アジアの五色幕 覚え書き | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

寄席や歌舞伎やお芝居なら定式幕、お葬式には鯨幕、祝い事には紅白幕と、幕にも種類があるけれど、お寺の法要でお堂に掛けるのは五色幕だ。いろんなお寺で法要の時にこの幕を本堂の回廊周りに張り巡らすのは行事のお決まりの風景で、私も小僧の時に「青・黄・赤・白・黒(しょうおうしゃくびゃっこく)」という色の順序の呼び方を覚えたものだ。

 

日本仏教におけるこの五色は青・黄・赤・白・黒の順序と決まっていて、これは密教の五色に由来するのだが、一方でチベット仏教で使用されるタルチョーという仏教旗の順序は青・白・赤・緑・黄と決まっているそうだ。私はチベット仏教にはさほど明るくないので詳しく判らないが、ただ、順序はともかくとして、密教であるチベット仏教の五色は、日本などの密教における五色と、本来、同じ由来なのだろうと思う。

 

1950年の世界仏教徒会議で定められた「仏旗」は黒の代わりに橙色が使われて青・黄・赤・白・橙となっており、その隣に全5色を縦に並べた縞模様が置かれているので、それを含めて「六色旗」などと表記されることもあるとは言え、ほぼ日本の五色幕と同じ色・並びになっている。

 

ちなみに、 wikipedia の「仏旗」の項には下のような画像が「日本の古くからの五色旗。京都の西本願寺の付近の店先で撮影」というキャプションと共に使われている。

 

 

勝手に画像を転載させて頂いた上で恐縮ながら、これは伝統的な五色旗ではなく、仏旗だと思う。浄土真宗の方は仏旗を使用される機会が多く、だからこそ本願寺の門前にも仏旗を立てておられるお店があるのであって、寺の門前で見た風景だからと言って、それを「古くからの」と決めつけるのは間違いだと思う。

 

 

かと言って、では仏旗ではなく、お寺の伝統的な五色幕がいつ頃から使われているのか、仏旗の創案以前にこの五色幕がいつ頃から使われていたのかを私は知らないので、なるべく早く資料や証拠を見つけてみたいと考えている次第。

 

               ※ちなみにこれは「仏旗」です。  

      

                                  おしまい。