アジアの醤油 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

タイのお寺で出会った日本人の方に、ご存じないんですか? 日本食が最も優れた食事だということは、世界中で有名なんですよ! と言われたことがある。

日本食が健康嗜好から欧米人に好まれているということは、当時ですら、もう決して目新しい話ではなかったし、何をこの方は力説しているのかと訝しんだものだが、とは言うものの、日本食こそが世界最高だと仰る日本人の方は、老若男女を問わず、意外と多いものだ。

日本人が日本食をおいしいと感じるのは当然だし、他国の食事にない美点が日本食にあるのも認めるが、それが果たして世界中の全ての人々が認めた評価なのかどうかを、冷静に判断する視点が欲しいと、いつもながら思う。

というのが前振りで、実を言うと私は日本の醤油って、本当に素晴らしい調味料だと思うのだが、別にそれは何でもかんでも日本第一主義で言っている訳ではない。けれど、元々、大陸から渡ってきた調味料が日本風なアレンジときめ細かさを得て、この旨みとコクを生み出したのだと思うと、とても感動的だ。

インドのブッダガヤにある日本寺では、昔は中華醤油を使っていて、日本から誰かが持って来て下さった日本の醤油などは、とても貴重品だった(ドラマ「深夜特急」のロケ隊の方たちに請われて一瓶を勝手に差し上げたことがあるが、もう時効だ)。その中華醤油だって、今のようにデリーの日本食材店などない時代だから、当時はわざわざ誰かがコルカタまで買い出しに行って求めて来た貴重な食材だった。

タイはもちろんナンプラー(魚醤)の国だが、醤油も使われていて、タイ語では「シーイウ」と言うのだが、主にこれは中華醤油を指す言葉で、もちろんタイは日本食材店も在住日本人も多い国だから、インドより日本醤油は手に入りやすい訳だけれど、私はタイで日本の醤油を口にしたことがない。タイ料理ならば、インド料理に比べて日本人の思う「旨み」が、事足りているからかも知れない。

ただ、中華醤油もナンプラーも私は好きだし、海外で醤油がなくて苦しんだ経験もないのだが、なおかつ日本の醤油はおいしいし、極上の調味料だと思う。刺身なんて、もちろん料理人の包丁にもよるのだろうけれど、やっぱり醤油あればこその料理だ。

ちなみに、どれだけ海外を旅していても、日本食を欲しいと思ったことがない旅行作家の前川健一氏が、サバの焼ける匂いを嗅いだ時だけは、醤油が欲しいと思ったと、どこかで書いておられたように記憶する。



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