バーナム博物館 (白水uブックス―海外小説の誘惑)/白水社

¥1,188
Amazon.co.jp
みなさんこんばんは。
もうすっかり寒いですね。町はクリスマス一色です。みなさんクリスマスのご予定は決まりましたか?管理人にはもちろん男の影などあるはずもなく、家で楽しくミステリーを読んで過ごすことになりそうです。うるせぇ!!泣いてねぇよ!!!!!
本日の本はスティーヴン・ミルハウザー『バーナム博物館』です。
バーナム博物館の、バーナムはP・T・バーナムというアメリカの興行師からつけられたようです。このバーナムという人物を形容するのに「ほら吹き」「胡散臭い」という言葉が使われるように、人をだまして面白がらせるのが得意な人物だったんだとか。サーカスや見世物小屋で一躍有名になったんだそうです。血液型占いなんかでよくあるような、誰にでも当てはまることを言って、占いが当たったように思わせる『バーナム効果』という言葉は、このバーナムさんからつけられているんです。まさにキングオブ胡散臭い!!!
本書はそんな奇妙で、胡散臭くて、でも思わず読まずにはいられないお話が10編収録された短編集です。
読んでいて思ったのが、とにかく描写がこまかい!!!大体の小説って読者が創造しやすいポイントだけ抑えてあとは読者の想像に任せて話の本筋に入るものだと思うんですけど、この作品は建物の構造、扉の位置、壁紙や置いてある調度の色、すべてに綿密な描写があるんです。作者さんは多分建物に詳しいんでしょうね。最初は読みにくいな~と思ったのですが、この細かい描写があってこそ奇妙な空間がしっかり表現できるのだなぁと感じました。
以下一言ネタバレ感想
①シンバッド第八の航海
日本ではシンドバッドという訳のほうがメジャーかな?『千夜一夜物語』で七つの航海を終えて引退したはずのシンバッドが第八の航海をしていたら……というお話。引退したシンバッドと、シンバッド薀蓄と、第八の冒険が交互に切り替わるテンポのいいお話です。
シンバッド薀蓄によると、シンバッドのお話はいくつも訳が出ていて、同じ話のはずなのに端折られたり付け加えられたりしていてまったく別ものになっているそうですね。それだったら第八のお話があっても良いじゃんっていう発想なのかな。
②ロバート・ヘレンディーンの発明
イマジナリーフレンドという想像上のお友達がいるというお話はよく聞きますが、これは「彼女がいないなら自分で想像上の人間を作ってしまえば良いじゃない!!」というとんだ童貞アントワネットのお話です(すいません主人公が童貞かどうかは分かりません。全国の童貞の皆さん大変失礼いたしました)。わかるよー、わたしもねー中学のときはオリキャラとか作ってたよー黒歴史だね!!でもこの主人公はちょっとやそっとの想像では終わらなかったんですね。血管の一つ一つ、動作の大小まできっちりきっちり想像してしまったんです。最後には想像に飲み込まれて……幻想的な一遍。
③アリスは、落ちながら
ご存知『不思議の国のアリス』でアリスが落ちた穴が永遠に続いていたら……という興味深いお話。アリスは落ちながら、穴はどこまで続くのか、これは夢なのか考えます。あるときは心細くなり、あるときはまったく現実味が無くなり、それでもまだまだアリスは落ち続けているのです。ヴィクトリア朝スキーの管理人には調度の描写が美味しかったですね!!!!
④青いカーテンの向こうで
映画の中に入り込んでしまったら……というこれまた想像力たくましい少年の話。小さいときの映画館って独特な思い出ですよね。初めて味わう劇場の独特の空間。この少年はどうやらこちらの世界に戻ってくることができたようです。
⑤探偵ゲーム
クルーというアメリカの探偵ゲームを通して、プレイヤーである兄弟とその彼女がお互いの心の中を詮索しあうというユニークなお話。どうでもいいことなんですが、このクルーというゲーム、英国ではクルードという名前で親しまれているんです。でね!!このクルードね!!私が大好きなシャーロックバージョンが出てるんですよ!!!!めちゃめちゃほしい!!!シャーロッククルードやりたい!!!でも一緒にやる友達いない!!!!
