マインドフルネスの罠 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

よくお手伝いに行くお寺の、僧侶が坐る席のそばに、私物を置くささやかなスペースがあって、自分の読む本を置かせてもらっているのですが、だいぶ前から、プッタタート比丘「観息正念」(三橋ヴィプラティッサ比丘日本語訳)の旧版すなわち書籍版を、ずっと置きっぱなしにしています。新訳のCD版と読み比べるためですが、誰か他のご僧侶が、興味を持つかなという、罠を仕掛けるような気分が、全くなかったとは言いません。

そうしたら、今までいろんな宗派の方が、その席に坐ったのに、一度も反応がなかったのですが、ついこの前、ある天台宗のお坊さんが、これはあなたの本ですか? 今流行りのマインドフルネスですね? と、尋ねて来られました。表紙に原題の「Mindfulness with Breathing」という英語タイトルが表記されているのを、ご覧になったようです。
 
そうそう、ようやく日本でも流行って来てくれてますが、私が以前にタイで修行していた頃は云々と説明すると、いやあ、今度、自分らの勉強会でもマインドフルネス、採り上げようかって話もあって、などと仰るので、そうですか、意外と日本のお坊さんの中には、ご自分の宗派の教義以外に興味を持たない方も多い中、それはそれは、などとお答えしつつ、プラユキ・ナラテボー師のことをご存知ですか? などと、お聞きしてみたりしたものです。

私がバンコクで修行中、既にタイのチャイヤプームで何年も修行されていたプラユキ師と、お会いできる時にはお会いし、できない時には、よく手紙のやり取りをして頂いたものでした。
 
その頃、まだ日本語での紹介が多くなかった「sati=念=気づき」の概念を私に説明するのにプラユキ師が、英語では mindfulness とか awareness と表現するんですよなどと、お手紙の中で説明して下さったことなども、マインドフルネスという言葉をきっかけに、様々思い出しました。

それからいくばくかの歳月が流れ、「観息正念」CD版頒布のお手伝いもさせて頂くことになり、さて、しかし現在の私は、日々の生活の中で、どれほど「気づき=mindfulness 」を忘れずにいると言えるのでしょうか?

改めて、さあ、しっかり修行をと思い直し、人に仕掛けたつもりの罠に自身が捉えられ、気づきを取り戻すことが出来たのだから、まずは幸いでした、などと殊勝なことをこうして書いておきながら、今度はそのお寺の僧侶の席に、プラユキ師の単著処女作「気づきの瞑想を生きる」を、懲りずに置いて来たんですが…。
                            おしまい。
 
 
 
 
 
※お知らせ※
タイの高僧プッタタート比丘の著作の
三橋ヴィプラティッサ比丘による日本語訳CD、
アーナパーナサティ瞑想の解説書「観息正念」、
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タイ プッタタート比丘 「仏教人生読本」「観息正念」改訂CDーR版 頒布のお知らせをご参照下さい。
 
 
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