※各段落の頭文字を繋ぐと「し・しゃ・は・よ・み・が・え・る」となるように工夫しました。
新訳ラッシュの翻訳ミステリだが、今度はジョン・ディクスン・カーの「死者はよみがえる」が創元推理文庫から復刊された。
社会派ミステリとは対極にある、奇術趣味が横溢したカーの作風の中でも、「死者はよみがえる」は「違和感のある小さな謎」がいくつも合わさってラストで解き明かされる、ちょっと異色な味わいの作品だ。
初めてこの書名を知ったのは、やはり奇術研究家・松田道弘氏の「とりっくものがたり」からで、「新・カー問答」という章に(早川書房版の「死人を起す」というタイトルで)、この本のことが載っていた。
横溝正史のとある作品と「死者はよみがえる」のある部分についての共通性も、ミステリのトリックを解説したような本によく出て来たので、読みたいなと思っていた。
三重県の伊勢の町はずれを何年も前に通り掛かった時に、たまたま1軒の古本屋に立ち寄ったことがあって、創元版「死者はよみがえる」の旧訳が安価で売られていたので買ってみたが、訳が読みづらくてなかなか読めなかった思い出がある。
頑張って読み通したはずなのに、メイントリックすら覚えていない。他の翻訳ミステリに関しても、最近、新訳が出る度に以前の訳で読んだ印象が全くないことに気づき、訳が悪かったのか、自分の読解力がなかったのかと、考えることがしばしばだ。
江戸川乱歩が「カー問答」で「死者はよみがえる」に好評価を与えていることも不思議だと、松田氏は「新・カー問答」で仰っておられるが、今回の新訳を読んでみたら読みやすい上にとても面白く、すらすら読めたので驚いた。
「ルール違反」と松田氏が言われる根幹の部分ですら、納得できる伏線があり、細部の色々な小道具とも相俟って、とても楽しめた。同じ創元のカーの新訳では、「夜歩く」などの和爾桃子氏のちょっと癖のある文章も私は嫌いではないのだが、「死者はよみがえる」の三角和代氏の新訳は、癖がない上にさりげなく今風の言い回しが散りばめられていて、とても読みやすかった。
※各段落の頭文字を繋ぐと「し・しゃ・は・よ・み・が・え・る」となるように工夫しました。