今日は外貨預金についての話をしていきたいと思います。外貨預金とは日本の通貨ではなく外国の通貨で預金することです。
一般的に言って外国の通貨のほうが円よりも金利が高いことが多く、金利が高いほうがもらえる金利が多くなります。
今回はこの外貨預金というものが役に立つのか?資産運用の一環として利用する価値があるのか?ということです。
結論から言ってしまうと、外貨預金をしてはいけません。資産運用としては多くの危険を背負わされて、得るものはかなり少ないかマイナスになる資産運用となります。
今回はその理由を3つに絞ってご説明します。
●理由1 外貨の金利が高くても、全体として見ると有利でも不利でもない
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外貨預金を進める銀行や各種サイトには「金利が高いから受け取れる利息も高い」とあります。これは事実です。
例えば2018年12月ごろに某銀行から送られてきたチラシには以下のように書かれています。
外貨定期預金
米ドル1年もの 年2.3%(税引き後1.83%)
豪ドル1年もの 年2.0%(税引き後1.59%)
これだけ見ると、外貨定期預金は素晴らしいものと言えます。同時期の某銀行の定期預金では1年預けの定期預金で0.02%となっていました。外貨預金をすると200倍の金利差があります。
単純に並べてみるとこうなります。
日本円1年もの 年0.02%(税引き後0.0159%)
米ドル1年もの 年2.30%(税引き後1.83%)
豪ドル1年もの 年2.00%(税引き後1.59%)
しかし、注意して考えてほしいのです。これだけ金利差があるのなら、多くの金融機関、機関投資家や勉強熱心な個人が外貨預金をするのではないだろうか?ということです。
資産運用において、利益率が0.1%違うと無視できないものとなります。仮に100億円を運用しているならば、0.1%の利益率の違いは1千万円となります。決して無視できるものではありません。
それならば、どうしてこのような美味しいと思える商品が、わざわざカラー印刷の広告にて、人を雇うコストをかけてまで我が家のポストにわざわざ届けられたのでしょうか。
答えは、為替レートにあります。為替レートとは通貨交換するときに適用されるレートです。海外旅行したことがある人は、空港や金券ショップで旅行先の国で使う通貨を交換したことがあるでしょう。
その為替レートと、先ほどの利息を並べるとわかります。
日本円1年もの 年0.02%(税引き後0.0159%)
米ドル1年もの 年2.30%(税引き後1.83%)
1米ドル=108.53円(2019年1月5日)
非常に簡単に言うと、この為替レートは金利差(上記なら約2.3%の違い)を含んだうえで成立しているのです。
つまり、日本円を持っても米ドルを持っていたとしても、特に有利でも不利でもないということです。日本円、米ドルのどちらを選んでも五分五分だからこそ、この為替レートで成立しているとも言えます。
従って、日本円と米ドルを比べた場合、単純に金利差があるから米ドルが有利となるわけではないのです。
日本円と米ドルを比べると金利だけなら米ドルを持つほうが高い→正しい
だから日本円より米ドルを持つほうが有利→正しくない
という点には注意が必要です。
実は、高金利通貨は次第に為替レートが不利になっていきます。これは資産運用をする上では常識です。高金利通貨は次第に為替レートが不利になるからこそ、高い金利を提示してそれを補っているにすぎないのです。
それを知っている多くの機関投資家や個人投資家は外貨預金には手を出しません。言い換えれば、そのことを良く知らない無知な個人投資家に、資産運用としては取るべきリスクではない商品を売りつけているのです。
●理由2 通貨自体が価値を生むわけではない
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以前お話ししたように、資本主義社会における資産とは「持っているだけでお金を与えてくれるもの」です。これは非常に重要な概念ですからぜひご記憶ください。
その点において、通貨はそれ自体が何ら価値を生むものではありません。通貨は持っていてもそれ自体が増殖するわけでもありません。
高金利通貨は利息が大きい反面、その通貨自体の為替レートが悪化することを考慮すると差し引きゼロとなります。
ならば為替レートの変化が利益の源泉になるのでは?と考えるかもしれませんが、これも違います。
定期預金が満期になった時の為替レートを正確に予測することはできません。私たちは5分先の未来でさえ、正確に予測することはできないのです。それならば、為替レートの変化で利益を得るか、それとも損失を出すのかは時の運となります。
