姉弟子再訪記 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

本山である比叡山を臨む町の天台寺院で住職を務める姉弟子のお寺を、久々にお参りさせて頂いた。

 

2年前に参拝させて頂いて以来の訪問なのだが、私が得度式だけ済ませて本山に上がるまでの間に前行として修行させて頂いた小僧時代の先輩であり、姉弟子と言っても何十歳も年上の方だ。

 

前回お会いした時は、昔と変わらず才気煥発に仏教談義を挑まれ、「裏を見せ 表を見せて 散る紅葉」「散る桜 残る桜も 散る桜」といった良寛和尚の句なども会話の随所に引いて、悟りとは、君の境涯は今どの辺りだと仰るので、若輩者が僭越ながら、お寺を辞した後に「散り切れば 裏も表も 無いものを」という拙い川柳を認めたお便りを送らせて頂いたものだ。

 

今回、2年ぶりにお会いしたら、それはそれは角も取れて力も抜けた、悠々と身軽な境涯、機嫌良く、にこやかで可愛らしい庵主さんのお姿で、変わらないものなんて何もないんだよと仰るお言葉そのままだなあと感じたので、また改めて川柳一句、

 

   「裏表 どころか紅葉も なかりけり」

 

                         おしまい。