
南方上座部仏教の僧侶たちは、雨期の3ヶ月間、僧院に籠って修行する。その安居が明ける日を「パワーラナー」 pavarana と言い、これを漢訳で「自恣」(じし)と言う。3ヶ月の安居期間を総括する日という意味の、ちょっと難しい言葉だ。
そして、安居明けから1ヶ月の間には、僧侶に新しい袈裟を供養する慣わしがあり、これをカティナと称する。
インドの聖地ブッダガヤにあるタイ寺では、テーラワーダ比丘、大乗仏教僧の隔てなく、隣山各寺院のお坊さんが、安居明けの行事に招かれる。写真はある年の安居明けの招待状で、 pavarana の文字も文中に見える。正確に言うと、文中にも見える devorohana の行事という名目での招待なのだが、隣山僧侶はカティナ、カティナと言いながら、招待状を手にタイ寺へと向かう。
タイ語ではカティナが「カティン」と訛り、黄衣奉納式という意味で、「トート・カティン」と称して、タイのあちこちで、この行事が盛大に祝われる。
タイ在住日本人の方のブログなどにも、この行事のことはよく登場するので、今年もこれからの1ヶ月間、皆さまが書かれるであろう各地のカティン祭の様子を読ませて頂くのが、今から楽しみだ。
ところで、以前、そうしたブログの中で、お坊さんは元々ボロギレを縫い合わせた糞掃衣を着ていたはずだから、このように信者が袈裟を供養する行事はブッダの時代には無かったはずだ、といった意味のことを書いておられる方がいた。
しかし、カティナ衣に関する戒律は、現在にまで伝わるテーラワーダ仏教のパーリ律にも記されていて、少なくともこれは、原始仏教時代から続く、とても古い、大事な行事だ。現代タイの賑やかな祭の様子と、ブッダの教えとの間に、何らかの違和感を感じられての表現だとはお察し致しますが…。
⇒ちなみに、「安居明け」を意味するタイ語の「オーク・パンサー」という言葉は、「出る」という意味の「オーク」と、安居を表すパーリ語「ワッサ」のタイ語訛りである「パンサー」を組み合わせた言葉なので、他の上座部仏教諸国で、「パンサー」(安居)「カオ・パンサー」(安居入り)「オーク・パンサー」(安居明け)などと言っても通じません。
※ホームページ「アジアのお坊さん」本編も是非ご覧ください!!
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