大金塊―少年探偵 (ポプラ文庫クラシック)/ポプラ社

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 今日、ストーブを出しました。管理人です。
北のほうではもうとっくにストーブを出しておられるのでしょうか。ヴィクトリア時代の生活を夢見る管理人は電子暖炉がほしいのですがちょっとお高いので今年はストーブで我慢しようと思います。

 本日の本は江戸川乱歩の少年探偵シリーズ『大金塊』です。
いわゆる本の虫!とおっしゃる方は、かなりの確率で小学校のときに少年探偵シリーズを読んでいたなんて話をどこかで聞いた気がします。
 私も本の虫ではありませんが、小学校の図書館にあったこのシリーズを読んでいました。一番好きだったのは『海底の魔術師』。おどろおどろしい海の魔人と沈没船に隠された宝という王道のお話に興奮し、海底の描写を何度も何度も読み返していた記憶があります。

 今回は宮瀬家に伝わる財宝をめぐるお話。
父親が不在のため、小学6年生の宮瀬不二夫君が家人たちと留守番をしていたある夜、宮瀬家に賊が忍び込み一枚の紙切れを奪っていきます。それには、現当主の鉱造氏の先祖が残した財産の隠し場所を示す暗号が書かれていました。しかし、用心深い鉱造氏は暗号の半分を自分の指輪に隠していたため賊はもう半分の紙を奪うために、不二夫君の誘拐を企てます。

 しかし、名探偵明智小五郎は一計を案じ、小林少年を不二夫君に変装させ敵のアジトに潜入させます。小林君は盗まれたもう片方の暗号を奪い返すという大活躍。二つの紙を合わせてみるとこんな暗号が浮かび上がってきました。

『ししがえぼしをかぶるとき からすのあたまの
 うさぎは三十 ねずみは六十 いわとのおくを さぐるべし』

 さて、この暗号はいったいどこを指し示しているのでしょう。
一度童心に返ったつもりで、続きを読んでみてください。忘れかけていたどきどきワクワクの冒険心がよみがえってくること間違いなしです。

 このシリーズは『K-20』という怪人二十面相の映画ができたときに文庫になっているようです。また全部読みたくなっちゃったな~。
 そういえば読み返していて少し驚いたのが小林少年の年齢と身長。小林少年は少なくとも中学生以上で、身長が女性位には高い。私のイメージではちびっこい小学生だったんですけど……小林君結構大きかったんだな……まぁしっかりしてるもんな……。
孤高の人〈上〉 (新潮文庫)/新潮社

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孤高の人〈下〉 (新潮文庫)/新潮社

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 ダイエットのためにウォーキングを始めたら逆に太ってきてしまいました。管理人です。
だいたい仕事帰りに3km3500歩ほど歩いていたのですが、どうやら痩せるには1日10000歩は歩かないといけないようですね。甘かった。

 本日の本、『孤高の人』の主人公である加藤文太郎は山登りのトレーニングをするために池田上町から和田岬の仕事場まで歩いて通勤していた猛者です。ルート検索ソフトでどれくらいの距離か試しに見てみたのですが池田上町1丁目から和田岬駅までだと4.2kmほどだそうです。あ、あれ……意外と近い……?まぁでも毎日毎日というとやっぱり大変ですし、リュックに石なんて入れたらやっぱり普通の人には無理だなぁと思います。

 加藤文太郎は和田造船所で技師にまで成り上がった仕事人でありました。しかし外山三郎や新納という男の影響で山の魅力にとりつかれ「いつかはヒマラヤをやる」という壮大な目標のためにその人生をささげた男でした。恐ろしいほどの足の速さと、誰ともパーティを組まずたった一人で山に入るスタイルを貫き「単独行の加藤」と半ば伝説のような存在になっていきました。

 『孤高の人』というタイトル通りこの時期の加藤さんには「孤独学」なるものを教えられた気がします。「あいつらは孤独が怖いから群れる。大きな目標達成の前には切り捨てなきゃいけないものがある」という旨の発言があるのですが、くそぼっちを貫いて生きている管理人はこの言葉に非常に励まされました。ぼっちでも野望があればいいじゃないか!!よく言った!!!コミュ障すぎて半笑いしちゃうところとかもうボッチあるあるすぎて笑っちまった!!!だってね!引くよね!!会社の同僚がリュックに岩つめて、自宅の前の庭で野宿してたら引くよね!!!!

