アジアのお盆

　ご存知の方も多いと思うが、インドにお盆という行事はない。お盆は、仏教が中国に伝わってから出来た行事だ。

　中国での盂蘭盆会(うらぼんえ)という行事は、４月１５日から７月１５日の３ヶ月の安居(あんご)期間の最終日、安居を終えた僧侶たちに供養することによって徳を積み、亡くなった先祖に回向するというのが趣旨だ。中国で作られた「盂蘭盆経」というお経には、目連尊者と安居にまつわる由来譚が記されている。

　ちなみに、ちょっとややこしくなるが、インドから東南アジアにかけてのテーラワーダ仏教諸国で現在も行われている安居の期日は、太陽暦の４月１５日から７月１５日に掛けてではないし(年によって変わるが、大体７月から１０月の３ヶ月間)、また日本におけるお盆も、旧盆で行うところは、７月１５日ではなく、８月１５日を中心に行うから、仏教辞書などで、「安居の最終日である７月１５日を中心に行われるのがお盆の行事」という「盂蘭盆」の説明を読んでも、分からない人には分かりにくいだろうと思ってみたりする。

　それはさて置き、現在の日本におけるお盆の行事において、この安居にまつわるエピソードはほぼ忘れられて、単純にご先祖様を迎える行事となっているから、お盆のある国、ない国、どちらも含む仏教国全体を見渡しても、日本のお盆行事は他の国にない、独特なものだと言える。

　そのせいか、以前にはあまりお盆というものに、私は興味がなかったのだが、近頃、反対に、元の仏教とかけ離れているから仏教行事としてマイナーなのではなく、アジア全体を見渡しても、日本にしか見られない、特殊でユニークな仏教行事がお盆なのだと思うようになった。

　盆休みで中華圏の春節並みにみんなが大移動する中、お盆だからと、多くの人がお寺に参り、お墓に参り、棚行でお坊さんに家に来てもらう。

　そうして、お盆のどこかで仏法に触れ、執着を取り除き、心を調えることに気づくなら、お盆はやっぱり仏縁、結縁、何よりの仏教行事だと言えるのではないのかな？

　そんなわけで、近頃ちょっと、お盆が好きだ。

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