僕の実家と、彼女の実家と、そして今僕のいる大学はそれぞれ非常に遠い。

彼女の実家までは今僕の家から高速を使って2時間くらい。
でも、彼女の実家から僕の実家まででも500kmくらいある。

中部と中国と四国と……遠い。

彼女は長女だが、弟がいて跡取りがどうという話は問題にならない。
ただ、彼女の親が年老いた時、何かあったとき、面倒を見たいというのは人間の感情として当り前だろう。

僕自身、彼女を“自分の家の”嫁という感覚を持ちたくないと思っている。
おそらく、名字を僕の名字に変えてもらうことになるかもしれないが、あくまで生涯のパートナーとして、平等な関係性でいたいと思う。

でも、地元には帰りたい。
奨学金の関係もあって帰るしかない。

だから、彼女には頭を下げて地元に来てもらうことをお願いした。

一度は別れるかという話にもなったが、彼女が折れてくれた。
何かあったらすぐ実家に帰れるような手段を用意してあげれるようにならなければ。


そして、問題はもう一つある。
僕の職業は国家試験というものを通らなくてはならない。
まさに来年それがある。

これに落ちてしまえば一年間はぷーたろーになってしまう。
内定も取り消しになってしまうわけだ。
そうなると、地元に帰る云々ではなくなってしまうわけだ。

彼女も2月か3月には仕事を辞めて一緒に引越しをしなくてはならない。
そう考えると、不合格になってしまった時…。

考えたくないが、考えなくてはならない問題だ。

そのためにも勉強を頑張らなくてはならない。

彼女の人生にも責任を持つというのは、こういうことなのだろう。
大黒柱などと言われてきた日本の男に必要なのはきっとこういうことなのだ。

ペタしてね
わかってはいたことなのだが、もうしばらく会っていない。
気づいたらもう6月の中頃になっているわけだが、前回会ってからもう一か月というところだろうか。

僕自身、卒業試験が間近に迫っているために勉強が忙しい。
それに、最後の年、部活も頑張りたいと思っている。

そうなると、バタバタと忙しい。
だから彼女と会わなくても…というわけにはいかないのだ。

もう離れて3年目にもなれば慣れっこと言えば慣れっこなのだが。
授業も少なく、自習という時間が長ければ長いほど、自由という時間が多ければ多いほど、なんとなくの心さみしさがあるのだ。

参加しなければならないこと、やらなければならないことに追われていればそれとして…。
今は自主的に勉強する期間。

休むのも自由、彼女と会うのも自由なのだ。
でも会えない。

もう20代も中頃。
さみしいなどと言ってもいられないのだが、会いたいという気持ちはあってもいいのではないだろうか。

運がいいのか悪いのか、少なくとも一つ目の卒業試験が終わったら彼女と会える。
2か月も会えないなんてことになっても、つながっていられる自信はあるのだが。
果たしてどのくらい会わなくてもいられるの、と言われると自信がない。

きっと、何かにこじつけて会いに行ってしまうのだろうな。
夜車を飛ばして2時間。
翌日予定があるなら、朝早く起きて帰ってくる…なんて。

電話もある。
昨日は久しぶりに通話した。

でも、顔を見れない、触れられないっていうのは、やっぱり辛いものだ。

早く会いたいな。
なんて、可愛いことを呟いてみる。
何やら、ずいぶんと時が経ってしまった。
2011年の5月1日に付き合い始めた僕たちだったが、もうすぐ4年がたとうとしていた。

2013年の3月に彼女は大学を卒業し、遠距離恋愛になった。
そしてさらに時は経ち…
2015年4月僕はついに最終学年にまでなってしまった。

ゴールデンウィーク前の4月最終週は外部実習だったため、家から1時間くらいの場所に2週間ほど宿泊していた。
ゴールデンウィーク、彼女は仕事のため会えないと思っていた。

