台湾や韓国のお寺で頂いたお経の本が何種類も手元にあって、漢字のお経部分を日本のものと比べてみると興味深い。
「無上甚深微妙法…」で始まる「開経偈」は日本を含めた三国に共通している上に、台湾や韓国のどの経本でも必ず読経の最初に上げることになっている。
⇒「ホームページアジアのお坊さん アジアの開経偈」をご覧ください。
一方で読経の最後に唱える「回向偈」は各国によって違いがある。ちなみに、日本でよく使われる「回向文」「回向偈」は次の2種類。
①
願以此功徳 普及於一切
我等與衆生 皆共成仏道
②
願以此功徳 平等施一切
同発菩提心 往生安楽国
①は法華経に出て来る文句で「法華成仏偈」とも呼ばれ、浄土系以外のほとんどの宗派で使われている。
②の「往生安楽国」の方は、浄土教を大成した中国の善導大師の著作に見える偈文であり、浄土系の宗派である日本の浄土宗や浄土真宗で使われている。
但し、天台宗は法華経や念仏を併修するので、①と②の両方ともを使っている。
また、念仏系であっても浄土宗や浄土真宗よりも早い時期に天台宗から分かれた融通念仏宗では、①の「皆共成仏道」の方を使う。
さて、台湾の経本を何冊か比べてみると、主に3種類の回向偈が見つかった。
阿弥陀経の後や極楽往生を願う供養のためのお経の後には以下のような回向偈が出て来る。
また、供養以外の経文の後には下のような偈文が載っていることもある。
また、経本の最後の奥付の頁などに経本全体の締めとして以下のような偈文が載っていることがあるが、こちらは日本の②の「往生安楽国」に少し似た文章だ。
なぜ日本以外の国で「皆共成仏道」や「往生安楽国」の偈文を見かけないのかという理由は不明なので、現在考察中です。
おしまい。