しいのです。

資産運用は正しい情報を持ち、経験を重ねれば重ねるほどより効率的に資産を増やせるように考えてしまいがちですが、実際にはそんなことはありません。

 

人生と同じく、資産運用も大部分は運で支配されています。もっと言えば、運こそが資産運用の成功・失敗におけるもっとも強力な要素となるのです。

 

これを言い換えると、資産運用の世界は混沌に包まれているということです。そこには不変的な法則で語られることは何もありません。仮に世界が合理性を持って見え始めたら、あなたに危険が迫っていると考えてよいのです。

 

しかし、私たちは意識的に、あるいは無意識的に資産運用におけるある種の秩序を求めてしまいます。その背景には、人間が秩序を求める心があるからです。

 

 

●お金の世界にも様々な秩序らしきものがある

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秩序を言い換えると法則、公式、少し変わったところではジンクスなどと言うことができます。資産運用は常に混沌が支配していて、秩序などどこにもないのですが、人は無意識のうちに秩序を追い求めてしまうのです。

 

例えば、アメリカ大統領選とNYダウ平均の動きの関連性について語られることはよくあります。少し考えれば両者に合理的な関係性を見いだすことはかなり難しいことだとわかりますが、ここに納得できる関係性が説明されると信じてしまう人が一定数存在します。

 

日本は地震大国で、地震の周期から次の地震がどこで起きるのかがよく言われます。防災の意識を高めるという意味では日常的な啓発をすることに意味があります。しかし、地震を予測するという意味ではあまり役に立ちません。

 

地震は起こる可能性が高いと言われている場所で起こることもあれば、まったく想定していなかった場所で起きることもあります。いずれ地震が起こることはわかっていますが、いつ起こるのかは誰にも分かりません。

 

人が秩序を求めてしまうことは、ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)で考えるとわかりやすいでしょう。これは自身の主観などから確率論的に誤った判断をしてしまうことをいいます。

 

ルーレットで赤が10回連続で出た時、次に赤と黒の出る確率はどうなりますか?

0のポケットを無視して考えると、答えは赤が50%、黒が50%となります。

これは数学的に常識のことで、考え方を知っていれば小学生でも辿り着ける答えです。

 

ところが、あなたの目の前で赤が10回出るところを見ていたとしたらどうでしょうか。

それを見ていようが見ていまいが、確率的には次も赤が50%、黒が50%の確率で出るのですが、実際に目の当たりにすると「次は黒が出るんじゃないか?」と何となく考えてしまうものです。

 

株式投資ではアノマリーがこれに当てはまります。アノマリーとは「根拠はないけどよく当たる、相場における経験則」のことです。GW後には株価が下がる、12月には株価が下がるなど、経験則で語られることが山ほどあります。

 

これらは先ほどの赤が10回出たルーレットの話と同じで、わかることは「過去はこうだった」だけです。未来がどうなるのか、つまり次のGW後の株価がどうなるかは誰にもわかりません。

 

 

●資産運用の世界は混沌で満ちている

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人間は少しでも未来を見通したいと思っています。

 

占いは気休めに過ぎないことをほとんどの人が理解していますが、それでもなお占い結果を求めて行列ができるのは、未来を知りたいと思うからです。

 

秩序や法則を求めるのは、そこに未来を見通せる何かがあると感じられるからです。算数の公式のように、決まりきった答えがあるならば、それを突破口に自分の未来を覗き見ようとします。

 

仮に合理的に秩序を作ることができないのなら、幻想や妄想を使ってでも秩序を得ようとします。それほどまでに人が秩序を求める力は強いです。

 

しかし、残念ながら資産運用の世界では秩序はありません。過去がこうだったというのがわかったからと言って、未来がわかるわけではありません。

 

秩序が存在しないところに法則や公式は存在しないので、これらは気休め程度の効果しかありません。

 

結局のところ、私たちが行う資産運用の世界は秩序ではなく混沌が支配しています。そこは人知では及びもつかない力があります。それは大部分が運で支配されていることになります。どんなに研究を重ねて努力しても、運が持つ力を超えることはできません。

 

そして運は自分自身のものでさえコントロールすることが難しいものです。ましてや資産運用における運をコントロールすることなど絶対にできません。

 

