芦辺拓著「金田一耕助、パノラマ島へ行く」のこと | アジアのお坊さん 番外編

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芦辺拓氏の「金田一耕助、パノラマ島へ行く」は、角川文庫版における氏の明智小五郎・金田一耕助登場のパスティーシュ作品シリーズ3冊目で、表題の「金田一耕助、パノラマ島へ行く」と「明智小五郎、獄門島に行く」の2篇がセットになった構成だ。

乱歩には「パノラマ島奇談」、正史には「獄門島」という、それぞれに島を舞台にした代表作があるのだが、明智が獄門島へ、金田一がパノラマ島へ渡るというアイデアがまず大変に秀逸で、なおかつそのアイデアを見事に新たな探偵小説に仕立てた挙げ句、その二つのストーリーが有機的にリンクするというところが、いつもながら、この作者ならではの素晴らしい腕前だ。

「パノラマ島へ行く」における、「よく勘違いされがちな」あの被害者(ネタバレになるので名前を書けないが、よくこの人物について考察して下さったことだ)に関するあれこれや、「獄門島へ行く」における3つの見立てなど、どれも詳しく書けないのが残念だが、とても楽しい。

原典を読んでいなくても楽しめるように趣向を凝らしたと著者の後書きにはあるが、けれど、やはりこれは乱歩の「パノラマ島奇談」、正史の「獄門島」を繰り返し読んだ経験のある、すれっからしのファンを納得させ、喜ばせてくれる作品ではなかろうか。

今までに江戸川乱歩・横溝正史それぞれの原典の設定に忠実に則った上で新しい物語を創造して来られた芦辺氏の作品の中でも、「金田一耕助、パノラマ島へ行く」は、最もシンプルなストーリーで、かつ面白く優れた作品だと思う。


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