知り合いのお坊さんが、普通のクリーニング屋さんに法衣のクリーニングを頼んだら、間違えた畳み方で返されて来たと仰ったので、分かります、分かります、私も昔、一般のお店に出してそんなことがありました、今は法衣専門クリーニング店に出していますと、お答えしておきました。
私の師匠はもう亡くなってしまわれましたが、法衣の洗濯はどうしていますかと得度したての頃にお聞きしたら、僕らの衣なんて化繊やから、洗濯機で丸洗いやでと仰って、さすがは飾らぬ師匠に就いて私は幸いだと思った覚えがあるのですが、やはり自分で洗濯した後にはアイロンも当てねばならず、法衣の仕上がりを維持するのは不器用な身にはなかなか大変です。
そう言えば、千日回峰行者の光永圓道大阿闍梨がご自身で浄衣にアイロンを当てておられるのを映像で見たことがありますが、一方でアジア諸国のテーラワーダ(上座部)仏教のお坊さんは、襤褸切れを綴り合せた糞掃衣(ふんぞうえ)の由来どおり、一枚布の黄衣を纏うばかりです。
ざっと洗って干しておけば南方の日差しではすぐに乾きます。布が朽ちて来たら雑巾にします。正に着るものに執着しない糞掃衣そのもので素晴らしいなと思うものの、さて、日本のお坊さんの場合、質素堅実は良いとして、余りにみすぼらしい姿では、いくら自分が無執着を気取っても、人はそう見てくれないこともあるだろうと思って詠んだ拙い川柳一句、
一張羅 否応なしに 糞掃衣
おしまい。
※「旅行人」2006年春号に掲載して頂いた
「バックパッカーのためのアジアお坊さん入門」を大幅加筆し、
2019年に全面的にリニューアルした
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