もはやここまでかっ?!
そう思い諦めかけて後ろを向いた瞬間
目の前に大きな噴水が見えた。
噴水の回りを散歩する人、ベンチに腰掛けてのんびりする人。
そう、ここは大きな広場。
パリ市民の憩いの場。期待を胸に、視線を足元に持っていくと
砂利でもなく大石でもない
手のひらに丁度収まりそうな大きさの石がゴロゴロしている。
やった!ついに、石を発見!!!
やった!ついに、石を発見!!!
しかし、ここでいきなり飛びつくわけにはいかない。
N氏は事情を知っているが
パリで合流したH氏にはそんな話すらしていない。
ここで嬉々として夢中で石を拾う私を見て、H氏はどう思うだろうか?
そこで私は、H氏に気が付かれないようミッションを遂行することに。
まず 「これからどうしますかね~?」 と考える素振りを見せながら
視線だけは足元に向けてターゲットを絞る。
一気に拾い上げなければH氏に気取られてしまう。
考える素振りを見せつつ、石の側へジリジリと近づく。
一瞬、H氏が反対方向を向いた。
今だ!!!
私の右手は風を切って地面へ突進し、一気に石を掴んだ。
確かな手応え。
そして、掴んだ石を確認する間もなく、サッとポケットにしまった。
H氏はこの行動に気が付いていない。
大成功!
こうして、ついに私は念願の石をゲットした。
拾い上げた達成感を全身で感じながら
ふと噴水の遥か前方を見ると、そこにはルーブル美術館が。
ではこの石を “ルーブルの側で採取したパリの石”
と呼ばせていただこうじゃないか。
実際、側といっても軽く200m以上は離れているし
美術館とはなんの縁もない石なのだが
ルーブルの肩書きがつくだけで
石の価値が格段に上がるような気がする。
それだけでもう大満足である。
19時過ぎにホテルを出発し
19時過ぎにホテルを出発し
シャルルドゴール空港に到着した私達は
日本で換金できない小銭を使い切るため
待合所の売店で軽食とワインを買い込み、軽い宴会を始めた。
今回の旅行が無事に終了した祝杯である。
だが、私には 無事に石拾いミッションを完了した祝杯でもあった。
ポケットの中から、拾い上げた石を取り出してみると
手ごろなサイズが3つ入っていた。
一気に掴んだ割には、なかなかいい形をしている。
1つは白っぽく、残りの2つは黒っぽい。
日本に帰ったら、キレイに洗って、そしてリリコに渡してあげよう。
スペインの石からフランスの石に変わってしまったけれど
きっと彼女は喜んでくれることだろう。
それから2日後。
無事日本へ帰国した私は、飲み会の席でリリコへそっとお土産を渡した。
ビニール袋に入った3つの石を両手で受け取りながら
とびっきりの笑顔を浮かべる彼女。
その笑顔を見て思った。
“誰かがこんなに喜んでくれる苦労なら、またあってもいいかもしれない”と。
この “ルーブルの側で採取したパリの石” は
11月のストリートフェスティバルで
『想い屋』 の看板を掲げたアートブースに飾られる予定。
スペインからフランスまで渡り歩いたこの波乱万丈の石が
ぜひともたくさんの人に見ていただければいいなぁ、と密かに願いつつ
この旅のお話はこれでおしまい。