ところが、4月29日(水)、彼女から連絡が入る。
どうやら、仕事が休みになったらしく、5月1日から3日まで来るとのことだった。

そう、5月1日は僕たちの記念日。
二人で記念日を過ごせるということになる。


記念日を一緒に過ごせることがなかなかない僕たちだから、せっかくなら何かしたいと思った。
29日の夜、一人で作戦会議…。
「財布がほしい。」
そう言っていた彼女の言葉を思い出し、少し強行策を思いつく。
そうだ、せっかくなら食事もおしゃれなところでしよう。
思いついたのは、お付き合いが始まる前、彼女を食事に誘ったあのレストランだ。

30日、作戦開始。
まず、あまり時間の無い昼休みだったが、更衣室の隅っこでレストランに電話。
5月1日はいつ実習が終わるかわからないから、2日に食事を予約。
HPで見たコースの内容でいいけれど、トマトを使ってほしいと希望。
同じ値段でお任せすることになった。

続いて、プレゼント。
実習が終わってから飼っている鳥を引き取るのに合わせて自宅まで1時間かけて帰宅。
そこからあわててショッピングモールへ。

財布といっても、たくさんあるうえに、お店もいろいろ。
彼女は派手目なものが好きじゃないからやはり茶色がいいだろうか。
今使っているのは二つ折り財布だから、二つ折り財布のほうがいいだろうか。
小銭の取り出しやすいものがいいな。
いろいろ考えてみるも、ぴんとくるものがない。

物欲の無い彼女には、いつも誕生日やらクリスマスにほしいものを聞いても
「とくにない」
といわれてしまう。

せっかくなら、少し値が張っても、ほしいと言っているものをあげたい。
今までの分も含めて。

そんなとき、二つ並んだジュエリーショップが目に入った。
ひとつ目に入ってみる。

「何かお探しですか?」
そう聞かれたものの、指輪は難しい。
サイズを忘れてしまった。
やっぱりネックレスだろうか。
半年記念のときにペアネックレスを贈って以来だ。
もう社会人の彼女。もう少しいいものをあげてもいいだろう。

肌が弱いから、アレルギーの起こらないようなものがいいな。
せっかくなら、ダイヤがいいな。

…高い。

自分の予算と目の前のダイヤ。
自分が小さく思えるほどに、自分の予算で買えるものは小さい。

でも、あきらめたくなくて、
「また考えてみます。」
と言ってから、向かいのジュエリーショップへ(笑)

同じ話をしてみたら、こちらはもう少しいろいろ選べそうだった。
少し予算をオーバーするが、これなら自分でも納得できそうだ。
それでも、少し小さいような気がするが。

せっかくなら、シルバーっぽい色ではなく、ゴールドっぽい色にしよう。
前回のペアネックレスとかぶらないように。

「これにします。」

こういうときは、思い切りが大事だと思う。
一言、そう言って決めた。

高い買い物をしてしまった。
人生で指折りの買い物。
人生でプレゼントとしては史上最高額だろう。

落とさないように、盗まれないようにと、警戒しながら、
今度はお手紙用の便箋と封筒も買った。

手紙を書こうと思ったのだ。
時計を見れば、もう閉店ぎりぎり。

そこから、レストランへ急行し、当日お金を払わなくていいよう支払いを済ませた。

財布はまたの機会にしようと思って、あわてて大学へ。
そこで鳥を受け取ると、家に鳥を置いて再び実習先へ。

そんなこんなすれば、家に帰ったのはもう日付を過ぎていた。
2015年5月1日、ついに4年目の記念日になっていたのだ。

今日でこの宿舎を引き上げなければならない。
そのため、実習が終わってすぐに彼女が待つ自宅へ帰れるよう掃除をし始めた。

睡眠時間を削り、掃除も終わらせ、あとは実習をするだけ。



実習が終わったのが18時ころ。
そこから自宅に帰ると19時くらいになっていた。

玄関を開ければ彼女の靴。
でも反応がない。
夜勤明けだからだろう。
彼女はソファで眠っていた。

つんつんしてみたが、むにゃむにゃ寝ぼけるだけ。
せっかく早く帰ってきたのにな。

そんなことをしていれば、疲れていたのか一緒に寝てしまった。

二人して起きたのは23時ころ。
「どうして起こしてくれなかったの?」
いいえ、起こしました。
でも、おきませんでした(笑)

