天台宗の「子ども聖典」 | アジアのお坊さん 番外編

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天台宗の「子ども聖典」というものがあって、天台宗務庁教学部の発行なのだが、面白いので、とある天台宗の祈願寺の茶所に置こうかと思ったら、どうやらよく読むと、将来、僧侶になることが前提の、寺院の子弟や檀信徒を対象にした冊子みたいだったので、断念した。

何が面白いかと言うと、天台宗の教義が非常に分かりやすく説かれている。他の宗派でも、一般の方向けに、自宗の教えを分かりやすくまとめた小冊子という物は存在すると思うが、いかんせん、天台宗の場合、法華経、密教、浄土教、坐禅止観、回峰行などなど、法門や修行方法などが多岐に渡っていて、天台宗の教えとはこういうものですと、一言で伝えることが難しい。

宗派の冊子に限らず、一般書の「わが家の宗教 天台宗の心得」的な本を見ても、他宗に比べて、その要点が掴みにくい。少なくとも、在家から天台宗を選んでお坊さんになった私が、得度以前にそうした本を手にした時に、そう感じたものだ。

「子ども聖典」は、編集された執筆者の方々が、子どものために分かりやすくと心がけられたことが功を奏して、ある種の大人向けの天台宗入門書より、遥かに優れた内容になっているように、私は思う。

こういう例を、他の分野の本の中に探すとすれば、どうだろう、例えば桂米朝師の「落語と私」(文春文庫)がそうだ。元々は中高生向けに書かれたこの本、現在では、こんなに分かりやすく、落語の歴史と意義を深く掘り下げた本は他にないと評されるほどの、珠玉の名著として、評価が定まっている。

という訳で、お近くに懇意の天台宗寺院様がございましたら、是非、「子ども聖典」のご借覧を願って下さいませ。


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