汚い手と綺麗な手 | ピロの屋本館@ロサンゼルス

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天使の女王の町Los Angelesでの生活記録

物心ついたくらいの時くらいの

ママに関する思い出は何かって聞かれたとしたら、

”手”でしょうか。

 

白くて指が長くて、

クラシック音楽をピアノで弾いてました。

私がピアノを弾きたいって思ったのは、

そんなママの影響なのでしょうね。

 

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私の両親が離婚をする時、

子供をどっちが引き取るかで揉めたようだ。

もちろん、押し付け合っている方じゃなくて

奪い合ってる方で。

 

ママは、”子供だけは絶対に渡したくない”との思いから、

『慰謝料も養育費も一切要らないから、子供だけは下さい』

と言ったそうだ。

 

するとどうだろう、

元父はいとも簡単に、

 

『それならいいよ』

 

と言ったんだと。

 

まぁ、自分が世の中で一番大切な野郎だから

何の不思議もないけど。

 

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ママは離婚後1人で子供2人を育ててきたわけですが、

職業はご存じの通り油屋(笑)。

事務をやりながら現場でも働いていたような逞しい人でした。

 

オイルやタイヤ交換はもちろん、

その他の修理もしていたんで

手がいつも真っ黒でした。

オイルとかって

手を洗って簡単に落ちるものではないですからね。

 

暑い夏も寒い冬も雨の日も風の日もいつもいつも、

ママは大きな声で

『いらっしゃいませー!!!』

『おまたせ致しました!!!』

『こちらへどうぞ!!』

『オーライ、オーライ、オーライ、はいストップ!!』

『有難うございました!!!』

とか叫びながら仕事をしていたのを覚えています。

 

私は子供の頃からそういったママの働く姿を

すぐ側て見て育ってきた。

 

そんなママはよく私の手を見て、

『あんた、綺麗な手をしてるわね~!

ママのこの汚い手と取り替えない(笑)?』

とかふざけて言ってきた。

その度に私も

『え~、やだよ、そんなシミだらけで汚い手~!!』

って返すとママが、

『あんたに何かあって皮膚移植が必要になったら、

ママのこのシミだらけの皮膚を移植してあげるからねー』

とか言い返して来て、

2人で笑って話したりしていたのを覚えている。

 

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ある日ママ一緒に

じーちゃん&ばーちゃんちに行って

皆で楽しく食事をしていたら元父がやってきた。

ママも元父も至って普通なので、

『あら、お久しぶり~!元気?』とか、

『あぁ、元気だよ。きみは元気?』

って感じの会話が普通だったのね。

 

でもある日、

私は元父の言葉に怒りを感じた事があった。

それは、ママの手を見て元父が、

 

『きみ、汚い手してるね~。女の手じゃないよ。』

 

と言った時だった。

 

ママはあの手で子供を2人育てていたのだ。

それがママの職業なのだ。

あの手のお陰で、

娘2人はご飯食べて暮らしてこれたのだ。

それが果たして本当に”汚い手”なのだろうか。

 

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渡米後私はカラオケボックスで働き始めた。

その店は、隣のレストラン&バーと経営者が同じだった。

私はレストランのキッチンで働いていた

メキシコ人のハビエルと仲良くなった。

 

ハビエルは、私が全く英語を話せないのに、

時間が出来るとやってきて

英語の練習とばかりにお話しをしてくれた。

 

こちらにお住まいの方ならご存じかと思いますが、

彼らは基本的に大家族。

でもメキシコでの稼ぎでは生活がままならない。

なのでメキシコから出稼ぎにきている彼らのほとんどは、

国の家族に仕送りをしている。

そしてハビエルも弟のリカルドと共に、

出稼ぎ組としてアメリカに来ている1人だった。

 

ある日ハビエルがいつものように

私がいるカラオケボックスの受付にやってきて、

陽気にご挨拶をしてくれた。

私も挨拶を返しながら席を立ってハビエルに近づき、

握手をしようと手を差し伸べた。

するとハビエル、

手を一瞬出しかけたけどヒョイっと引っ込めてしまった。

 

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『どうしたの?』と尋ねたら、

『今さっきしつこい油を洗っていたから

手が汚れている。

そんな手で握手なんてしたらピロの手が汚れてしまう』

と照れくさそうにして両手を擦って話した。

 

私は迷わずハビエルの手を両手で強引に握りつたない英語で

 

『ハビエルの手は汚くない。

あなたはこの手でメキシコの家族を支えているんでしょ。

そういう手は”汚い手”ではなく、”綺麗な手”なんだよ』

 

と言って、

両手で掴んだハビエルの手をブンブンと上下に振って

握手を遂げた。

 

するとハビエルの目がみるみるとウルウルしてきて、

自分がしていたエプロンで顔を拭いながら、

 

『You're so カ、、、カ、、、カ、、、。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。』

 

って、”カ”は多分Kind(優しい、親切)とか言いたかったんだろうけど、

そんな感じの事を言ってガン泣き始めちゃってね~、

びびちゃった~(^o^;)

 

そんな事があって以来、

私とハビエルは一段と仲良しになったんだけど、

後にそれが原因で酒に酔ったハビエルにコクられて

それはそれは大変だったんですけどね~(笑)。

 

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結婚してから憧れの家庭菜園を始めたのですが、

やはりカリフォルニアの陽射しは強くて、

いつしか私の手も、

あの頃のママの手のようにシミ&シワだらけで

太い指になりました。

 

 

  

ランドスケーピングの休憩中

 

 

マメが2つできました。。。

 

 

指先もガサガサになってしまいました。

 

 

  

手の甲の方なんて、

40代とはとても思えないような手に。

 

 

そして今思う事は、

 

ママの生前、

ハビエルに言ってあげた事と

同じ事を言ってあげられれば良かったと。

『ママ、この手で育ててくれてありがとねー(^ε^)♪』

と、一言言ってあがられたら、

どれだけママが嬉しかっただろうに、、、、

ってね~(^~^)

 

 

私は家庭菜園を趣味でやっているんです。

やってみたくてやってみたら、

私より旦那の方がのめり込んじゃって~(笑)、

ランドスケーピング&ガーデニングも、

週末ゆっくり休みたいはずなのに旦那、文句1つ言わず、

日の出から日の入りまで過酷な肉体労働をしてくれてます。

今年に限らず毎年この時期はね。

 

そして出来た作物で料理をすると、

とっても喜んで美味しいと食べてくれるので、

それが私の幸せなのではないかなぁと思うわけです。

 

手だけじゃない。顔も身体もシミだらけだし

年と共に全身シワシワになってきているわけですが(笑)、

それでも、そうするだけ価値のある事が出来ているのだ

と私が思えているのであればいいかなって思います。

 

旦那からしたら、

もっと綺麗で美しいワイフの方が

良かったのかもしれないけどね(笑)。

 

人の人生の価値は

決して見た目では分かりませんよね。

 

って話でした。

 

 

どくしゃになってね…

 

 

 

それでは皆さま、

良い1日を。