地獄の5丁目13番地:学校最後のラボ&停電で最後のクラス | ピロの屋本館@ロサンゼルス

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天使の女王の町Los Angelesでの生活記録

 

Spring 2022

 

うちの大学には

Mortuary Science(死亡科学)

という学部があった関係で、

ラボでは実際のご遺体を使って

エンバーミングをしていた。

 

 

そんなラボだったけど、

我々の代を最後に

ラボをクローズすることになった。

 

 

理由は色々言われているけど、

正確なことは分からない。

 

 

ラボにやってくるご遺体は、

検死課からなので、

通常我々が葬儀社で

エンバーミングするご遺体とは

コンディションが大きく異なるから、

これ以上ラボをやっても、、、

と誰かから聞いた。

 

 

またある人は、

毎週3体のご遺体を

確保するのが大変だかららしい

と聞いたとか。

 

 

それから、Dr. デーモンが

検死課との契約書を失くしたから

なんて話も。

 

 

いずれにせよ、我々の代、

2022年の春の学期をもって、

学校のエンバーミングラボは

クローズとなった。

 

 

ラボ最後の日、

またおじゃる教授が来てくれたニコニコ

 

 

それまでラボで、

それはデカい声で高笑いをしては

生徒にろくに教える事もせず、

それ以上やるな的な規制まで勝手に作り、

自分が早く帰りたいからと、

生徒の仕事を取りあげるとか、

やりたい放題だったユーボンは、

それらの注意を受けたのか、

おじゃる教授の前では

借りてきた猫化していたので

非常にやり易かった。

 

 

おじゃる教授はデーモンのように

しっかり生徒を見てくれ、

遠くからでも目が合うと、

”大丈夫だ”とか”よくできてるぞ”

的な頷きを見せてくれた。

 

 

当時の私はまだ

Apprentice Embalmer(見習い)

だったので、職場に行けば、

本来は指導してくれるはずの

スーパーバイザーエンバーマーの

ピナがいたけど、

彼女は何一つ教えてくれなかった。

 

 

なので、学校のラボで

デーモンやおじゃる教授、

それにラスカル教授などが

教えてくれたことは

とても有難かった。

 

 

そんな学校でのラボがなくなったら

今後はどうなるか。

 

 

以前も軽くふれましたが、

生徒たちは

葬祭ディレクティングや

死亡心理・社会学同様、

自分達でエンバーミングを

やらせてくれる葬儀社を探して交渉し、

ラボとしての時間数をこなして

いかねばならなかった。

 

 

ふ~、あと1学期

遅く入学していたら、

エラく面倒なことになってたわガーン

 

 

ラボ最後の日は、

3グループのうち

我々のグループが最後まで残って、

ゴミ出しや片付けをすることになった。

 

 

いつも以上に奇麗に

掃除と片付けをし、

我々5人が最後にラボの鍵を閉めた。

 

 

 

それから、

この期末テストを前にした時期、

最後の講義も

次々と終了になった。

 

 

そんな中、

エンバーミングクラスの

最後の講義では

ハプニングが起こった。

 

 

授業を始めて

ほんの15分20分たった頃、

突然バチンッピリピリという音と共に、

教室の電気とプロジェクターが

消えた。

 

 

『停電だダッシュ

何人かが同時に言った。

 

 

するとそこで1人だけ

違うことを言った生徒がいた。

 

 

『Let's go home!!笑い

(よし、帰ろうよ)

 

 

でも、1人がそう言ったからと、

それに便乗して

”帰ろ~!帰ろ~!”

言う生徒は誰も居なかった。

 

 

理由は、まぁみんな

おじゃる教授の講義が

楽しかったからってのも

あるだろうし、

最後のレクチャーってのも

あっただろうし。

 

 

あとは、この学部に

我々が入学してきている理由の

ほとんどは、

葬祭ディレクターよりも、

エンバーマーを目指して

の方が多いから。

 

 

いずれにせよ、

皆がこのエンバーミングクラスを

楽しんでいたのは

確かである。

 

 

で、その

Let's go homeの発言者は

誰かというと、

私と経理クラスでトラブった

バカンジーであった。

 

 

 

停電になって

プロジェクターが消えても、

おじゃる教授は

しばらく授業を続けた。

 

 

だって彼はエンバーマーとして

経験豊富だから、

どんな内容でも

講義にもっていけるしね。

 

 

彼はいつもの感じで

面白いレクチャーをしていたけど、

しかしここで

アナウンスが入った。

 

 

この停電が数時間は続くので、

授業を終えて帰宅するようにと。

なのでクラスはそこで

終了となった。

 

 

楽しいクラスほど、

そういったアクシデントは

つきものなのだもやもや

 

 

我々は暗い中、帰路につくため

建物の外に出た。

 

 

するとそこに、

修復クラスのコリン教授が

立っていた。

 

 

出てくるMortuaryの生徒達に、

『信号機も停電に

なっているかもしれないから、

みんな気を付けて帰るのよ』

母親のように心配して

声をかけていた。

 

 

するとコリン教授、

私には個人的に、

『信号のある場所は気を付けてね

と言ってくれた。

 

 

私は『は~い』と言ったものの、

なんとなくコリン教授が、

私をチラチラと何度も見ていたので、

話したいのかなと察した。

 

 

なので言ってみた。

 

 

『実は私、学校の隣の

アパートに住んでいるので、

徒歩なんですよ』

 

 

するとコリン教授、

『あ、そうだったのね!

なら信号機の心配は

あなたには無いわね笑

と言って笑った。

 

 

こうして我々生徒は、

Mortuary Scienceでも花形である、

エンバーミングクラスと

遺体修復クラスの学期の

講義全て終了し、

翌週の期末テストに備えて

猛勉強に入った。

 

 

エンバーマーになりたい!

と思ってから

2年半経った頃だった。

 

 

ではではみなさま、

また金曜日にむらさき音符ブルー音符キスマーク