秩序を求める心に惑わされて手遅れになる前に気づかなければいけません。

私たちができることは、予想もしなかった間違いが起こってもすぐに対処できるように準備しておくことだけです。

資産運用をするとき、流行を追ってはいけないと言われます。

 

何かを買う最高の時は、誰もそれを望まない時です。その時は非常に価値のあるものが安値で叩き売りされているからです。バーゲンセールなのですから価値ある商品を安く大量に買い漁るチャンスなのです。

 

逆に皆が欲しがっている時は手放すチャンスとなります。皆が欲しがっているから高値で売ることができるからです。

 

これらの方法は一般的に逆張りと言われ、その他大勢の動きに逆らう動きをしています。

 

言葉にすると非常に簡単なことを言っているように感じると思いますが、実際にやってみると決して簡単ではありません。ごく普通の人は大多数の意見に逆らうことが難しいのです。

 

 

●大衆の意見は真実さえ捻じ曲げる

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周りの人の多くが同じ意見を持っていると同調圧力がかかります。

日本人はこの圧力に弱いとされていますが、人間であれば誰しもこの圧力に弱いのです。

 

例えばペンAとペンBがあるとします。

Yさんはペンを見て、明らかにAのほうが短いと思いましたが、周りの人が皆AとBは同じ長さだと言っています。

 

この時、Yさんは高い確率で周りの意見に合わせてしまうことが研究結果でわかっています。その他大勢の意見が間違いであったとしても、彼らの意見に逆らってまで正しさを主張することは難しいのです。

 

資産運用に当てはめて考えると、資産運用を始めて間もない人は特に大多数の意見に飲まれがちです。資産運用では自分の意見を世間に主張する必要はないのですが、周りの人の動きという見えない圧力に屈してしまうことが多いのです。

 

この心理を利用すると、セールスマンのセールストークは「この商品が売れている」というのが正解となります。「売れている商品」というだけで、「皆が選んでいる商品なら買っても良いんじゃないか?」といいう心理に陥りがちです。自分が知らない商品なら、特にその影響度は想像もできない強い影響力を持っているのです。

 

 

●大多数が信じる力を侮るな

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世の中は多くの人が言っていることと、実際正しいことは必ずしも一致しません。

新しい真実は常に少数の人が見つけてきたのです。

 

だからと言って、常に大勢と反対の動きが正しいことを意味しているわけではありません。周りと違う動きをすることを「逆張り」と言いますが、これは決して魔法の杖ではないのです。

 

先ほどの例では、セールスマンは売れている商品を紹介しているだけですから、買い手が儲けるかは別の話ということです。同調圧力を知っていようが知らまいが、あなたは「大勢の人が買っている」という理由だけで安易に買わないことが賢明です。

 

十分に検討を重ねた結果、良い商品なら買い、買うだけの価値がない商品と判断したなら買わなければいいのです。

 

逆張りにはメリットもデメリットがります。

どんな手法を取るにしても、重要なことは一人で十分に考えることです。

 

しかし、大勢に従って動くことは、大勢が動いた後をついていくことになるので、高値で買って安値で売る可能性が高くなることも事実です。

 

最善の策は、大多数の意見にはあなたの意見を簡単に変えさせるほどの強い力が存在することを常に意識しておくことです。周りに合わせているだけと判断したなら、一度立ち止まって良く考えることです。早いうちに修正できたなら、大きな問題にはならないでしょう。

資産運用をする上では楽観することは重要です。資産運用とは確定していない将来にお金を賭けることに他なりません。確実に約束された未来ではない以上、そこではお金が増えるかもしれないという期待をもってお金を投じることになります。

 

さて、楽観とはどういう意味でしょうか。日常的な用語としての楽観は「きっとうまくいくさ」であり、資産運用においては「最高を期待すること」になります。

 

いずれにしても、楽観とは物事が望み通りに進むことに賭けることです。

期待や祈りと通じるところがあります。

 

 

●世の中では楽観的な考え方が大勢を占める

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このため、世の中では楽観の立場にある意見がよく聞かれる傾向にあります。

楽観的な意見は「耳ざわりが良い」「聞いていると嬉しい」という力があり、人の心を惹きつけます。明確な悪材料がない限り、楽観的な意見が採用されます

 

逆に悲観的な意見は、明確な根拠がない限りはあまり聞かれることがありません。

 

