インドの夕方は、もっとせつない。たぶんそれは、インドの町がタイよりも暗いからだ。タイにだって、夕方が薄暗い町はいっぱいあるよと仰る方もあるだろうけれど、インドは大都会であっても夜が暗いからせつないのだ。派手なネオンや電飾よりも、ほの暗い裸電球や水銀灯の灯りが目立つからだろうか。
日本でも、夕方というのは寂しいものだ。さればこそ、稲垣足穂は「弥勒」や「美のはかなさ」の中で、「六月の夜の都会の空」という一言の言葉に、繰り返しこだわったのだろう。
さて、その昔、インドでは1日の24時間を6つの時間帯に分けた。それが仏教に引き継がれ、4時間ごとにお勤めをする六時礼讃という法式が今に残っている。
天台宗の例時作法では、各時間ごとに違う偈文が使用されるのだが、その中でも夕刻の「黄昏偈」は、一番おなじみだ。
…白衆等聴説 黄昏無常偈 此日已過 命即衰減 如少水魚 斯有何楽 諸衆等 当勤精進 如救頭燃 但念虚空 無常勤慎 莫放逸
ちなみにこの偈文の前半は、「ウダーナヴァルガ」(中村元訳 「感興のことば」岩波文庫)の第1章33の漢訳だ。
…ひとびとの命は昼夜に過ぎ去り、ますます減って行く。水の少ない所にいる魚のように。かれらにとって何の楽しみがあろうか。
私は「黄昏偈」を唱えるたびに、ああ、これは原始仏典と共通のお経なのだなあと嬉しく思い、そして美しく、ちょっともの悲しい、アジアの夕方の風景を、心で秘かに思い出す。

タイ ナコンパトム
夕方のプラ・パトム・チェディ
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