
タイのあちこちで見かける簡単な休憩所の「サーラー」は、主に「あずまや」と訳されているが、大体は4本柱に屋根が付いた簡単な形式で、船着場、公園、寺院など、タイの至る所に存在する。
日本語の「あずまや」(東屋・四阿)は、中華式の「亭」(ちん)のように、柱と屋根だけの簡素な休憩所のことも、日本語で言うところのひなびた小屋、もしくはひなびた風情を敢えて醸した小屋のことも、両方を指す。
で、タイの簡素なサーラーも多分、中華式の影響を受けて成立した可能性があるし、その日本語訳は「あずまや」で構わないのだが、タイの寺院におけるサーラーは、日本のお寺で言えば「茶所」(ちゃじょ)だなあと、いつも思う。
タイでも寺院におけるサーラーに限り、四隅の柱だけでなく、ちゃんと壁のある建物である場合も多く、また、サーラーは仏像が祀ってあって、集会所として、もしくは本堂代わりや食堂(じきどう)代わりに使われることも多い。
そして文字通り、寺院で湯茶を接待する建物であった日本の「茶所」には、通常、仏さまを祀ってあって、やはりそれは単純な休憩所ではない。有名な寺院では、京都の大徳寺や西本願寺、六角堂などに仏さまが祀ってあって、参拝者が休憩できる茶所がある。今、詳らかに例をたくさん思い出せないが、同じような茶所を持つ寺はたくさんある。
昔、四国八十八ヵ所を徒歩で巡礼中、ある札所のお寺で、今はあまり使ってない茶所があるから、そこで泊まって行きなさいと、老僧に仰って頂いたことがあるし、
また、私が小僧修行をさせて頂いた大きなお寺には、山門の下にやはり使われていない大きな茶所があって、昔は堂守のお坊さんが住んでいたような話も聞いた。
茶所は、タイのサーラーのように、本堂代わりに使われたり、ということはないけれど、タイの寺院建築におけるサーラーの独特なポジションを、強いて日本のお寺に当てはめたら、茶所かなあと、日本のお寺をお参りして茶所でお茶など頂きながら、いつも思う。
※写真はタイのワット・パクナムの巨大なサーラー。毎日、午前11時、大勢の信者が僧侶の食事を寄進します。写真を持っていないので、私をタイに派遣して下さった、横浜善光寺留学僧育英会発行の日本語版「得度式次第」から、画像を引用させて頂きました。
ちなみに、今までは主に耳で聞いた発音を基に「サラー」と表記していましたが、タイ語の辞典や「タイ現代カルチャー情報事典」などの、タイ語の法則に則した表記に準じて、今回は「サーラー」としてみました。念のためにプラユキ・ナラテボー師の著作を確認させて頂くと、「サラー」と「サーラー」を併用されていましたので、「サラー」でも、日本語表記としては間違いではないと思いつつ…。
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