香港 重慶マンションでの私的な思い出 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

 香港は何度か訪れているが、重慶(チョンキン)マンションに泊まったのは一度だけ、タイでの上座部僧としての修行を終えて黄衣を脱ぎ、日本式のねずみ色の作務衣に着替えて日本に帰る途中に、香港に立ち寄った時だけだ。
 
 ご存知の方も多いと思うが、重慶マンションは増築や連結を繰り返した結果、迷路のように錯綜を極めた数棟のビルの中に、たくさんの安宿がひしめくゲストハウス・ビルだ。
 
 それはさて置き、香港で驚いたのは、出会った全ての香港人が、私が丸坊主にサンダル履きの作務衣姿であることに、何の関心も見せなかったことだ。タクシーの女性運転手も、食事をした屋台の人たちも、地下鉄の座席で横に坐ったOLや勤め人も、或いは道行く人全ての人たちも、私に見向きもしなければ、インド人のように、お前は何人だ、どこから来たんだ、その格好は仏教徒なのかなどと、聞いて来ることもない。
 
 それなのに、重慶マンションの共同シャワー室の前で鉢合わせた若く初々しい日本人バックパッカーの青年は、異国人にも見えかねない奇妙な風体で安宿に泊まっている私のことを、日本人のお坊さんだとすぐに分かったようで、一言も言葉を交わしていないのに、あ、どうぞ、先に使って下さいと、丁寧な日本語で言ってくれた。その反応の違いが国民性を表すようで甚だ興味深く、今もこうして覚えている。
 
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