それから、その日はもう時間がなかったので近くで晩御飯を食べて終わった。

5月2日。
この日は僕自身予定を入れてしまっていたため、付き合ってもらうことになった。
髪を切り、車の定期点検をしてもらった。

その帰り、僕が2日前に買い物をしたばかりのショッピングモールへ行った。
もうすでに回ったお店を回りながら、財布の好みをチェック。
「今日は晩御飯、おいしいもの食べに行こうね」
とだけ言いながら、買い物をして歩いた。
とくに何にかかったわけではないのだが。

そして夕方、いよいよ作戦開始。

「さっきネット見てたら、おいしそうなところあったんだけど、行く?」
「いいけど、道わかるの?」
方向音痴の僕を心配してくれるのはうれしいけど、2日前に行ったお店くらい自分で行ける。

どんどん街のほうへ行けば、彼女が一言
「もしかして、○○?」

…どうして当てちゃうかなぁ、もう!

「そう、なんでわかったの?」
なんて言いながら、無事入店。
少し予約の時間に遅れてしまったが。

お店に入れば、
「予約の方ですね」
と案内される。

「え、いつ予約したの?さっき?ネットで?」
ふふふ。
驚いてる驚いてる。

テーブルに着けば、もうすでにメニューが置いてあった。
お、おお…確かにトマトでとは言ったけど、全部トマトって文字はいってる(笑)

前菜も、お魚も、お肉も…みんなトマト(笑)
でも、おいしくて、二人でおいしいねって言いながら食べた。
とくに、スイーティアとかいうトマトがおいしい。

あれ、前菜あたりでパンをパクパク食べちゃってるけど、彼女さん、大丈夫かな。

お肉料理まで食べたら、おなかがだいぶいっぱいになっていた。
デザートは別腹だろうと思って、待っていた。

来ました、デザート。
二種類。
二つともトマト!!(笑)

トマトを使ったデザートなんてうまいのかと思ったけど。

…んまい!
何だこれ、と二人でいいながら食べ始めた。

…が、重い。
おなかがいっぱいの中、一口二口目はおいしいんだけど。
たっぷり詰まった胃袋には少々きつい(笑)

二人とも、大満足だった。

そろそろかなと、食べ終わったところで今日のメインイベント。
ボディーバックを軽くして、トランクに隠しておいたプレゼントを詰めて持ってきていた。

まずは手紙。
これ、といって渡す。
「ここで読んでいいの?」というのでうなずく。

二枚目にはプレゼントの内容が書いてあるので、二枚目に移ったあたりでプレゼントを取り出し、差し出す。

「ごめん、これ、後で読んでいい?」

いや、そりゃいいけど…なんで?
と聞いてみると、

「プレゼントも後で開けるね。」
と。

え、といった反応をすると、
「今開けたほうがいい?」
と聞きながらも、後でということになった。

出るときは、スマートにお会計なし!
やったぜ、作戦通り。

また彼女から、
「いつ払ったの?」
と。
ふふふ、ふふふふふ!

家に帰り、彼女が改めて手紙を読み始める。
読み終わる頃には彼女の目に涙が。

プレゼントを開ければ、
「ありがとうございます。」
…と。

言わなきゃ。
プロポーズの言葉。

いろいろ考えたけど、結局決まってなかった。
出た言葉は…

「これからの人生も、よろしくね。」

だった。

短くしないと彼女は良く分からないって言うから短くしたけど。
インパクトが少なかったのか二人で部屋で映画を見始めたころ聞いてみた。

さっきのね、あれプロポーズなんだよと。
そしたら、彼女がすり寄ってきた。
やっぱり気づいてなかったのかな。
でも、いいよって答えなんだと思う。

二人で映画を見ながら夜が更けていった。

彼女さん、これからもよろしくね。
ほんとは、
「残りの人生、一緒に歩いてくれない?」
って言おうかなとか思ったけど、そんなロマンティックなことも言えなくて。
でも、あれが僕らしかったんじゃないかなと思う。

まずは、国家試験にむけて頑張らないとな。

これからも、初心を忘れず、彼女さんを大切にしていきたいと思う。

5年目に突入した、僕と彼女さんだった。