多くの人は悲観的になると何もできなくなってしまうことを経験して知っています。できっこないと考えていたことでも意を決してやってみると、意外と簡単にできてしまって拍子抜けした経験しているでしょう。

 

悲観的に生きるより、楽観的に生きるほうがより多くのモノを手にしたり実現することができるので、人生で楽観的に生きることは一定の意味があります。

 

しかし、資産運用にそのまま当てはめることは賢明ではありません。

楽観も一定の度合いを過ぎてしまうと却って毒となります。

それは勝負すべきでない場所で勝負してしまう可能性があるからです。

 

 

●楽観思考は合理的思考を邪魔する

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ある会社の株を保有していたが、その会社の不祥事が明るみ出て株価が急落してしまいました。この時、「待っていればそのうち株価は戻るかしれない。もし戻るとしたら、安くなった今のうちに株を買っておくほうが賢明かもしれない。株を買い増しておけば、株価が戻った時にはより多くの利益を手にすることができるじゃないか。」と、自分にとって非常に都合のいい展開を考えてしまうことがあります。楽観的な人がよくやる考え方です。

 

しかし、この前提となる「株価がいずれ戻す」には何の根拠もありません。合理的な理由付けができないということは、「株価がいずれ戻る」という思考は単なる期待や願望に過ぎず、極めて非合理的な考え方です。

 

仮に株価が戻ったとしても、それまでに時間がかかり過ぎていると機会損失というわかりにくい損をしていることもあり得ます。

 

このように、楽観し過ぎていると、本来ならば手を引かなければいけない場面でも、苑麻に残る選択をしてしまうことがあります。楽観思考が合理的思考を邪魔してしまうのです。

 

 

●楽観という居心地の良さに負けてはいけない

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これはある程度仕方がない面があります。非常に勝ち目が低い場面においても楽観思考を貫いてその場に残り、結果的に大勝ちすることは珍しくありません。

 

分の悪い勝負を続けているので総合すると損をしていることが大半なのですが、たまにある大勝ちで気分が良くなることが、勝ち目の低い勝負を続けることに十分な理由となってしまうのです。

 

この楽観という感情は人間的な感情なので、生きている限り付き合い続ける必要があります。資産運用を始める時にも必要な感情ですから、なくす必要はありません。

 

しかし、楽観が持つマイナス面も十分に理解して、コントロールできるような方法を身につけなければいけません。

 

資産運用の多くは目に見えていう以上に状況が悪いものです。状況は良くもなく悪くもないと感じられるときはやや悪く、状況が悪いと感じられるときはかなり悪いものです。

 

知らぬ間に楽観という居心地の良い場所に溺れてしまう危険に対する警戒を怠ってはいけないのです。

資産運用をしている人が直面する問題の1つに損切があります。

目的となる利益確保とは逆に損失を確定させる行為なのでとりたい方法ではありませんが、これを実行できる人は資産運用における損失を致命的な失敗にする前に逃げ出し、自分の資産をより大きな損失から守ることができます。

 

この能力は必要です。多くの人はこのことを良く知っています。

しかし、実行できる人はとても少ないのです。

 

私たちが危機を察知、危険が迫っていることを理解しても、そこから逃げだすのを妨害するものがあるからです。

私たちは3つの障害を知り、心理的に準備しておかなければなりません。

 

 

●厄介な「3つの障害」を知っておく

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1)後悔の恐怖

資産運用での後悔の一つに、損切しなければ損をしなくて済んだ、あるいは一時的な逆境をただ黙って耐えていればその後に十分すぎる利益を得たことがわかる場合があります。

 

あなたが1000円でA社の株を買った

A社の株が800円になったので売った。

その後A社の株は1000円に戻った。

さらにA社の株価は2000円にまで上昇した。

 

これは非常に辛いことです。1株当たり200円の損失を受け入れたのに、それを拒否すれば逆に1000円の利益になったのです。

これは決して珍しいことではありません。資産運用をしているなら、これと似たような経験は数えきれないほどしています。

 

後からどうなるかはわかりませんから、これは結果論に過ぎません。

しかし、逃した魚は大きいので、この経験は長く深く強い印象を持って心に残ることになります。

 

このようなことが何度も起こると、次第に決断を先延ばしするようになります。

そのほうがより大きな利益を残せるように感じるからです。

 

 

