坊主川柳…業平旧跡 三河の八橋 | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

 

子供の時に「グラフィック版 竹取物語 伊勢物語」(世界文化社)の業平東下りの段の「水ゆく河の蜘蛛手なれば橋を八つ渡せるによりて八橋といひける」という箇所を読んで、一体どんな場所なのだろうかと想像を逞しくした(上の画像は同書より「奈良絵」の八橋図)。

 

それと同時に「か・き・つ・ば・た」という言葉を頭文字に据えた、

 

唐衣              からころも

きつつなれにし         きつつなれにし

つましあれば          つましあれば

はるばるきぬる         はるばるきぬる

旅をしぞ思ふ          たびをしぞおもふ

 

という機智に富んだ「折り句」にもいたく感銘を受けたことが、私がこのブログで、「各段落の頭文字を繋ぐと××となります」などと性懲りもなく書かせて頂く遠因となっている。

 

 

 

 

一度は訪れてみたかった八橋が往時の姿を留めていないことは聞いていたが、付近の地理や道路が妙に複雑で、八つ手蜘蛛手に広がっていた昔の湿地帯を埋め立てて出来た土地だからなのだろうかと、勝手に推測した。

 

 

 

その川のすぐ側に業平塚がある。

 

 

 

東下りの土地だけあって、近くには東海道が走っており、慈覚大師円仁東国巡礼の折の道筋でもあるのか、最寄りの知立神社には慈覚大師ゆかりの多宝塔が、神仏習合時代の名残りを留めていた。

 

 

 

 

子供の時に本を読んで旅に憧れ、長じてはお坊さんになってここに参拝できているご縁を有り難く思い、南無多宝塔中釈迦牟尼世尊と唱えつつ、「か・き・つ・ば・た」を折り込み詠んだ拙い狂歌、

 

頭文字       かしらもじ

機智に任せて    きちにまかせて

繋いでは      つないでは

初めて跡を     はじめてあとを

辿る八橋      たどるやつはし

 

 

                  おしまい。

 

※近くの無量寿寺のかきつばた園は初夏の3カ月間だけ開園するらしいのですが、季節外れのかきつばたが一輪だけ咲いていました。

 

※天台宗典編纂所発行の「円仁さん」巻末付録の、全国慈覚大師円仁ゆかりの寺院一覧表に、知立神社多宝塔は載っていませんでした(知立神社神宮寺の名残りである知立神社のお隣にある「総持寺」さんが、現在は同じ天台宗でも寺門派に属されているようです)。

 

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