 山歩きにおいて独自のスタイルを追求していった加藤は次第に冬の山の魅力に取り付かれていきます。そして、「なぜ山に登るのか?」という問いを胸に山に登り続けます。何度も九死に一生を得ながらもその超人的な体力でピンチを切り抜けていくのです。この冬山の描写はさすが山岳小説家といわれるだけあるなぁと思います。まるで開いた本から雪が頬に吹き付けて来ているんじゃないかと錯覚するくらいうまいのです。

以下物語の結末に触れています

 さて、こんな単独行の加藤さん。彼こそぼっち神だ!!!と管理人は大喜びで読んでいたのですが、彼、結婚しちゃいます。かつて子供のころに鼻緒を変えてあげたかわいこちゃんと。

うらぎられたああああああああああああ!!!

 リア充しちゃってるよ!!!!あんなに笑顔苦手だったのに同僚とうまくやってんじゃん!!!いいパパになっちゃってんじゃん!!!!何が孤高の人だこのやろおおおおおお!!

 いないんだ……孤高の人なんてどこにも居ないんだ……。

 あ、しかも山登りも誰かとペアで行くんだ……あ、宮村くん。あ、…そ。

 しかし、この山登りが彼の短い生涯に幕を下ろすきっかけとなってしまうのでした。誰かとペアを組むというのは大いに助けになる代わりに誰かに頼ってしまって個々の判断力を鈍らせるというのは確かにありますよね。しかも今回のペアを組んだ宮村くんは先日大失恋をしたばかりで通常の精神状態じゃないんです。もうね、こいつさえ居なけりゃよかったのに!!!フラグ立てんなお前!!と心の中で罵っておりました。

 二人が大雪の中で衰弱し、真っ白な雪の中で倒れる様は泣けたというよりも心底ぞっとしました。あー、人ってこんなにあっけなく死んでしまうのだなぁと。この小説を読んで山に登りたくなったという感想をちらちら目にするのですが、管理人は絶対嫌だなと思いました。

 もちろんこれは小説ですから、最後の時をどのように迎えたのかは実際にはわかりません。小説の中では宮村さんは非常識な困ったやつという書かれ方をしていますが、加藤はかれを「山友達」と親しげに呼んでいたということから実際はもっと違った関係だったのかもしれません。
陰翳礼讃 (中公文庫)/中央公論社

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 みなさんこんにちは。
最近体重が増えてしまったので昨日はプールに行ってトレーニングしてきた管理人です。でも水泳って実はあんまり痩せないそうですね。動いた分食べてしまうからかな。冷え性の人にもあまりよくないですよね。私もジャグジーばっかり入ってました……。

 本日の本は谷崎潤一郎『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』です。
ざっくり言うと、影をほめたたえよ~ハレルヤ!ということですね。
谷崎潤一郎さんって私の中ではエロ作家というイメージがなぜかありまして、『痴人の愛』『卍』というタイトル=人妻と不倫してくんずほぐれつという想像をしてしまっていました。

 谷崎潤一郎さんおよびご家族ご関係者の皆さん大変失礼いたしました……。

 気を取り直して。本書には谷崎さんの書く小気良いエッセイが6本収録されています。私の目当てはもちろんタイトルの『陰翳礼讃』。こちらがレトロな暮らしを体現するスチームパンカーには必読の書であるとお聞きしたので読んでみました。

①陰翳礼讃

 最近でこそ北欧家具などが人気で、ナチュラルな部屋作りが話題になっていますけれどもやっぱり基本的にはシュッとしたモダンな部屋に住んでらっしゃる方が多いんじゃないでしょうか。壁や家具や家電はすべて白、もちろんMacも白、そして蛍光灯。
 一見するとすっきりしていて住みやすい部屋に見えるのですが、ちょっと待てよと。明るすぎやしませんかと。谷崎潤一郎はなんと今から80年前にそんなことを思っていたようです!