2)損失を受け入れる

さっさと諦めて、より有望な対象に投資するのが望ましいことです。

とても利益をもたらしてくれそうもない資産にしがみついているより、損失を確定させることで資金を自由にして、新たなもので資産運用するほうが良い選択です。

 

文字にすれば誰もが理解し、そんなことは知っていると声を大にすると思いますが、損失を受けいれることはとても難しいことです。資産運用において、私たちは1円だって軽々しく損を受け入れることは難しいのです。

 

 

3)自分の間違いを認める

もしかすると、これこそが多くの人にとって乗り越えるのが最も難しいものになるかもしれません、

 

私たちは間違えることを恐れます。

学校では間違いをすると罰を受け、正解すると褒められる世界でした。

学校で十数年間勉強してきた私たちは、間違いを恐れる教育を十数年人渡って受けています。

 

社会に出ても間違いをしたものには罰が与えられます。サラリーマンならよくわかるでしょう。子供のころに身につけた間違いをすることを恐れる意識は、大人になると更に強化されます。

 

資産運用では、そんなことはありません。

間違いならば仕切りなおせばいいのです。

 

しかし、人生の大部分において間違いをすると罰せられる人生を歩んできた私たちは、簡単に間違いを認めることができません。

配偶者、家族、特に自分に対して間違いを認めることは耐え難い屈辱になるかもしれません。

 

 

●損切を先延ばしすることで新たに抱える2つのリスク

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資産運用ではこれら3つの障害を乗り越えて損切をすることで、より大きな損失する可能性を消滅させることができます。

 

しかし、現実には先延ばしする人が少なくありません。それはもしかしたらよい結果をもたらすかもしれませんが、次の2つの新たな危険性を受け入れることになります。

 

1)致命的なダメージを受ける可能性が出てくる

その時点で損切していれば傷は浅かったが、回復することを祈ったばかりに致命的な傷に達することがあります。資産運用があなたの経済力に大いなるマイナスをもたらすことになる可能性を抱えることになります。

 

特に借金をして(レバレッジを賭けて)資産運用をしているなら、損失の受け入れを先延ばしにすることは極めて危険な結果を、場合によっては人生が経済的に終了する危険性を抱えています。

 

2)機会損失

損失に耐えているうちに、そのうち回復することがあります。

例えばリーマンショック後の株価推移のように、悪い状況が過ぎ去ることをひたすら待ち続けることで結果的に損失を取り戻し、逆に利益になることもあります。

 

しかし、必ずしもそうなる保証はありません。日本のバブル崩壊とその後の株価動きのように、過去の最高水準をいつまでたっても超えないこともあります。いずれ超えるのかもしれませんし、そうはならないのかもしれません。

 

この悪い状況を我慢し続けている間、あなたの試算は凍結された状態となります。

悪い資産に掴まり続けているのです。他に良い資産はあったはずなのに、それを手にするチャンスを失っています。

 

機会損失は目に見えづらくてわかりにくいのですが、決して疎かにしてはいけません。

 

 

●小さな損失を潔く受け入れることがあなたを守る

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だからこそ、普段の日常から間違いを認めるための練習や訓練をしておく必要があります。その方法は人によって様々に異なりますが資産運用においてはとても重要な技術となります。

 

損失に対する理想は、小さな損失を喜んで受け入れることです。

しかし、これは机上の空論であり、人間が感情を持っている限り不可能です。

 

現実的に程よい良策は、小さな損失を潔く受け入れることです。

損失を喜んで受け入れることはできませんが、諦めて受け取ることはできるはずです。

資産運用では小さな損失の受け入れは必要経費の1つなのです。

 

株式投資など一部の資産運用では逆指値という設定でシステムに依存して損切する方法があります。

 

しかし、システムに依存することはあまりいい方法ではありません。

損切にはきちんと向き合う必要があります。システムに依存すると考えることを止めてしまうかもしれません。

 

また、不動産や絵画など資産運用の種類によってはシステムに依存することはできません。

 

自分の意志で、自らの手で損切することで、

・困難な決断を下す能力

・タフになる力

を身につけることができるようになります。

 

あなたは損切の重要性と損切する心構え、そして実行する力を、きちんと持っているでしょうか。

資産運用において厄介な敵の一つに「強欲」があります。

この感情に捕まってしまうと、一度手中にした利益がするっと離れていく結末になりがちです。

 