⑥セピア色の絵葉書
滞在先のホテルの近くにある古道具屋で手に入れたセピア色の絵葉書は、男女のいがみ合った姿を映した物だった……。なにもかもうまくいかない、雨で憂鬱で嫌な気分になるときってありますよね。
⑦バーナム博物館
バーナム博物館案内ともいえる本作。バーナム博物館は一言で言えばぐちゃぐちゃ。建築もばらばらで、部屋の数すら判然としない、置いてあるものは古今東西から集められた統一性の無い奇妙なものばかり。その様子を、詳細に記録したブンダーカンマー好きに捧げたい作品。作者さんの頭の中には、本当にバーナム博物館に言ったときの記憶が残っていて、それを思い出しながら書いたんじゃないかしらというくらい詳しいです。これを元に誰か建ててくれないかしら、バーナム博物館。
⑧クラシック・コミックス #1
これよく分からなかったのだけど、どうやらT・S・エリオットの「J・アルフレッド・ブルーフロックの恋歌」という詩を漫画化し、さらにその漫画を文字で説明したものらしい。こ、これ絵で見たいんですけど……。
⑨雨
これいまいちよく分からない。洪水のようなものすごい雨に存在がにじみ、流されてしまう幻覚を見た男のお話。
⑩幻影師、アイゼンハイム
これ映画になってます!!!!管理人の大好きなエドワード・ノートン先生がアイゼンハイムやってらっしゃいます!!!かっこいい!!かっこいい!!19世紀末のウィーンで一人の幻影師が名を上げて、そして忽然と自らの姿を消してしまうまでのお話。19世紀末ヨーロッパスキーだからもちろん美味しくいただきました。
オレンジの木がにょきにょき生えて、婦人のハンカチを蝶が持ってくるくだりなんかは映画でとても美しく再現されていましたね。映画はこの作品にプラスして恋愛ストーリーを絡めてきてるので、幻影感はちょっと薄れているのですが、本書は煙のごとく消えた男の不思議さが強く伝わってくる仕上がり。特に、悲惨な戦争が始まる前に姿を消したっていうのが印象的な余韻になっています。
このアイゼンハイム!なんと連続ドラマ化が決定しております!ノートン先生は多分でないんだろうけど。とっても楽しみ。舞台がニューヨークになってしまっているそうですけど……。
最近幻想小説を読んでいなかったので大変楽しく読めました。
1990年に書かれたお話なんですけど、19世紀末の雰囲気を纏ったお話が多くて個人的にうれしかったです。

¥1,188
Amazon.co.jp
みなさんこんばんは。
もうすっかり寒いですね。町はクリスマス一色です。みなさんクリスマスのご予定は決まりましたか?管理人にはもちろん男の影などあるはずもなく、家で楽しくミステリーを読んで過ごすことになりそうです。うるせぇ!!泣いてねぇよ!!!!!
本日の本はスティーヴン・ミルハウザー『バーナム博物館』です。
バーナム博物館の、バーナムはP・T・バーナムというアメリカの興行師からつけられたようです。このバーナムという人物を形容するのに「ほら吹き」「胡散臭い」という言葉が使われるように、人をだまして面白がらせるのが得意な人物だったんだとか。サーカスや見世物小屋で一躍有名になったんだそうです。血液型占いなんかでよくあるような、誰にでも当てはまることを言って、占いが当たったように思わせる『バーナム効果』という言葉は、このバーナムさんからつけられているんです。まさにキングオブ胡散臭い!!!
本書はそんな奇妙で、胡散臭くて、でも思わず読まずにはいられないお話が10編収録された短編集です。
読んでいて思ったのが、とにかく描写がこまかい!!!大体の小説って読者が創造しやすいポイントだけ抑えてあとは読者の想像に任せて話の本筋に入るものだと思うんですけど、この作品は建物の構造、扉の位置、壁紙や置いてある調度の色、すべてに綿密な描写があるんです。作者さんは多分建物に詳しいんでしょうね。最初は読みにくいな~と思ったのですが、この細かい描写があってこそ奇妙な空間がしっかり表現できるのだなぁと感じました。
以下一言ネタバレ感想
①シンバッド第八の航海
日本ではシンドバッドという訳のほうがメジャーかな?『千夜一夜物語』で七つの航海を終えて引退したはずのシンバッドが第八の航海をしていたら……というお話。引退したシンバッドと、シンバッド薀蓄と、第八の冒険が交互に切り替わるテンポのいいお話です。
シンバッド薀蓄によると、シンバッドのお話はいくつも訳が出ていて、同じ話のはずなのに端折られたり付け加えられたりしていてまったく別ものになっているそうですね。それだったら第八のお話があっても良いじゃんっていう発想なのかな。
②ロバート・ヘレンディーンの発明
イマジナリーフレンドという想像上のお友達がいるというお話はよく聞きますが、これは「彼女がいないなら自分で想像上の人間を作ってしまえば良いじゃない!!」というとんだ童貞アントワネットのお話です(すいません主人公が童貞かどうかは分かりません。全国の童貞の皆さん大変失礼いたしました)。わかるよー、わたしもねー中学のときはオリキャラとか作ってたよー黒歴史だね!!でもこの主人公はちょっとやそっとの想像では終わらなかったんですね。血管の一つ一つ、動作の大小まできっちりきっちり想像してしまったんです。最後には想像に飲み込まれて……幻想的な一遍。
③アリスは、落ちながら
ご存知『不思議の国のアリス』でアリスが落ちた穴が永遠に続いていたら……という興味深いお話。アリスは落ちながら、穴はどこまで続くのか、これは夢なのか考えます。あるときは心細くなり、あるときはまったく現実味が無くなり、それでもまだまだアリスは落ち続けているのです。ヴィクトリア朝スキーの管理人には調度の描写が美味しかったですね!!!!
