プロカウンセラーの聞く技術/創元社

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 シーツを本当に久しぶりに洗濯しました。2ヶ月ぶりくらい……?
掃除機かけたりはしてたんですが、なんか週末忙しいのと天気が悪い日が続いたのでなかなか洗濯できませんでした。はいはい、汚部屋住人の言い訳言い訳……。
 私は両親ともに掃除をまったくしない環境で育ったので、最近本を読んで学習するまで掃除洗濯がまったくできませんでした。洗濯物のたたみ方すら本で勉強しました。多分母親が寝ているベッドのシーツは5年以上洗っていないのではないかと思います。自分が家事のできないことを環境のせいにするのは大人のやることではないので、周りの人たちからはずいぶん遅れていますが少しずつ真人間になっていきたいと思います。

 本日の本は東山紘久さん『プロカウンセラーの聞く技術』です。

 管理人は友達がまったくおりませんので、コミュニケーション能力がまったく発達しないまま大人になってしまいました。いわゆる空気読めないってやつです。人の話がうまく聞けないんですね、自分の話しばっかりしちゃって。相手の話を聞いているようでいて、いつの間にか自分のペースに話を持って言っちゃう人っていませんか。あれ私です。
 これではいかんと。いつまで「コミュ障ですwwwふひwww」って自己正当化して相手に甘えているんだと。できないなら勉強して練習すればいいだけのこと!!そこで本書を読みました。

 これまでも人の話を聞くときに粗相の無いように自分ルールを設けてはいたんです。
・相手のことを否定しない
・「だって」「でも」「だけど」などDから始まる否定の言葉を使わない
・相槌は大げさに。相手の話に興味を持っていることが伝わるように等

 本書はこういったすぐに使えるテクニックが31個収められています。
気になったものや役立ちそうなものをいくつかご紹介。

・昔の主婦は聞き上手

 近所づきあいの希薄な最近では見かけなくなりましたが、主婦の井戸端会議ってありましたよね。あれって表面的で無駄なお話をしているだけで何の解決にもなっていないものだなぁと私なんかは嫌悪していたのですが、実はものすごく高度なテクニックを必要とするものだったんです。
 ひとつは「話題を必要以上に深化させないこと」。ただの愚痴を「悩み」や「秘密」レベルにまで深く掘り下げてしまうと、「自分は悩んでいるんだ」と気づいてしまったり秘密を共有してしまうことになったりして気分が重くなります。ただの愚痴とそれに共感する主婦仲間、という構図を壊してはいけないのです。
 もうひとつはすべての主婦にボールが回るようにすること。誰かがしゃべりすぎてもしゃべらなさすぎてもいけない。普通の女子は学生時代にグループの中でこういうテクニックを身に着けるらしい。すごいなぁ、女子って。

・情報以外の助言は無用

 人に悩みを相談されたら、いろいろとアドバイスしてあげたくなるのが人情です。でもそこに自分の意見を挟みこんでも意味が無いんですね。「英語の勉強はしといたほうがいいよ~」って助言しても、はっきり言って子供には伝わりません。そうではなくて「年収いくらのひとはTOEICが平均で何点でね……」って情報を与えたほうが、話を聞いている人はその必要性を自分で判断できるはずです。アドバイスに私見は無用なんですね、なるほど。

・相手の話は相手のこと

 私はこれが区別できなくて良くいらいらしてしまうんです。どういうことかといいますと、例えば上司が「最近の若い子はあいさつもしっかりできなくてダメだね」と若手社員に愚痴をこぼしたとします。もちろん上司のほうは話しかけた若手社員をただの愚痴の対象としてしかみておらず、その人があいさつできないなんて言ってないんですね。でも、若手社員の気持ちになってみますと「自分はあいさつしっかりできるし(イラッ」と思うわけです。
 こういうときは、「あー、上司さんは若い人になにか腹を立てられるようなことをされたんだな」と自分から話題を切り離して聞くのがポイントだそうです。確かに相手の愚痴を全部自分に投影してたら気をつかってもてしゃーないですよね。