強欲という感情をうまくコントロールすることができたら、私たちはもっとたくさんの利益を手元に残すことができます。

 

なぜなら、強欲を克服し、自己管理できたら、99%のライバルたちより優れた投資家になれる、つまり金持ちになるチャンスが増えることになるからです。

 

 

●「強欲」を飼い慣らすことはできない

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実際のところ、強欲という感情をコントロールすることは不可能と言っていい程に難しいことです。

 

例えば日曜日の教会では「いかにして強欲を抑えるべきか」という説教をたびたび聞かされます。教会でなくとも、ごく普通の家庭内教育で言い聞かされることもあります。読書やマンガ好きな人なら、強欲を出して結局損をする場面を何度も見てきたでしょう。

 

資産運用に限らず、私たちは「強欲」という感情が悪いものであることを知っています。

しかし、それは理性で抑えることはできません。

 

人が強欲を完全にコントロールできるのなら、資産運用はずっと簡単なものになり、あなたの人生におけるトラブルもずっと少なくなります。そんなことは理性的なあなたならわかっているはずですが、いざ当事者としてその場面に立たされると強欲を抑えることはとても難しいのです。

 

カジノなどのギャンブルでは、大勝ちを狙うのではなく、そこそこの勝利を目指し、そこに辿り着いたらすぐに勝負を降りるようにすれば、勝ち逃げできることが多いのです。

 

多少の幸運は良く起こりますが、大きな幸運は決して長くは続きません。めったに起きないからこそ、大きな幸運を手にしたらニュースになるのです。

 

あなたが強欲をコントロールすることができるなら、ニュースに載る必要などありません。

決してニュースにならない程度の小さな勝利は良くあるのだから、それを拾っていけばいいのです。

 

 

●大勝ちの可能性を捨て、目の前の小さな勝ちを拾う

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もちろん、早々に立ち去ったことを後悔することは度々起こります。その場にいればもっとたくさん稼げたということが後からわかることもよくあります。

 

小さな勝利で素早く立ち去ることは、大勝ちする可能性を捨てることになるからです。

 

1万円を2万円に増やしたところで手を引き、そのあとからやってきた人が10万円を100万円にして帰っていったという話は数えきれないほど起こっています。後からその事実を知った時の後悔は非常に重苦しくて嫌なものです。

 

しかし、その代わりにあなたは小さな勝ちを手にしています。このように素早く逃げることを10回、20回と続けていれば、逃げられなかったときの損失を遥かに上回る利益を手元に残すことができます。早く手仕舞うことで、続けていれば失ったであろう利益を守れるのです。

 

これは一見すると非常に合理的な方法で、利益を最大限に高める方法の1つです。

しかし、実際に行動に移すことは簡単ではありません。

 

 

●ルールを守ることはあなたのお金を守る

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それは実に面白いことが起こるからです。

株式投資において、最初の手持ちが100万円だったとします。

あなたは資産運用でそれを2倍の200万円にまで増やしたとしましょう。

 

普通に考えれば、元手は100万円で、増えた金額が100万円です。

しかし、本人の感覚では、最初から200万円を持っていた気分になってしまいます。

あるいは、私はこの200万円を手にして当然の人間だと思い込んでしまうのです。

 

これは資産運用でもギャンブルでも、はたまたゲームでも同じような感覚に陥りがちです。

だから終わりがなくなってしまうのです。

 

マラソン選手が大会に出場してゴールにたどり着いたらゲームは終わります。

勝っても負けても、満足しても不完全燃焼であっても、そこで一区切りとなります。

喜んだり反省したり後悔したりと様々な感情が沸き起こりますが、それでも頑張るのは明日からです。

 

しかし、資産運用には終わりがありません。一切の制限なく、いつまででも続けることができます。あなたを制する審判、ルール、期限がないことは、想像以上に大変なことです。

 

だから自分できたルールに従うのです。ルールは何でも構いません。資産が2倍になった、1割損をした、年末になった、年度末になったなど、あなたが「これ」と思ったものを選び、そのルールを実行するのです。

 

そして、ゲームをきちんと辞められた時にはご褒美を用意しましょう。この時、お金を使っても構いません。おいしいものを食べる、温泉旅行に行く、それも自由に決めてしまいましょう。