 新しく家を作ることになった谷崎さん。当時のことですからもちろん日本家屋を作ろうとされたようなのですが、そのころにすでに実用品になっていた電話や旋風機などの家電のコードが日本家屋に合わないとご立腹。確かにコードって生活観でちゃいますよね。わかりますわかります。屏風に隠したり梯子で隠したり苦心惨憺しておられます。

 そんなところから谷崎さん。そもそもね、日本人は一点の翳りもない真っ白さなんてのは似合わないんだと言い出します。部屋には影があってしかるべきだと。その空間でしか分からないよさがたくさんあるぞと。
 例えば芸者さんのつける笹紅。金緑色にぎらぎら光る口紅なのですが、あんなもんは蛍光灯の下で見ちゃあいけないんですよね。暗い中にろうそくの光でぼうっと浮かび上がるから妖艶な魅力が出てくるわけです。他にも少しくすんだ金色や、日本人の肌色そのものも暗闇の中に浮かび上がってこそ美しく見えるのです。


 その美的感覚は日本人の陰りのある肌の白さに由来するのではないかと、谷崎さんはおっしゃっています。白人は完璧な肌の白さを持っていますから、ちょっとでも翳があると許せない。黒人の血がちょっとだけ入った人間を差別するのはそのせいなんじゃないかと。でも日本人はやっぱり黄色いというか、くすんだ色をしていますから、逆にその翳をどううまく見せるかを考えたのではないかと。

 ちょっと意見に偏りがあるかな……?とは思うのですが、確かに言われてみればそんな気もします。スマホにパソコン電子機器の光の洪水に疲れてしまったあなた、一度電気を消してみてはいかがですか?

②懶惰(らんだ)の説

 日本人は怠ける民族だから!!!
とあまり今では聞かない説を唱えているエッセイです。怠けるというよりかは、これも陰翳礼讃と同じで「そんなに白く清く美しくしなくていいんじゃないの?」という話ですね。
綺麗でありたい、若くありたい、そんな願いを現実にできる現代。必要以上に痩身にはげみ、歯並びの悪いものは貧乏人の烙印を推され、広告はアンチエイジングを歌う……。谷崎さんの時代にはアメリカがそのような文化を先駆けていたようですね。
 でもねと、いいんじゃないの?歳をとってもと。歳をとって出てくる渋みも味だよねということなんですね。確かにこれには賛同しますね。もちろん自堕落に生きるのは良くないとは思うのですが、あまりに若さや美にとらわれすぎて、若くない・美しくないものをダメだと思い込んでしまっている気がします。

③恋愛および色情

 ここでは西洋と日本の恋愛の違いを。
平安時代に顔も知らない文通相手に結婚を申し込む男を引き合いに出し、「そもそも女ってのは男にとってはみんなひとつの『女』にすぎないから」とのたまう谷崎さん。男性の方はそうなんでしょうか。ひとつの理想の「女」というものがあって、実際に居る女性もその女として理想化してみてしまうものなのでしょうか。
 恋愛の話も興味深く読んだのですが、芸術の話も面白かったです。西洋の芸術は「前人未到の美しき美を独創する(引用)」でしたが、日本は「古えの詩聖や歌聖が至り得た境地へ、自分も到達すること(引用)」だというんですね。だとすると日本人は決して古の人を超えることはできないのですが、十把一絡げの学校教育はこういう精神の名残なんでしょうか。

④客ぎらい

 とにかく人と会うの嫌!!!引きこもってたいから!!マジデ!という谷崎さんの心の叫び。あと質素な日本食食べたいという叫び。

⑤旅のいろいろ

 年末年始、旅に出られる方も多いのではないでしょうか。
旅って楽しいんですけどなんか疲れちゃいますよね。仕事が終わって急いで荷物を持って空港へ、現地でひとしきり楽しんだらまた飛行機で急いで日本へ。日本についたら重いスーツケースを持って特急で家まで帰る……なんだかせかせかしているものでございます。
 このエッセイには谷崎さんの旅行観が書かれています。三等列車のような今ではあまりなじみのない旅の風景を味わうことができますよ。

⑥厠のいろいろ

 下ネタとか大好きな管理人はこの章が一番楽しかったですね。
一遍まるまるトイレとウ○コの話ですよ奥さん!!!!
一番笑ったのが倪雲林(げいうんりん)という人のトイレの話。この人のトイレには蛾の翅が敷き詰められていたようなんです。大きいほうを落とすと、翅がパッっと舞ってすぐに隠してくれるんですね。

 いる????その演出いる??????たかだかウ○コに???

 他にも厠は草木の見えるところに配すべしなど谷崎さんこだわりのトイレ論を読むことができます。おススメ。