インドやネパールの「ナマステ」、「ナマスカール」という挨拶が、礼拝や帰依を表す「ナマス」というサンスクリット語に由来していて、「南無」と同じ語源であることは、よく知られている。
「こんにちは」を表すタイの「サワディー」は「良い吉祥を」、チベットの「タシデレ」は「吉祥あれ」、スリランカの「アーユヴォーワン」は「ご長命を」の意味で、どれも相手に幸いがあるようにと願う、良い言葉だ。
「サワディー」は1930年代に新しく作られた挨拶言葉で、親しいタイ人同士が日常、挨拶を交わす時は、「どこまで行くの?」、「ごはん食べた?」などを表すタイ語を、挨拶代わりに使うことも多い。
タイ語には「サバイディー・ルー?」(お元気ですか)という言葉があるが、タイ語と言語的に近いラオス語の「こんにちは」は、同じ意味を表す「サバイディー・ボー」だ。どちらも「サバーイ」のニュアンスがわかる人にとっては、南国らしい、何とも心地よい挨拶だ。
言語が人や社会、文化を規定するという考え方があるが、例えば単純に言って温厚な言葉を話す民族は温厚だし、荒い言葉を話す民族は気が強いということは、確かだと思う。
タイ人の気質を表す言葉としてよく知られている、「チャイ・ディー、チャイ・イェン」(良い心は、静かな心)、「タン・ブン、ダイ・ブン」(徳を積めば、徳が還る)、「サバーイ」「サヌック」「マイペンライ」(気持ちいい、楽しい、気にしない)などのタイ語は、この国ののどかな人柄をよく表している。
タイ語で別れの時に使われる「チョーク・ディー」という言葉は、「良き幸運を」という意味だが、気軽な別れの言葉として使われ、ちょうど日本語の「ご機嫌よう」にあたる。日本語の「ご機嫌よう」「お元気で」「お気をつけて」も良い言葉だから、関西弁の「ご機嫌さん!」という挨拶を、最近あまり耳にしなくなったのは残念だ。
タイ語で別れの時に使われる「チョーク・ディー」という言葉は、「良き幸運を」という意味だが、気軽な別れの言葉として使われ、ちょうど日本語の「ご機嫌よう」にあたる。日本語の「ご機嫌よう」「お元気で」「お気をつけて」も良い言葉だから、関西弁の「ご機嫌さん!」という挨拶を、最近あまり耳にしなくなったのは残念だ。
韓国語で、去る人に言う別れの挨拶、「アンニョン・ヒ・カセヨ」(お気をつけて)、残る人に言う「アンニョン・ヒ・ケセヨ」(お元気で)も良い言葉だ。アンニョンハセヨのアンニョンは漢字で書けば「安寧」だから、「アンニョンハセヨ」は「安寧ですか? お元気ですか?」、「アンニョン・ヒ・ケセヨ」は「安寧でいて下さい」という意味になる。
ヒンディー語には本来、そんな言い回しはないのだが、私はなるべく、「アッチャー・セ・ジャイエ」(お気をつけて)、「アッチャー・セ・ラヒエ」(お元気で)と言うようにしている。決まり文句でなくても同じ様な言い方をする人はいるし、この言葉を口にしたら、相手は大抵喜んでくれる。
良い言葉を口にして、良い心を育てて、みんながご機嫌さんで暮らせますように。
※2008年2月投稿「アジアの挨拶」、2008年4月投稿「アジアの挨拶 2」を併せて改稿致しました。