④青いカーテンの向こうで
映画の中に入り込んでしまったら……というこれまた想像力たくましい少年の話。小さいときの映画館って独特な思い出ですよね。初めて味わう劇場の独特の空間。この少年はどうやらこちらの世界に戻ってくることができたようです。
⑤探偵ゲーム
クルーというアメリカの探偵ゲームを通して、プレイヤーである兄弟とその彼女がお互いの心の中を詮索しあうというユニークなお話。どうでもいいことなんですが、このクルーというゲーム、英国ではクルードという名前で親しまれているんです。でね!!このクルードね!!私が大好きなシャーロックバージョンが出てるんですよ!!!!めちゃめちゃほしい!!!シャーロッククルードやりたい!!!でも一緒にやる友達いない!!!!
⑥セピア色の絵葉書
滞在先のホテルの近くにある古道具屋で手に入れたセピア色の絵葉書は、男女のいがみ合った姿を映した物だった……。なにもかもうまくいかない、雨で憂鬱で嫌な気分になるときってありますよね。
⑦バーナム博物館
バーナム博物館案内ともいえる本作。バーナム博物館は一言で言えばぐちゃぐちゃ。建築もばらばらで、部屋の数すら判然としない、置いてあるものは古今東西から集められた統一性の無い奇妙なものばかり。その様子を、詳細に記録したブンダーカンマー好きに捧げたい作品。作者さんの頭の中には、本当にバーナム博物館に言ったときの記憶が残っていて、それを思い出しながら書いたんじゃないかしらというくらい詳しいです。これを元に誰か建ててくれないかしら、バーナム博物館。
⑧クラシック・コミックス #1
これよく分からなかったのだけど、どうやらT・S・エリオットの「J・アルフレッド・ブルーフロックの恋歌」という詩を漫画化し、さらにその漫画を文字で説明したものらしい。こ、これ絵で見たいんですけど……。
⑨雨
これいまいちよく分からない。洪水のようなものすごい雨に存在がにじみ、流されてしまう幻覚を見た男のお話。
⑩幻影師、アイゼンハイム
これ映画になってます!!!!管理人の大好きなエドワード・ノートン先生がアイゼンハイムやってらっしゃいます!!!かっこいい!!かっこいい!!19世紀末のウィーンで一人の幻影師が名を上げて、そして忽然と自らの姿を消してしまうまでのお話。19世紀末ヨーロッパスキーだからもちろん美味しくいただきました。
オレンジの木がにょきにょき生えて、婦人のハンカチを蝶が持ってくるくだりなんかは映画でとても美しく再現されていましたね。映画はこの作品にプラスして恋愛ストーリーを絡めてきてるので、幻影感はちょっと薄れているのですが、本書は煙のごとく消えた男の不思議さが強く伝わってくる仕上がり。特に、悲惨な戦争が始まる前に姿を消したっていうのが印象的な余韻になっています。
このアイゼンハイム!なんと連続ドラマ化が決定しております!ノートン先生は多分でないんだろうけど。とっても楽しみ。舞台がニューヨークになってしまっているそうですけど……。
最近幻想小説を読んでいなかったので大変楽しく読めました。
1990年に書かれたお話なんですけど、19世紀末の雰囲気を纏ったお話が多くて個人的にうれしかったです。