※お友達、杉山さんのハイランドパイプ
イントロ
初心に帰ってバグパイプについて簡単な説明を。
長い間、バグパイプ(以降、パイプ)を演奏していると当たり前の事でも普通に考えたら全く当たり前じゃないことが沢山あります。
一番はバグパイプという名前に関する誤解ですね。
あとは音楽を聴いたりするけど楽器の事はよくわからないなぁ~って方や楽器は弾くけどいわゆる、普通に楽器屋さんで手に入る楽器を弾いている方々。
更に悲しいのは同じパイパー(バグパイプを演奏している人達) 仲間 でも自分が演奏しているパイプの事以外は知らなかったりする事。
特に奏法や指使い。音域等。
今はネットで調べればたいていの事は出てきます。
音域、指使いに関しても。
そういう知識を何故、吸収しないのかよくわからなくて。。。。
これは悲しい。ホントに悲しい。悲しすぎてもう話を止めようってなっちゃう(爆)
勉強してよぉ~ ってまでは思いませんが^^;
興味くらいは持ってほしいなぁ~ って気持ちはあります。
他のパイプやそのパイプが奏でる音楽に。
というわけで簡単なところからパイプの説明。
なんでバグパイプ?
バグパイプって英語で書くと、Bagpipes です。
はい。
Bag + Pipe(s)
バッグにパイプ(管)が複数。
そのものズバリ、
Bag に Pipe(管)が複数組み合わさったもの。
ちなみにパイプの名称も何々パイプスとするのが正式ですがこの記事内では全てパイプで止めています。
日本ではバグパイプ。って呼び名が定着してるので。
本当は複数系でパイプスですね。
バッグとパイプで構成されているのがバグパイプ。
当たり前ですがバッグの意味は此処では袋ですね。
バッグと言ってもこういうバックじゃないですよ^^;
パイプ刺さらないし空気漏れまくりやん。
袋なのでもともとは動物の革や内蔵で作った袋ですね。
こういうの。
これに色んな役目のPipe(管)を複数差し込めばバグパイプの出来上がり。
そしてこれが一番の問題になります。
バグパイプは特定の楽器の名前ではありません。
楽器の種類です。
だからバグパイプと言ったら即座にみなさんが思い浮かべるのはこういう光景だと思うのですが・・・
はい。もちろん大正解!!
でもこちらのパイプはバグパイプという種類の楽器で グレート・ハイランド・パイプという名前のバグパイプです。
この楽器そのものがバグパイプという名前の楽器ではありません。
もっとわかりやすく言えば、野菜の中に大根、人参、トマト等がある状態。
つまり
野菜 = バグパイプ
野菜の種類 = いろいろなバグパイプの固有の名前
という感じでだいたい伝わりましたでしょうか?
もう毎回、ハイランドパイプ以外のパイプを演奏しているとバグパイプみたいな楽器ですねぇ~と言われるので誤解を解くために書いてみました。
ここからはバグパイプについて色々。
バグパイプ以前
バグパイプが何故、袋に一旦空気を溜めてその空気を複数の管に同時におくる構造になったのか?を考えてみますと。
一旦、空気を溜めると息継ぎしなくてもバッグを押すとバッグに接続された管からは同時に音が鳴るんですよね。
原理的には10本繋げたら10個の音がなります。
袋に繋いだ管の数だけ鳴ります。※実際は空気の使用量考えたら10本以下ですが。
それも永遠に音が途切れること無く。
そりゃ嬉しいですねぇ。
一人で沢山の音が出せるので。
でもバッグを使わない場合は?
口から息を吹き込んで複数の音を鳴らす。そして永遠に音を出し続けようと思うと口に入るサイズの管と循環呼吸をしないと無理です。
実際には現代にもそれらの口を使ってバグパイプの様な音を出す楽器は幾つかの地域で生き残っていますよ。
こんな感じになりますね。
イタリアはサルディーニャ地方のシングルリード楽器です。
壮絶に美しい音楽だと思います。
ただ、こちらの様な演奏をしようと思うと 循環呼吸 もマスターしないといけません(慣れれば出来るようになりますよ(*^^*))
循環呼吸法(circular breathing)の練習方法
というわけでどうにかこれを簡単に代替えしたい?と思った解決策がバグパイプだったのじゃないかなぁ~なんて思います。
この二本立てチャンター(音階を作る管の事)の構造ってそのままサンポーニャに引き継がれてますね。
同じイタリアの。
普段耳にするパイプのイメージとは形も音も全然違ってるバグパイプですね。
piperscaffe.org
バグパイプ色々
自分は最初に演奏したのがアイリッシュ・パイプ、そしてノーサンブリアン・スモール・パイプ&スコティッシュ・スモール・パイプその間にセックピーパなんですが全く指使いが違います。
同じ構造の楽器(バック+パイプ)ですが面白いですね。
もちろん音色、音域、音階、何より嬉しい音の大きさも異なっています。
もう本当にバラバラ。
弦楽器であるギターが分化してもだいたいギターですがバグパイプの分化の仕方は映画、遊星からの物体X 並みに凄まじいのです。
この 遊星からの物体X って寄生した生物の遺伝子をドンドン吸収して新たな形状に進化する生命体の話でかなり怖いです。
ついでなのでちょっと動画も観てみましょうか?
