先日、本屋さんの中を通り抜けたら、平台の上に「金田一耕助VS明智小五郎」(角川文庫)という本が平積みされているのが目に入った。
帯に今秋ドラマ化と書いてあるので、あれ? このドラマの放送は去年に終わったのでは? と思って、よくタイトルを見たら、「金田一耕助VS明智小五郎 ふたたび」とあって、この本が新刊として今年の9月に発行されたばかりの続編だということが分かった。続編の方も、第二弾としてドラマ化され、もうすぐ放映されるのだそうだ。
前の「金田一耕助VS明智小五郎」という本は、ドラマ原作を含む既作の中から関連の作品を集め、ドラマ化に際して、書き下ろしも加えた構成だったので、読んだことのある話が多かったのだが、「ふたたび」の方は、知らない作品ばかりの内容だから、またどこかの本屋さんで見かけたら、是非買って読んでみたい。
さて、お話変わって、江戸川乱歩が創造した名探偵明智小五郎はデビュー作「D坂の殺人事件」の中で、煙草屋の二階に間借りしているのだが、その下宿の彼の部屋の畳の上は、本で埋め尽くされている。
来客があると、座布団がないので柔らかそうな本を選んで坐ってくださいと言い、さて、必要な本があると、例えばそれはミュンスターベルヒの「心理学と犯罪」だったりするのだが、あちこちまさぐっては、すぐ見つけ出す。
私も十代の頃、段々と自分の本が増え出し、自分の下宿を訪ねて来た友人が、本の多さに驚いてくれたりすると、子供の頃に憧れた明智の部屋に近づいたかななどと、嬉しくなったものだ。
明智は書生時代を経た後は、中国やインドを放浪し、その旅の間は自分の蔵書を友人に預けて置いたということだが、私事ながら、私はお坊さんになってタイやインドのお寺で暮らすことになった時に、持っていた大方の本を処分した。
今は少しだけ手元に残した本と、必要最低限、新しく買い直しただけの本が身の周りにあるのだが、色々と調べ物などをする時に、床中に本が広がることがある。
その中から、さらに必要な本を見つけ出す時に、もちろん自分の置いた配置だから、どこに何があるかはすぐ分かる。
先日も、そんなことがあった時に、そうか、明智の部屋は、自慢やポーズや格好をつけるために本が広がっているのでもなければ、乱雑な性格のために部屋が散らかっているのでもなく、必要があって必要に応じて、畳の上に本が並んでいるのに違いないということに、忽然と気が付いた。
⇒全く知らずに、この記事を書いたその日の夜に、ドラマ「金田一耕助VS明智小五郎 ふたたび」が放映されました…。
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