保有していても利益を出すことはなく、外国通貨から日本円に戻すときに適用される為替レートはわからない。これは資本主義社会における資産とは言えないでしょう。
●理由3 銀行が取る手数料があまりにも大きすぎる
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そして最後に注目すべき点は、銀行がとっている手数料が明らかに高すぎること、そして外貨預金による損失の危険性の大部分をお客に押し付けていることです。
銀行が取っている利益は最低でも4つあります。
1)日本円→外国通貨に交換するときの手数料
2)外国通貨→日本円に交換するときの手数料
3)提示している金利
4) 運用している資金をお客さんに出させている
1)と2)は海外旅行に行く人はご存知だと思います。
仮に現在の為替レートが1ドル=100円だとしましょう。
この時、銀行はこのような交換レートを提示します。
日本円→米ドル 1ドル=101円
米ドル→日本円 1ドル=99円
外貨預金をする場合は日本円を米ドルに換えて、運用終了時には米ドルから日本円に戻す必要があります。仮に101円をもって日本円→米ドル→日本円と交換するだけで、101円は99円になってしまいます。この差額の2円は銀行の手数料として持っていかれてしまいます。
つまり、銀行は何もしなくてもお客が預けたお金の一部(今回なら約2%)を手にすることができます。非常においしい商売をしていることがわかります。
そして3)では、提示している金利によって利益を得ています。
2018年12月現在、日本と米国の政策金利は以下のようになっています。
この場合、政策金利の差で得られる利息差は年利2.4%となります。
日本 0.10%
米国 2.50%
(出典:外為どっとこむ)
ところが、某銀行のチラシには「米ドル1年ものの利息は2.3%」となっています。
差額の0.1%は銀行の利益となっているのです。
以上、1)~3)のようにして様々なところで手数料を取っているのが銀行の立場です。この手数料はお客さんの運用しているお金ですから矛盾もいい所です。
そしてこの手数料を取るためにお金を出資しているのはお客さんです。
お金を出しているのは銀行ではなく、お客さんである。この点において、銀行は4)の利益を得ています。
お客さんは自身のお金を出すことで、為替レートの変動などあらゆるリスクを背負い、銀行に各種手数料を見えにくい形で払わされています。
その反対に、銀行はお客さんのお金を使うことで確実に1)~4)の利益を手にできる立場にいるのです。
●外貨預金を選択しているようでは勉強が足りない
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銀行視点で考えるとお客の利益、損失などはどうでもいいのです。如何にして銀行が利益を出すことができるのか。それを最優先で考えています。
銀行視点で考えると、外貨預金は非常に儲かる商品なのです。だからこそ、わざわざカラー刷りの広告を、人を使ってまで私の家のポストに投函してきたのです。(我が家は新聞を購読していない。)
さらに、私の家に届けられた外貨預金のチラシには「他銀行の外貨預金を某銀行に移動させると最大で現金100万円をプレゼントします!」と大見出しで書かれています。100万円をプレゼントしてもなお有り余るほどの利益を得られるのでしょう。
ということで、今回は外貨預金についてのお話をしました。細かい構造や背景などは省略していますが、外貨預金によってお客さんが利益を得るということはほぼない、と断言してもいいでしょう。
間違いなく利益を得るのは銀行であり、銀行が得る利益はお客さんが投入したお金に掛ける手数料です。言い換えると、お客さんは高い確率で損をするということです。
仮にお客さんが利益を得ることがあるならば、他の商品で運用したほうがもっとたくさんの利益を得られたでしょう。
なお、外貨預金をすることのデメリットに、預金保険制度の対象ではない(銀行が破綻した時に運用資産が全く戻ってこない場合がある)ことも付け加えておきます。
このような商品をお勧めしている人は商品を販売している銀行、アフィリエイト報酬を狙っている人、外貨預金のメリットを書くように依頼されたライターなど、外貨預金を推奨することによって利益を得ようとしている人でしょう。あるいは知識量が不十分な人なのかもしれません。
そのような記事を書く人を信用してはいけません。しかし、逆に言えば「信用してはいけない人たち」ということがわかる基準の一つと考えることでプラスと捉えることもできるかもしれません。
以上のことから、外貨預金を検討している人には、資産運用からその選択肢を外すことを強くお勧めします。他に優れた資産運用はいくらでもあります。
それを判断できるようになるまでは、資産運用の実践はしないほうがいいかもしれません。