中公新書 「お伊勢参り」 | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

 正直言って、全く期待はしていなかった。失礼を承知で言えば、お伊勢まいりの本なんて、掃いて捨てる程あるし、昨今の巡礼ブームで、伊勢街道のガイドマップも昔よりたくさん出ている。今年の遷宮を控えて、便乗的な出版物も、さぞ多かろうかと思う。
 
 にも関わらず、今年2013年の初めに出た中公新書の「お伊勢参り」を手に取ったのは、最近こういう本も読んでないことだし、新しい本だから、何か目新しい情報でもあるかなと思っただけのことだったのだが、案に相違して、とても面白かった。
 
 まず、最初に江戸時代の家出事情から始まる掴みがいい。京都の町奉行所の番所の日記の中の家出届けをひもといて行き、江戸時代には抜け参りと言って、お伊勢参りに行くと言えば、男だけではなく、女や子どもや奉公人でも家を抜け出すことが許された、その抜け参りと家出届けの関係を考察する過程が、スリリングで面白い。
 
 さらに江戸期の資料から当時のお伊勢まいりの様子を浮かび上がらせる後の章も、学術的すぎて煩雑になるということもなく、ちょうどいい加減のこなれた文章なので、実際に伊勢街道を学生たちと歩く最終章が生きて来る構成になっていた。
 
 そして私は、自分が四国遍路を終えて、野宿もしながら伊勢まで歩いた時に、最近、伊勢街道を歩く人は増えて来たけれど、行脚姿のお坊さんとは珍しいですねと、途中で出会ったトラックの運転手さんに言われたことなどを懐かしく思い出しながら、その最終章を楽しく読ませて頂いた。 
 
 
 
 
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