春の訪れを前に夫は晴れて退職の日を迎えた。

その日の朝、長年支えてくれたことに皆で感謝をしながら制服姿の夫と写真を撮った。

 

家族と毎日のようにこれからの事を話していくうちに子供たちの中でも現実味が帯びていき、あんなことしてみたいこんなことしてみたいと盛り上がっていった。

きっとこの子たちなら環境が変わっても楽しむことが出来ると確信できたし、後にぶつかりあったとしてもしっかり受け止める覚悟はある。

そんな訳で例の物件の本契約をすることに決めた。

 

新たな生活を迎えるにあたって色々準備をし始めた・・・と言いたいところだったが、不動産の事務手続きの都合上本契約まで5か月を要した。

身動きをとろうにもとれないので釣りに没頭することにした。

毎日のように海へ行き、釣れても釣れなくてもその時間を楽しみ切った。

釣りに行かない日は散歩をしたりお弁当を持って刑務所巡りをした。(漫画「ゴールデンカムイ」の影響)

 

そんなこんなで6月頭に無事本契約を交わすことができた。

家の売却についてはまだ買い手は決まらずにいたが、本契約が済んだことでいよいよ私たちは動き始めた。

毎週土曜日、資材と工具と家の荷物を少しずつ積んで早朝に出発し、片道3時間かけて新居へと向かい家族全員で少しずつリフォームをし始めた。

台所が傷んでいた為、リフォームが終わるまでは使い込んだキャンプ道具を外で広げて料理をして食べた。

肉を焼いたり米を炊いたりみそ汁を作ったり。

まるで貸し切りキャンプ場だ。

今までご近所を気にして100%で遊んだことがなかったので最初はキョロキョロしていたものの、直ぐに自分を取り戻し思うままにはしゃぐ子供たちと私、黙々と肉を焼き続ける夫。

なんて幸せで自由な時間。

 

腹ごしらえをして作業をしていると皆夢中になりすぎて気が付いたら夜10時だったりということがよくあった。

途中で弱音を吐くと思っていた子供たちの集中力には一番驚かされた。

床の張替え、壁や天井の漆喰塗り、重たいキッチンをせっせと運び、新しい台所を自分たちで作った。

親も子も初めての事だらけで新鮮で刺激的だった。

心地よく疲れ、夜は5人並んで寝袋に入ってぐっすりと眠った。

日曜日の朝、早く起きて裏山の方へ行き自然のエネルギーを沢山浴びながら炊事をし腹ごしらえしてまた作業に取り掛かり、昼過ぎに再び3時間かけて自宅へ帰宅。

これを2カ月間ずっと繰り返し、ある程度生活出来るように整えた。

ハードな日々だったが誰も体調を崩すことなくパワフルに動けたのは、皆楽しんでやっていたからだと思う。

今同じ事をしようと思ってもきっと厳しいだろう。

楽しんでいる人のパワーって計り知れない。