・ASKするなLISTENせよ

 これはちょっと難しい。会話をするとき、私は相手が黙ってしまったら必ず何かを尋ねてしまいます。でもASKするということは、相手が話す情報をこちらが指定してしまっているってことなんですよね。これでは相手が本当に話したいことや伝えたいことを聞くことはできません。高度なテクニックです。

 いかがでしょうか、話し上手な人には当たり前のテクニックかもしれませんが、「あ、自分にもそんな傾向あるかも……」と思った人もいらっしゃるのではないでしょうか。もっと会話を円滑にしたいなぁ、と思っている人におススメの一冊です。

 ゴールは自分が話して気持ちよくなることではなく、話した相手に気持ちよくなってもらうことなのです。
マザーレス・ブルックリン (ミステリアス・プレス文庫)/The Mysterious Press

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 先日NHkを見ていましたら、『読書ゼロ』の日本人が増えているという番組をやっていました。もう3年も本を読んでない!!という人も。番組内では大学生にとあるレポートを書かせることで、読書のもたらす焦点を絞った垂直的な思考と、インターネット等の膨大な情報群からネタを探す水平的思考の比較をやっていました。うーん、確かに浅い情報がいっぱいありすぎるとレポートの意見ってぶれちゃいますよね。わかる。
 でも仕方ないんじゃないかな~とも思います。大学生って忙しくないですか?知り合いの大学生の方を見ておりますと、平日は実験、サークル、休日はバイトで本をゆっくり読む時間ってないんじゃないかしら。社会人になったらなおさら、朝から晩まで仕事して、いつ本を読むんだって話ですよ。クソニート予備軍の自分だって読んでないけどさ!!

 できるようになりたいですね。深い垂直思考を。

 本日の本はジョナサン・レセム『マザーレス・ブルックリン』です。
人やものにやたらと触りたがる、チックが出る等の症状を伴うトゥレット症候群をもつライオネル・エスログは、フランク・ミナ探偵事務所の従業員。ある日、ボスであるフランク・ミナが何者かに無残に殺された。エスログは復讐を誓い、単独で捜査に乗り出すが……。

 以下ネタバレ感想

 これ訳者の人本当に大変だったんじゃないかな!!意味の無い言葉を並べ立ててしまうトゥレット症候群、作品の中では韻を踏んだユーモアある台詞として表現されています。訳者さん曰く、英語で韻を踏んだ面白さを再現するために直訳にはせずにそれっぽい言葉を選んで訳しているそうな。そんな苦労の甲斐あって、ミナも評価したエスログのユーモアが良く出ています。後半だんだん飽きてきて鬱陶しくなってくるけど。

 ざっと話をまとめると、フランク・ミナがやってた探偵家業っていうのは過去にフランクが犯した裏切り行為の埋め合わせのために組織がまわしていたクズみたいな仕事で、そのときに兄を売り飛ばしたお返しに、ゼンドーに傾倒してた兄ちゃんにぬっ殺されたってことでいいのかな。
 ものすごく評価が高い本作、でも私には泣きポイントがようわからんかったんよ……。多分トゥレット症候群というドギツイ性質を持つがゆえに俄かには伝わらないエスログの内面に共感して、その成長を読み取れたらもっと面白いんだろうなぁ。ちょっとゆで方が堅すぎて、自分には合わなかったなぁ。

 フランク・ミナとトニーとエスログとの対比もあまり前面に押し出されたテーマというわけではなかったし、他の従業員3人も何のためにいるのか良く分からなかったし……なんだろう、これが淡々と進む文学というものなのか……?寂れた雰囲気描写は大好きだっただけに読み取れてないのが悔しいよ~。ほかに読んだ人の感想聞きたいよ~。