※怖い系が苦手な方は観ないほうが良いかもしれません^^;
こんな、遊星からの物体X ライクな楽器がバグパイプです。
ただ、幾つかのパターンはあってハイランドパイプに近いエリアだと同じ指使いで音やサイズが異なったパイプもあります。
でもすぐ隣のアイルランドのアイリッシュパイプやノーサンバーランドのノーサンブリアンスモールパイプは全く違った運指になります。
音の強さや音域ももちろん全く違っていますし。
そう、バグパイプ族って伝わった地方の音楽や文化を吸収しまくって変異した遊星からの物体X みいな楽器なんですよね。
形状もメチャメチャだし(ちゃんと機能的なんですが他の楽器から比べるとかなり変)
有る意味、生物的な形状のモノも有りますし。
人から人に伝搬する間にドンドン改良されたんでしょうね。
ワンコの種類が沢山あるイメージでもわかりやすいかもしれませんね。
諸説ありますがワンコって元々、数箇所で家畜化されていた狼がその土地や時代、文化に合う様に改造されていったみたいに。
ただパイプの場合は改造されたはずのパイプがその元となった音楽や文化自体にまで影響を与えるようになったり。
関係性が面白いですね。
色んなパイプだよ
great highland pipes (ハイランドパイプ)
スコットランドを原産地として今では世界中で演奏されているバグパイプです。
大方の方はこのバグパイプ(グレートハイランドパイプ)をバグパイプそのものと思われているかもしれませんね。
マーチでおなじみの曲を演奏しているだけがハイランドパイプではありませんよ。
壮大な構成を持つピーブロックからダンスミュージック。そしてトランス・ミュージックにまで使用されています。
border pipes (ボーダーパイプ)
ハイランドパイプと運指も奏法も全く同じ。
ただし音程は他の楽器と一緒できる、Aが主。
更に音量もハイランドパイプ程大きくなく室内でも演奏可能。
と言っても私もこちらのパイプを持ってますが一般的なお店の中では演奏できません。
特にカフェ等では。
おきゃくさんを難聴にして帰宅させるのは酷い話ですから。
ハイランドパイプには及ばずとも国内の室内で演奏するにはかなり無理がある音量かもしれません。
scottish small pipes(スコティッシュスモールパイプ)
ハイランドパイプと運指も奏法も全く同じ。
ただし簡略化して演奏される場合も有り。
あと、ハイランドパイプ、ボーダーパイプでは出せるクロスフィンガーリングによるCナチュラル、Fナチュラル、G#等の音は出せません。
曲により指穴をテーピングし半音を出します。
音程は他の楽器と一緒できる、Aが主ですが他にもC、D、F、G等各種あり。
※動画はCのスモールパイプを演奏されています。
更に音量はアイリッシュパイプより小さいくらいなので気兼ねなく室内で演奏可能。
私もカフェ等の演奏ではこちらのパイプを使用しています。
uilleann pipes (アイリッシュパイプ)
音色もハイランドとは全く違いますね。
音域も違いますし。装飾音の使い方も全く違う。
音域はホイッスルと同じ。
Northumbrian Small Pipes(ノーサンブリアンスモールパイプ)
こちらはGキー。
本来のノーサンブリアンスモールパイプはFより少し高いF#位のキーのパイプですが今ではこちらのGキーもポピュラーになってますね。
理由は他の楽器と一緒できるから。
で、音ですが他のパイプと全く違ってて一つ一つの音が全て切れていますね。
音域はキーを使用すると2オクターブ以上のフルクロマチック。
まるでポリフォニックシンセサイザーのような音になります。
hummelchen (ヒュンメルヒェン)
ドイツやヨーロッパで使用されているリコーダーライクな運指を持っています。
やはり中世の音楽が似合いますね。
非常に人気のバグパイプですよ。
sackpipa (セックピーパ)
こちらはスウェーデンのバグパイプです。
こちらもシンプルながら物凄い仕掛けのあるパイプなんですよ。
オープンエンド(チャンターの後ろが空いている)なのに何故か音が止まってる様に聴こえる事がパイプやってる人なら不思議に思うはず。
思わない? 思ってください
Gaita Gallega (ガイタ・ガレガ)
最初、テレビやラジオで流れてきたときにはメチャメチャ嬉しかったなぁ~
スペインのアストリア地方で 受け継がれてきたバグパイプ。
オーバーブロウ(強くバックを押す)で2オクターブ目の音も出すことが出来き更に半音階も出せたりとバグパイプ界においては
かなり自由度の高いパイプです。
近年では色々なジャンルで使用されていますね。
Gida (ガイタ)
ブルガリアのバグパイプ。
ブルガリアの音楽は超変拍子で更に半音使いまくるのでそういう音楽に特化した音が出る構造になっていますね。
他のパイプではクロスフィンガリング(指を飛び飛びに押さえる抑え方)や物理的なキー装置を使用しないと出ない半音も出しやすいです。
って感じで色々書いてきましたがお好みのパイプは有ったでしょうか?
バグパイプの魅力は演奏している感が半端ないって事でしょうか。
他の楽器はあくまでも楽器を鳴らしているという感じなのですがパイプを演奏すると身体の一部が分化して音を出している感覚になります。
バグパイプって音を出すとき凄まじくその振動が演奏者に伝わってくるんですよね。
その鼓動を感じながら演奏する感覚に取り憑かれると他の楽器では物足りなくなってしまうというか。
それは機能的にバグパイプが恐ろしく制限のある楽器で出来ることが限られているとしてもです。
もしバグパイプにふれる機会があれば触らせてもらうと良いかと思います(^_-)
でわでわ😊
PS:
もしバグパイプに興味を持たれたらハイランドパイプの場合、先ずは指使いの練習が必要になるのですがいきなり本物のハイランドパイプは1000%音も出せません。
最初は練習用の
と呼ばれる練習管で練習してからですね。