日本人の食卓に欠かせない味噌。

「手前味噌」という言葉があるように昔は家庭で作ることが当たり前だった。

味噌づくりを始めたきっかけは移住する前に勤めていたところでお世話になった、私が師匠と称する、北国にはそぐわぬ冬でもこんがり日焼けした男性だ。

見た目でものを言うのは好きではないが、素直に意外だなと思った。

私の周りには料理好きはいても味噌を仕込む人などいなかった。

師匠は「一度自分で作った味噌を食べたらやめられない」と言った。

この言葉が突き刺さって、教えてください!と頼んだのが始まりだ。

その時は米をいつも買わせていただいていた農家さんから大豆を購入し、師匠に生麹を注文してもらい一緒に作ってもらった。

正直に言ってしまえばしっかり熟成する前の段階で食べ始めてしまったのだがそれでも美味しかった。

仕込んだときには形がはっきりしていた麹が大豆となじみじんわり水けを帯びていた。

色はまだ明るく味も若かったがそれはそれで良く、なにより自分で仕込んだのだから楽しいうれしい美味しい!のだった。

それからは乾燥麹で作ってみたり、その辺のスーパーで買った大豆で作ってみたり。素材は違えど師匠の言う通り美味しいし作り方がシンプルなので作り続けている。

 

そのうち、自分で育てた大豆で作れたらどんなにいいかと思い、思っているうちに移住が決まり、広い土地を手に入れたのだから作らないわけにはいかない。

まずはとにかく蒔いてみた。

そして毎年作付面積を増やして昨年は約20キロとった。

我が家の味噌の消費量は年間30キロくらいなので満足のいく収量だった。

大豆ができれば麹も…となる。

ニシン漬けでテストした玄米麹を3キロ仕込む。

麹づくりは3日要するので味噌づくりには実質4日かかる。

しっかり熟成されたものを食べたいので多めに作って貯蔵しておくのが目標だが、一日に作れるのはせいぜい10キロ。

今期は2樽仕込んだのであと2樽は仕込みたいところだ。

これが次は自分で米を作って麹を作れたらな~とも思ってみる。

いつかそんな味噌が作れたら最高だろうな。

 

近所に80代のご夫婦が住んでいる。

お二人の話が好きでしょっちゅう遊びに行くのだが、ある日味噌の話になった。

とても謙虚なお二人で自慢話なんか聞いたことないが味噌に至っては違った。

昔からずっと手作りで、手前味噌だがうちの味噌は本当に美味しいんだと。

それを聞いてすごく嬉しい気持ちになった。

心から自分の味噌を可愛がっている感じがした。

一般的な、マウント取る系の聞きづらい自慢話とは違う。

このお母さんのまあるい優しい手で作られた味噌だもん、美味しいだろうなと思った。

お父さんも、うんうん、美味いんだよな~としみじみ。

お二人の出す柔らかい空気もまた、美味しい味噌の素材になっていると感じた。

「手前味噌ですが~」っていう人、もっと増えないかな。