「師走」という言葉の意味が、「お坊さんが走る」という意味に付会して説明されることは多くの人がご存知で、ネットにもたくさん書いておられる方があるのだが、これは「12月はお坊さんが何かと忙しい月だ」という意味なのか、「普段は走らないお坊さんまでが走るほど忙しい」という意味なのか、みんなが諸説紛々だ。
ちなみにタイなどのテラワーダ仏教国のお坊さんは走らない。227条の戒律の中に、走ってはいけないという戒律はないけれど、走ってはいけないことになっている。だから本来、お坊さんというものが走らないのが普通だとすれば、「お坊さんが走るほど忙しい月」という解釈には、実感があることになる。
「12月はお坊さんが忙しい月だ」という意味だとすると、正月行事の準備に追われている祈願寺や信者寺以外の檀家寺などでは、12月だけが特別忙しいという感覚がない場合の方が多いのではないかと思うので、ちょっとしっくり来ない。
平安時代の「色葉字類抄」にも、「師走」は僧侶が走るという意味だという説が既に出ていると、みなさん、ネットに書いておられるが、失礼ながら、こんな特殊な書物をみんなが読んでおられるとは到底思えない。
そこで一度、自分の目で「色葉字類抄」を確認してから、この「師走」論争に決着をつけてみたい! と思ったのだけれど、「色葉字類抄」なんて大型書店でもなかなか見当たらないから、とりあえず図書館へと思ったのだけれど、行けなかった。なぜって、ほら、年末は何かと忙しくて…。
おしまい。
※上座部(テラワーダ)仏教の戒律に、「走るな」と明確には書いていませんが、歩き方に関しては10項目以上の細かい決まりがあります。