 

このルールを破っていのはよほど合理的な理由があるときに限られます。つまり、そのままゲームを続けることで利益が出る相当の理由がある時に限定されます。そのようなことはほとんど起きないので、あなたは自分が決めたルールに従ってゲームを止めることになります。

 

あなただけが勝ち続けることも、運が味方し続けることもありません。それを願いながらゲームを続けることは、あなたの中にいる強欲という感情に支配されてしまっています。

 

強欲はあなたを含め、すべての人に存在しています。その感情が暴れだす前に、すなわち幸運がピークに達する前に、あなたはそこから立ち去ることは、とても大きな意味を持つのです。

●宗教やオカルトにはあなたをお金持ちにする力はない

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宗教やオカルトには人を金持ちにする力はありません。

これらを信じる人にはお金持ちもいますし、貧乏人もいます。

そして、これらを信じない人と大差ない比率となるでしょう。

 

あなたが信じる神がいたとしても、あなたが金持ちであるか貧乏であるかには全く関心がありません。

 

もし信心深い人間に対してお金を与える神がいるなら、私たちは金のために働くのではなく、祈りの時間が圧倒的に多くなるからです。そしてどのような祈りを捧げることがより神に認められるのかを、手にしたお金を見せながら語ることになるでしょう。

 

占星術師や占い師にも同じことが言えます。彼らもまた普通の人と同じように金持ちもいれば貧乏人もいます。

 

もし占いがお金持ちになる力を持っているのなら、彼らはまず自分自身を占い、金持ちになるでしょう。自分の未来を占えことがタブーならば、占い師同士で協力すれば互いに金持ちになることができるはずです。

 

現実にはお金持ちとされる仕事の中に占い師という職業はありませんし、そのような常識もありません。占いが誰かを金持ちにすることは無いのです。

 

 

●オカルトに騙されるな

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私たちは本当にたまたま起こったことに対しても、心理や法則があるように感じてしまうものです。第三者の視点で考えるとそれを冷静に見分けることができますが、当事者になってしまうと冷静さを失いがちです。

 

例えば、Aさんが某社の株を持っているとしましょう。

ある日この株を持ち続けるか、それとも売却すべきかを軽い気持ちで占ったら、「絶対に株を持ちづけるべきだ」とい強い結果が出たので、株を持ちづけることにしました。

その株は急上昇して、Aさんの資産は大きく膨らみました。

 

それからしばらくして、再びこの株を持ちづけるべきか占った結果、「すぐに売却すべきだ」という強い結果が出たので売却したら、ほどなくして某社の株は急落しました。

 

このような結果が出た場合、占いは正しいのでしょうか。

今後もAさんの資産が膨らむ結果をもたらし続けるのでしょうか。

 

今回は占いがAさんに大きな利益をもたらしましたので、結果的に占いは正しかったのです。だからと言って、今後も同じようにAさんに利益をもたらすかと言えば、わかりません。某社の株価の変動とAさんの占いの結果は、互いに何の関係もないからです。

 

あなたがAさんではならば、売らないと某社の株に何の関連性もないことを簡単に見破ることができるでしょう。

 

しかし、あなたがAさんならば、あっさりとオカルトに乗っかってしまうことが良くあるのです。無関係なものを結び付けて投資をすることは、目隠しをして目的地に進むようなもので、辿り着ける場合もありますが、多くの場合で失敗します。

 

資産運用をしている時は、頼れるのは自分だけであり、自分の冷静な判断力だけなのです。

 

 

●迷信も役に立つ場面がある

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しかし、迷信が役に立つ場面があります。

それは合理的な分析が不可能な場面で使うことです。

 

ナンバーズのように0000~9999の数字から1つを選択する宝くじを購入する時、事前に当選番号を知ることはできません。あらゆる知識を駆使しても当選確率を変えることはできません。当選番号は神のみぞ知る番号です。

 

このように、一切の合理性が通用しない場面では、迷信に頼ることが効果的となります。

その効果とは「決断を下して前に進む」というただ一点においてのみ有効となります。

 

この時に使う迷信は何でも良いです。誕生日、彼氏の誕生日、夢で出てきた数字、過去のラッキーナンバーなど、何でも構いません。

 

