クレイトン・ロースン「首のない女」のこと | アジアのお坊さん 番外編

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※各段落の頭文字を繋ぐと、「く・ひ・の・な・い・おん・な」となるように工夫しました。

 

 

クレイトン・ロースンの「首のない女」が、創元推理文庫ではなく原書房から2019年に新訳で出版されていることに、最近やっと気が付いた。

 

「棺のない死体」という、どちらかと言えば地味なロースン作品が創元推理文庫から2016年に復刊されたが、1950年代に創元で出ていた「首のない女」が、どうして先に復刊されないのかと訝っていたら、原書房から復刊されていたとは驚きだ。

 

後の日本に泡坂妻夫が登場するまで奇術ミステリ作家の最高峰と思われていたロースンだが、日本では最近何作かが復刊されたものの、多くの作品が絶版で、どれも入手が難しい時代が続いていた。

 

何十年も昔、自分がお坊さんになるなんて思ってもみなかった頃、私は奇術師になりたくて、松田道弘氏が「奇術のたのしみ」や「とりっくものがたり」に、ロースンの「首のない女」の中にブレインウエーブデックという奇術や、奇術大会の描写あると書いておられるのを読んで、この作品が読みたくてしょうがなかったものだ。

 

今初めてきちんと最初から読んでみて、ロースン作品にありがちな筋の不必要な複雑さだとか、或いは奇術、トリック、サーカスなどに関する蘊蓄が、「首のない女」に限っては、むしろ良い方向に作用して、「顔のない死体」テーマの優れたバリエーションであるメイン・トリックを、際立たせているように思う。

 

「女魔術師」という、やはりサーカスを舞台にしたボワロ&ナルスジャックの小説も、創元推理文庫で絶版になったままなのだが、こちら共々、創元での復刊を待っていたところ、まずは他社から読みやすい新訳が出てくれて、大変に喜んでいる。

 

何度も同じようなことばかり繰り返すけれども、江戸川乱歩の「探偵小説の謎」や「続・幻影城」における、古今の名作ミステリのトリックを解説した箇所にも、「首のない女」のことが出て来るのだが、乱歩は「この作品は近々訳される予定(注・当時の話)だから、トリックは伏せておくことにする」と書いていて、ああ、知りたい、知りたい、読みたい、読みたいと思っていた小学生の頃の夢がかなって、私は本当に幸せだ。

 

 

 

※各段落の頭文字を繋ぐと、「く・ひ・の・な・い・おん・な」となるように工夫しました。

 

※旧訳の「首のない女」を何年か前に一度、図書館で借りてみたことがありますが、訳が悪い上に本もボロボロで読み通せませんでした。

拙ブログ「クレイトン・ロースンと50セント銀貨」もご覧ください。

 

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