近所に高齢の1人暮らしの老婦人がいます。
戦後、イギリス人の空軍パイロットと結婚したドイツ人女性です。
もう90歳近いでしょうか、ご夫婦はとても仲良しでした。
ご主人は数年前に亡くなっていますが、スピットファイヤーのパイロットとしてとても有名な方でした。
女王陛下から勲章も授けられています。
戦後、当時のアフリカにあったイギリスの植民地、レディーシアに移住・現地ではホテルを経営していてかなり羽振りもよかったそうです。
奴隷もたくさん使っていたそうな・・・・。
ご本人はルフトハンザのキャビンアテンダントとして仕事をしていたこともあり、退職の際にはマイセンのディナーセットのフルセットを会社から選別として贈られたそう。
今の価値にするとマニア垂涎の超高価なものだそうですが・・・。
陶器に詳しくない私は価値はわかりません・・・。
まあとにかく。
ご主人が亡くなってからは1人暮らし、寂しさのゆえか痴呆の気配がでてきたといいます。
もともとは聡明な方だったそうですが、今は5分前のことも覚えておらず、近所の人に挨拶をしてもすぐに「どちら様でしたかしら?」ということがあったりするそうです。
相棒は若いころにドイツで働いたことがあり、ドイツ語は完璧です。
そのせいかこのご夫人のことで、トラブルがあるとよく助っ人を頼まれます。
問題はこの方、年をとってから「ヒットラーは悪者ってわけじゃないわ。」「黒人・アジア人はみんな奴隷か召使」という態度を隠すことがなくなったことです。
相棒が私を「妻です。」と紹介しても「中国人を雇ってらっしゃるの?」とコメントされました。
今日もガスボイラーの交換に来た人にむかって、「誰かが私の部屋を荒そうとしている。」と大騒ぎして仕事にならない、と大変なことになりました。
実はロンドンに娘がいるとかいうことですが、「忙しくて母の面倒を見てる暇がない」ということだそうで・・・。
親戚が市の福祉課に勤めていることもあり、事情を聴くことがありましたが
「うちの両親は、今まで税金をたくさん納めてきたのだから国が面倒みてくれて当たり前」と言われたそうです・・・・。
とてもお金持ちだそうですが、お母さんが亡くなったあとに受け継ぐ財産が減るのがイヤなんじゃないか、なんて言われています。
今日はガスボイラーの交換作業中はうちでお茶でも飲んでいただいて、ということになったんですが、私を見るなり相棒に「新しい家政婦をお雇いになったの?」と。
アジア人の私はメイドとしか認識されていないようです。
まあ、もういいんですが。
グレムリンは、知らない人が嫌い。
知らない人がリビングにいて私の姿が見えないので、大声で私を呼び始めます。
すると、この老婦人、「お前は私に話しかけているの?ピー、ピー、可愛い子ね。」と機嫌よくグレムリンに話しかけ始めました。
アフリカン・パロットのグレムリン、きっと人間にしたら小さい黒人の男の子だと思います。
もし幼い黒人の少年がリビングにいてビスケットをねだったりしたら、きっとこの婦人は「いないもの。」として無視するか、「お前はあっちへおゆき。」と追い払ったでしょう。
黒人は奴隷、アジア人は召使と考えているからです。
皮肉なものです。
元ドイツ人というだけで、今まで穏やかに付き合っていたご近所とも「ヒットラーはいいリーダーだった。」と言い出したためにトラブルになり・
郵便屋さん・ガスや電気の作業員・スーパーの従業員は「ロークラスの人間」として見下すので嫌がられ・私みたいな外国人は召使扱いされるのがシャクで距離を置き・
子供からは邪魔者扱いされるなんて。
グレムリンは知らないおばさんは怖いので、保護者の私を呼んでいるだけなんですが、自分と話をしたいのだ、と嬉しそうに相手をする老婦人を見て複雑な気がしました。
「知らない人間がたくさんでやってきて、自分の持ち物を盗もうとする。(実はガスの作業員)」と泣いていたという老婦人を思うと、なんだか虚しくなるのです。