どのみち合理的な判断ができないのなら、あれこれ迷っていないでスパッと決めてしまえばいいのです。迷信によって当選確率が上がることはありませんが、情報が不十分な中で決断する力は意外と役に立つのです。

この銘柄は上がる。

この土地の価値は上がる。

 

1つの資産運用を長く続けていると、不意にこのように感じることがあります。

人はこれを直観と呼びます。

 

直観を感じることは決して珍しいものではありません。

私も直観を使って資産運用をしたことが何度もあります。

それは良い結果も悪い結果も得ることになりました。

 

果たして直観は資産運用で使う価値があるのだろうか?というのが今回のお話です。

 

結論から言うと、直観がどのようなものなのかを知り、それを十分に疑うことで、あなたを有利に導く武器とすることができます。

 

 

●直観の構造を知る

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直観とは決して神秘的なものではありません。むしろ誰もが持っている力であり、誰もが使っている精神的なものです。

 

その土台となるものは、これまでに得てきた知識や経験です。

 

人は膨大な情報を取り込むことができます。

他の人と同様に、あなたも想像もできないほど膨大な情報を頭脳に蓄えています。

 

しかし、意識して思い出せるのはそのうちのごく一部に過ぎません。

その他の大部分は思い出すこともできませんが、自分の記憶の貯蔵庫の奥深くに眠っています。

 

貯蔵庫の奥にしまい込まれた知識は基本的に何の役にも立ちませんが、あなたに何らかの直観が働くとき、あなたが思い出せる知識に加えて記憶の貯蔵庫の奥深くに眠っている知識も働きます。

 

直観とは今あなたの頭脳に収められている全ての知識を総動員して得られるものです。

このことから、直観を使うときに注意すべき点があります。

 

 

●直観には2種類ある

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直観は大きく2つに分けることができます。

 

1つは、単なる妄想や希望、あるいは期待が生み出す直観があります。

これは現実を直視しているものではありません。今日買った株が大きく上昇してほしいとか、明日の13時ちょうどにこの場所に行くと運命の女性に出会えるなど、あなたが望んでいる未来、願望を見せることがあります。

 

このような直観は、脳が好き勝手に連想しているイメージに過ぎません。

子供の頃にした空想遊びに近いもので、やっている時はそれなりに楽しいのですが、現実的な判断、特に資産運用の場面で使うには役に立たないばかりかあなたの足を引っ張る結果になりかねません。

 

もう1つは、今まで学んできた沢山の知識や経験、判断力を背景に導き出したものです。

石油業界を十分に勉強してきた人が、1か月後には石油株が上昇すると直観で感じる場合はある程度の信用性があるかもしれません。

 

あるいは横浜市の地価をひたすら調べ続けて知識を蓄え続けた人なら、横浜市内のとある土地の価格が今後どうなっていくのは何となくわかることもあるでしょう。

 

これは有効な直観が働いている可能性がある状態です。その直観を裏付けるだけの知識や経験があるならば、非常に力強い武器として使うことができる可能性があります。

 

 

●直観を安易に信じるな

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しかし、直観は不正確であることが少なくありません。

 

先ほど説明したとおり、知識に裏打ちされていない直観は妄想にすぎず、何の価値もないどころがマイナスの効果すらもたらします。根拠がない直観は妄想であり、その時のあなたが望む未来、そうあってほしいストーリーを思い描いているだけです。実現するかどうかは完全に運任せです。

 

また、自分が持っている情報が不正確なもので、正しい判断ができていない可能性も捨てきれません。人は自分に都合のいい情報しか聞きたくない習性があります。耳障りのいい言葉だけを聞いていたいのです。普段から入手している知識や学習に偏りがある可能性を常に考えておく必要があります。

 

さらに、十分な知識や経験を歯池に導いた直観でさえ、確実にあなたの利益をもたらすという保証はありません。

 

このように、直観は100%信頼できる武器にはなりえないのです。

 

ただし、100%信用できない点はあらゆる武器と同じです。

剣は接近戦で効果があり、弓矢は中距離で有効に働くでしょう。その逆では十分な効果は得られないでしょう。

 

直観も同様に、欠陥があること、有効に使える場面が限られていることを頭において、正しく疑いながら使うことで、一つの優秀な武器となります。

 

少なくとも、直観を全く信じない人や、逆に100%信じる人に比べると、有利な武器を一つ持っていることになるからです。