夏の夜の鬼の話 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

 夏と言えば怪談、という訳で、京都新聞に毎週折り込まれる「週刊トマト&テレビ京都」の8月3日の特集が、京都の怪談スポットで、鉄輪の井戸やら幽霊飴やら撞かずの鐘やらが、お寺やゆかりの地の写真と共に取り上げられていて、とても面白い。

 1980年代の小松和彦著「鬼が作った国・日本」あたりを嚆矢とする、京都魔界案内的な本は、昨今の京都ブーム、妖怪ブームとも相俟って、今もたくさん出版されているけれど、今回の京都新聞社の特集は、フリーペーパーでありながら、それらの本に劣らない内容だ。

 さて、今、「今昔物語集」の仏法部をぼつぼつ読み返しているのだが、今昔物語の中には、仏教、お寺、お坊さんに関する話の他に、鬼や怪異に関する物語も、もちろん数多い。

 仏法部の巻20や世俗部の巻27などに妖怪譚が多いが、マイナーなところで、仏法部の巻17の43、「鞍馬寺に籠りて羅刹鬼の難を遁れたる僧の語(はなし)」の出だしには、「今は昔、鞍馬寺に一人の修行の僧、籠りて行いけり。夜、薪を拾いて火を打ち木を焼く間、夜ふけて、羅刹鬼、女の形となりて、僧の所に来て、木を焼きて火に向かいて居り。僧、これただの女にあらじ、鬼なめり、と疑いて…」とある。

 夜、一人の女が寄って来て、これはただの女ではなく鬼に違いない、と気づいた瞬間というのは、さぞ怖いだろうと思う。


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