 余談ですがこの作品はエドワード・ノートン先生がずーーーーっと映画化したいって言ってる作品で、今年末から本格的に動き出す予定なんですね。10年前に言い始めたときはノートン先生も35歳くらいですから、30歳あたりのエスログやっててもまぁ大丈夫かなと思ったんですが、もうノートン46歳じゃない???大丈夫??エスログできる???むしろもうミナの年齢になっちゃったんじゃない????撮影を急いでほしいと切に願います。
 
数奇にして模型 NUMERICAL MODELS S&M/講談社

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私事ですが、
生活必需品ではない。壊れて買い換えるのでもない。
でもほしい。贅沢品だけど、ほしい。
そういうものを見つけたときは、衝動買いをしないように「半年経ってもまだほしかったら買う」というルールを設けています。
昨日、そのルールに従って半年待っていたものが解禁になりまして、早速ブックマークしておいた通販サイトに行ってみたんですね。

燦然と輝く『SOLD OUT<<この商品は廃番です>>』の文字

のどの奥から変な声が出ました。管理人です。

 さて、本日の本は森博嗣『数奇にして模型』です。
今日丁度ドラマで解決編をやっていたみたいです。予告編を見たのですが、武井咲さんのコスチューム姿とてもかわいかったですねぇ。なんていうんだろう、あのコスプレ慣れしてないオボコイ感じが良いじゃないの。

 M工業大学で上倉裕子という大学院生が扼殺されているのが見つかった。彼女は社会人大学生の寺林という男と待ち合わせをしていたと見られ、彼に真っ先に容疑がかかった。しかし、彼は少し離れた場所にある模型交換会の会場で頭部を殴られて気絶しているところを発見された。なんと、女性の首なし死体と一緒に!!!!

 以下ネタバレ

 不謹慎ですが、首なし死体ってミステリー好きは燃えますよね。
もちろん密室のハウダニットを考えるのも面白いんですけど、私は「なぜ首を持ち去る必要があったのか」という問いが大好きです。作者さんがどんな意外な理由をもって来るのかに興味があるから。身元発見を遅らせるため?死体をすりかえるため?頭部に特徴的な凶器の証拠が残っちゃった?ノンノンノンそんなのナンセンス!!!森さんが用意した理由は

「型がとりたかったから!!!!!」

 ぶっとんでるーーーー!!この犯人いっちゃってるいっちゃってるー!!!!

 私は500円のガンダムプラモデルすら満足に作れなかった模型とは無縁の人間なので、形と型、型をとることによって過去の仕事ぶりを体感するとか言われてもまったくわかりません!!!

 しかしながら、だんだん型そのものよりも、型を取ること自体に興味を持ち始めて、そのうち生と死の境界を越えてしまう瞬間を見るのが好きになって……という感情はちょっと分かる気がします。物語中に執拗に、一人とそれ以外の境界への考察や、単純化することで安心したい思考の話が出てきますが、このお話って境界が曖昧な人がなんか多くないですか……?めっちゃインパクトがある大御坊さんはいわゆるオネエ系で男女の区別があいまい、殺された筒見紀世都は女性のように美しい外見を持った青年……これは意図したキャスティングなんでしょうか。たまたま目に付いちゃっただけ?

 あとは犯人の主張が、美青年の首の型取りたい!!→たまたまあった美少女の死体で練習しよ!!→あっ、でもなんか人殺すほうが楽しいかも!!→萌絵も殺したい!!ってどんどんぶれていくので、あまり魅力的な人物ではないなぁと思いました。このぶれ加減が彼を形容しているのだという記述もあったんですが、ぶれることと模型の本質とが何かリンクしているの……?教えて模型好きの人!!

 ラストで犀川先生が「萌絵の代わりに俺の等身大フィギュアを作れ!!!(台詞はイメージです)」っていうところが最も鼻息が荒くなったポイントなんですけど、どうでしょうか。私が犯人なら間違いなく先生の模り始めちゃいますけど。

 気持ち悪い感想になりましたが、お話を重ねるごとにキャラクターに魅力が増してきて、シリーズものの醍醐味を味わっている気がします。次でドラマは最後だそうですね、残念。