いえいえ、お経に優劣などないことは百も承知、私も人から、般若心経が一番ですよねと聞かれたり、或いは正信偈をいつも家で唱えています、それでいいんですよねと言われたり、坐禅瞑想の話をしていた他宗の方が、結局、道元禅師の「普勧坐禅儀」を踏まえていれば間違いないってことですよねと、すっかり意気投合した口調で仰られるのを耳にしたり、その度に、それはそれぞれにその通り、でも、どのお経も、どのお祖師さまの言葉も、みんな同じく仏法を伝える言葉であって、そこに優劣はないのだと思ってみたりする次第です。
また或いは、法華経を信奉する女性が、私を天台宗のお坊さんだと知って、じゃあ、法華経仲間ですね、法華経二十八品の内のどれが好きですかと仰ったこともありますが、もちろん、それもお経を弄んでおられた訳ではなくて、お経を心から愛すればこその、お言葉だったことでしょう。
そんなこんなで原始仏典のスッタニパータとダンマパダ、どちらが好きかと問うのも愚かなら、確かに最古の二つの経典とは言うものの、それ以外にも大事で重要な原始仏典は他にもたくさんあるのにと、お叱りになる方もあるかも知れませんが、だからこれは、あくまでお経を愛する私の心に、密かにいつも浮かぶ私的な問いかけなのだと、ご寛恕頂けたら幸いなのですが。
ダンマパダは、実にコンパクトに、重要な語句を一つに閉じ込めた稀有な経典ですが、スッタニパータは「経集」と訳される如く、語弊を怖れずに言えば、いろんな短いお経を雑多に集めた感じが致します。
近頃、日本でも知られて来た「慈経 Metta sutta」や「吉祥経 Mangala sutta」に「宝経 Ratna sutta」を含んでいるかと思えば、ブッダ出世時のアシタ仙人伝説や、ビンビサーラ王が初めてブッダと出会ったエピソードのような仏伝の断片もあり、また四諦八正道や三法印の教え、はたまた五戒、八斎戒、十善戒などの原型なども、豊富に盛り込まれた貴重な経典です。
しかしまた、そのスッタニパータの中で、最終章である第5章の「彼岸に至る道の章」が最も古く成立したとのこと、スッタニパータの中でも、なかなかに手強いこの章が最初に成立したのなら、そこにどんな経典発生の事情があったのかと考えると、さらに興味は尽きません。
そんなスッタニパータと多くの詩句を共通しながらも、ずっと短い分量ですっきり編集されたダンマパダ、どちらが好きかと聞かれたら、これはもう、やっぱりどちらも甲乙付け難い稀有な経典であるとしか、答えようがないと思います。
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