陰翳礼讃 (中公文庫)/中央公論社

¥514
Amazon.co.jp

 みなさんこんにちは。
最近体重が増えてしまったので昨日はプールに行ってトレーニングしてきた管理人です。でも水泳って実はあんまり痩せないそうですね。動いた分食べてしまうからかな。冷え性の人にもあまりよくないですよね。私もジャグジーばっかり入ってました……。

 本日の本は谷崎潤一郎『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』です。
ざっくり言うと、影をほめたたえよ~ハレルヤ!ということですね。
谷崎潤一郎さんって私の中ではエロ作家というイメージがなぜかありまして、『痴人の愛』『卍』というタイトル=人妻と不倫してくんずほぐれつという想像をしてしまっていました。

 谷崎潤一郎さんおよびご家族ご関係者の皆さん大変失礼いたしました……。

 気を取り直して。本書には谷崎さんの書く小気良いエッセイが6本収録されています。私の目当てはもちろんタイトルの『陰翳礼讃』。こちらがレトロな暮らしを体現するスチームパンカーには必読の書であるとお聞きしたので読んでみました。

①陰翳礼讃

 最近でこそ北欧家具などが人気で、ナチュラルな部屋作りが話題になっていますけれどもやっぱり基本的にはシュッとしたモダンな部屋に住んでらっしゃる方が多いんじゃないでしょうか。壁や家具や家電はすべて白、もちろんMacも白、そして蛍光灯。
 一見するとすっきりしていて住みやすい部屋に見えるのですが、ちょっと待てよと。明るすぎやしませんかと。谷崎潤一郎はなんと今から80年前にそんなことを思っていたようです!

 新しく家を作ることになった谷崎さん。当時のことですからもちろん日本家屋を作ろうとされたようなのですが、そのころにすでに実用品になっていた電話や旋風機などの家電のコードが日本家屋に合わないとご立腹。確かにコードって生活観でちゃいますよね。わかりますわかります。屏風に隠したり梯子で隠したり苦心惨憺しておられます。

 そんなところから谷崎さん。そもそもね、日本人は一点の翳りもない真っ白さなんてのは似合わないんだと言い出します。部屋には影があってしかるべきだと。その空間でしか分からないよさがたくさんあるぞと。
 例えば芸者さんのつける笹紅。金緑色にぎらぎら光る口紅なのですが、あんなもんは蛍光灯の下で見ちゃあいけないんですよね。暗い中にろうそくの光でぼうっと浮かび上がるから妖艶な魅力が出てくるわけです。他にも少しくすんだ金色や、日本人の肌色そのものも暗闇の中に浮かび上がってこそ美しく見えるのです。


 その美的感覚は日本人の陰りのある肌の白さに由来するのではないかと、谷崎さんはおっしゃっています。白人は完璧な肌の白さを持っていますから、ちょっとでも翳があると許せない。黒人の血がちょっとだけ入った人間を差別するのはそのせいなんじゃないかと。でも日本人はやっぱり黄色いというか、くすんだ色をしていますから、逆にその翳をどううまく見せるかを考えたのではないかと。

 ちょっと意見に偏りがあるかな……?とは思うのですが、確かに言われてみればそんな気もします。スマホにパソコン電子機器の光の洪水に疲れてしまったあなた、一度電気を消してみてはいかがですか?

②懶惰(らんだ)の説

 日本人は怠ける民族だから!!!
とあまり今では聞かない説を唱えているエッセイです。怠けるというよりかは、これも陰翳礼讃と同じで「そんなに白く清く美しくしなくていいんじゃないの?」という話ですね。
綺麗でありたい、若くありたい、そんな願いを現実にできる現代。必要以上に痩身にはげみ、歯並びの悪いものは貧乏人の烙印を推され、広告はアンチエイジングを歌う……。谷崎さんの時代にはアメリカがそのような文化を先駆けていたようですね。
 でもねと、いいんじゃないの?歳をとってもと。歳をとって出てくる渋みも味だよねということなんですね。確かにこれには賛同しますね。もちろん自堕落に生きるのは良くないとは思うのですが、あまりに若さや美にとらわれすぎて、若くない・美しくないものをダメだと思い込んでしまっている気がします。

③恋愛および色情

 ここでは西洋と日本の恋愛の違いを。
平安時代に顔も知らない文通相手に結婚を申し込む男を引き合いに出し、「そもそも女ってのは男にとってはみんなひとつの『女』にすぎないから」とのたまう谷崎さん。男性の方はそうなんでしょうか。ひとつの理想の「女」というものがあって、実際に居る女性もその女として理想化してみてしまうものなのでしょうか。
 恋愛の話も興味深く読んだのですが、芸術の話も面白かったです。西洋の芸術は「前人未到の美しき美を独創する(引用)」でしたが、日本は「古えの詩聖や歌聖が至り得た境地へ、自分も到達すること(引用)」だというんですね。だとすると日本人は決して古の人を超えることはできないのですが、十把一絡げの学校教育はこういう精神の名残なんでしょうか。

④客ぎらい

 とにかく人と会うの嫌!!!引きこもってたいから!!マジデ!という谷崎さんの心の叫び。あと質素な日本食食べたいという叫び。

⑤旅のいろいろ

 年末年始、旅に出られる方も多いのではないでしょうか。
旅って楽しいんですけどなんか疲れちゃいますよね。仕事が終わって急いで荷物を持って空港へ、現地でひとしきり楽しんだらまた飛行機で急いで日本へ。日本についたら重いスーツケースを持って特急で家まで帰る……なんだかせかせかしているものでございます。
 このエッセイには谷崎さんの旅行観が書かれています。三等列車のような今ではあまりなじみのない旅の風景を味わうことができますよ。

⑥厠のいろいろ

 下ネタとか大好きな管理人はこの章が一番楽しかったですね。
一遍まるまるトイレとウ○コの話ですよ奥さん!!!!
一番笑ったのが倪雲林(げいうんりん)という人のトイレの話。この人のトイレには蛾の翅が敷き詰められていたようなんです。大きいほうを落とすと、翅がパッっと舞ってすぐに隠してくれるんですね。

 いる????その演出いる??????たかだかウ○コに???

 他にも厠は草木の見えるところに配すべしなど谷崎さんこだわりのトイレ論を読むことができます。おススメ。